海上の戦火
艦艇出すのって楽しい(*´▽`*)
エリア022の沖合に、灰色の軍艦がズラリと並ぶ。
空母を中心とした輪形陣の先頭を航行するのは、戦団による近代化改修を施され、再び戦場へと舞い戻った『ボリッシュ級駆逐艦』のネームシップ『ボリッシュ』である。
アーレイ・バーク級と大差ない性能の艦艇でありながらも、近似した性能のアーレイ・バーク級との競合によって予備役に回されていた悲運の駆逐艦は、今や艦隊の先陣を威風堂々と航海している。
その後ろに続くのが、艦隊の総旗艦である全長330mの大型空母『ダイヤモンド・ミネラル級航空母艦』の三番艦、『トパーズ・ミネラル』だ。戦団に在籍する唯一のダイヤモンド・ミネラル級であり、アメリカ軍時代から搭乗している乗組員の練度は、ベテランの風格を漂わせる程の高さを誇っている。
そんなトパーズ・ミネラルに続く形で、『アノマロ級航空母艦』の一番艦『アノマロ』、二番艦『ピカイア』、三番艦『オレノイデス』、四番艦『アクチラムス』が追従しており、その周囲と後方に『ボリッシュ級駆逐艦』や『ベークライト級ミサイル駆逐艦』、『AZL級フリゲート』が展開している。
ヘンリク達襲撃部隊はアノマロ級の三番艦『オレノイデス』の飛行甲版にアナライザーを待機させ、艦隊と共にエリア022の沿岸部を目指している。アナライザーのみでの移動という手段もあったものの、艦載機部隊及びミサイル兵器群による遠距離打撃とのタイミングを合わせる必要があった他、攻撃開始の直前まで可能な限り襲撃のタイミングを悟られないようにするという狙いがあったのもあり、この形に落ち着いている。
旗艦『トパーズ・ミネラル』の艦橋から『オレノイデス』の方を見ていたアンデルセン提督は、一戦団には過剰とも言える艦隊の姿を眺めて誇らしくも思いつつ、どこか嫌な予感を隠しきれずにいた。
「……どぉにも嫌ぁな予感がしやがる………コイツは一波乱来そうだぜ…。」
そんな事を呟いていると、レーダー観測員から報告があがる。
「提督、艦隊前方にレーダーでの反応アリ!艦種識別───『ブロッケン級フリゲート』及び『モンドラン級フリゲート』!」
「沿岸警備隊……って訳でもなさそうだな。………数は?」
「『ブロッケン級』が4隻、『モンドラン級』が4隻の計8隻です。」
アンデルセン提督はCICに表示された敵艦の位置を凝視しつつ、思考を巡らせる。
(ブロッケン級はともかく、モンドラン級はフランスの艦艇だよなぁ…?奴さん、とうとう艦艇まで派遣しやがったか……)
「……このまま行きゃ確実にぶつかる羽目になる……その前に潰すぞ。」
「では、艦隊を分けますか?」
そう進言したのは、アメリカ軍からの同期であり付き合いの長い現トパーズ・ミネラル艦長"エリック・バルバロイ"だ。彼とアンデルセン提督はアメリカ海軍時代からの親友であり、休日は共に酒を飲み交わす中でもある。
「よく分かってるじゃないか、友よ。」
「ふっ、お前の考える事なんぞお見通しだ、友よ。」
顔の濃い二人がニヤニヤしつつ言葉を交わす。傍から見れば闇取引の現場にしか見えないが、乗組員達にとってはいつもの事である。
「艦隊を2つに分ける。アノマロ級及びベークライト級、AZL級001〜010までは予定通り襲撃作戦を続行せよ。本艦と残りの艦で敵艦隊を処理する。」
『トパーズ・ミネラル』が左に回頭して進路を譲り、襲撃艦隊の臨時旗艦として航行する『アノマロ』がその横を通過する形で輪形陣から離脱する。
その後ろに続く形で『アノマロ級』が離脱し、航空母艦達を取り囲むように『ベークライト級』と『AZL級』が離脱して行く。
この場に残ったのは『トパーズ・ミネラル』と4隻の『ボリッシュ級駆逐艦』、10隻の『AZL級フリゲート』のみであった。
「制圧艦隊各位に通達、これより敵艦隊との戦闘に移行する。相手はフリゲートのみだが、決して油断はするな。……諸君等の奮戦に期待する。」
マイクをオフにし、モニター越しに飛行甲版を眺める。既に出撃予定の艦載機『PWS-32-OTM』が発艦準備を終えており、合図があれば何時でも出撃できる用意ができていた。実にスムーズである。
「よし……第一次攻撃隊、発艦!」
アンデルセン提督の号令と共に、艦載機達が発艦して行く。提督は静かに一人、敬礼の形を取る。それは運用する艦載機が無人機であろうとも、彼らの奮戦と無事を祈るという、船乗りとしての責務であった。
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エリア022とエリア021を繋ぐ、異空間であるにも関わらず広く、そして蒼い海。
昨今の情勢によって、その海域の防衛及び警戒を担当する事になったのが、彼らドイツ革命派海軍の『警戒部隊』である。本来であれば本国製の『ブロッケン級フリゲート』4隻のみで構成された警備艦隊であったが、支援国であるフランスからの艦艇派遣によりこの艦艇にも新たに4隻のフリゲートが配備され、計8隻の警戒部隊と化している。
とはいえ彼らの任務はあくまで警戒であり、周辺海域を巡回する事で敵艦隊の侵攻を未然に防ぐ事が主軸となっている。その為運用されるのは量産の効くフリゲートのみであり、もし敵の大艦隊が侵攻してくればたちまち海の藻屑となるのは想像に難くなかった。
しかしながらここはエリア022の海域であり、自分の出番はないだろうと彼らは考えていた。地上での戦闘は多く耳に入ってくるが、海上での戦闘はあまり耳にした事がなかった為である。
そんな彼らに、無慈悲にも警備以上の仕事が訪れる。
「艦長!レーダーに感あり!!所属不明艦多数!!」
レーダー観測員か慌てふためく中、旗艦である『ブロッケン級』の一番艦『ブロッケン』の艦長は冷静さを保っていた。
「落ち着け、所属と数を確認しろ。大方偵察艦隊くらいだろうが……」
「し、識別出ました!艦種は──『ダイヤモンド・ミネラル級』!?!?」
「はぁ!?」
艦橋の空気が凍りつく。『ダイヤモンド・ミネラル級』といえば、アメリカが保有している大型航空母艦であり、現状においては明確な敵艦である。
艦長は焦りを隠しつつも追加の報告を促す。
「先頭に『ダイヤモンド・ミネラル級』、後続に『ボリッシュ級駆逐艦』4隻、『AZL級フリゲート』が10隻!この艦構成は──」
「っ!……間違いない、"フォートレス"の連中だ。」
エリア021の防衛部隊が独立し、アメリカと同盟関係を結ぶまでに至った新しい戦団。急速な軍拡とアメリカとの同盟締結により力を増す、国ではないが最早敵国といっても差し支えはない規模の連中である。
「すぐに迎撃態勢を──「対空レーダーに感あり!!艦載機です!」っ──早すぎる!」
対空戦闘の号令をしようとしたその時、大きな爆発音と共に大きな波が艦を揺らす。艦内にブザーが鳴り響き、急な衝撃に地面で倒れ伏している船員もいた。
「──何があった!?」
「フリゲート、『ファールゼルベルク』ご、轟沈!」
そんな馬鹿な、と、『ブロッケン』の艦長は思考停止にも似た感想を呟く。だが、現実はそんな彼らを待つという慈悲を持たなかった。
再び爆音と大波が荒れ狂い、艦を大きく揺らす。
「フリゲート、『ビルケンコプフ』中破!『デュ・ミディ』大破、戦線を離脱します!!」
指示よりも先に、戦況がどんどん悪くなっていく。明らかに劣勢かつ勝ち目のない彼らには、先程までの余裕は一切無くなっていた。
「ミサイル発射準備!!目標はあの『ダイヤモンド・ミネラル級』だ!」
「っ!?しょ、正気ですか!?」
乗組員が正気かと此方に問いかけて来る。もちろん、正気ではないとも。
「……此処で引くわけにはいかん。このまま奴らを通過させれば、本土に被害が及びかねん。なんとしても、此処で奴らを食い止める!」
既に彼らはまともな思考を取れていなかった。例え此処でアンデルセン提督が率いる制圧艦隊を食い止めたとしても、少し離れた場所を航行する襲撃艦隊によって、本土への被害は免れないのだから。
彼らの脳裏に浮かぶのは、祖国への忠誠……いや、敵前逃亡による祖国からの処罰であった。恐怖に駆られ、逃げ出したい衝動に駆られながらも、彼らには選択肢が残されていなかった。
「全艦に告ぐ!前方の航空母艦に向けて集中攻撃を開始せよ!!なんとしても、あの艦を撃沈せよ!!!」
戦団に唯一の『ダイヤモンド・ミネラル級』を沈めれば、彼らは多大なる戦果と褒章を得ることになる。しかしそれは、残存するたった6隻のフリゲートで空母を中核とする機動艦隊に挑む事に他ならず、はっきり言って無謀であった。
しかしそれでも、彼らは自らの職務を全うする。
味方の処罰による死ではなく、
自分よりも大きな敵に立ち向かって死ぬ方が、人間として死ねると感じてしまったからであった。
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