緊急招集
毎度ながら不定期更新ですが……
お読み頂ければ幸いですm(_ _)m
宿舎のリビングに、戦団のメンバーが勢揃いする。
普段は夕食を囲むリビングルームも、中央のモニターを投影する事により無機質なブリーフィングルームへと変貌していた。
ヴァネッサが端末を操作しつつ、招集させた理由を説明し始める。
「急な話で悪いんだがね、ちょいとばかし緊急の要件だ……よく聞いておきな。」
中央のモニターが立体映像を映しだし、エリア022のとある地域を形成する。
「エリア022に潜伏中の3iから画像付で緊急通達が届いてねぇ……普段めっきり使わない回線だったもんだからアタシもびっくりしたさね。」
そう言いつつヴァネッサが端末を操作すると、個々の端末にとある画像が映しだされた。画像には中規模な工場が映し出されており、外には数台の大型トラックが停車しているのも確認できる。
「情報によると、この工場ではあるものが生産されているらしくてねぇ…それがコイツさ。」
画面に新たな画像が表示される。その画像に映る兵器は榴弾砲のような見た目をした、シンプルな砲兵器であった。
……いや、訂正しよう。
今感じた感想は見た目だけのものだ。問題は見た目ではなくそのスケールである。
付近に停車する車両やクレーンの大きさから推測しても砲身長が50mを超している……なんだこの巨大兵器は…!?
「コレが奴らがコソコソ開発を続けていた巨大兵器らしくてねぇ……秘密裏に収集した情報によると、全長57.6m、単砲身の大型榴弾砲だそうだ。」
俺の予想があながち間違ってなくて微妙に複雑な気分だが……ひとまず置いておこう。
……いや置けるかよ、『2A65 152mm榴弾砲』が約8基分のサイズの榴弾砲ってなんやねん。
「んでまぁ、なんでコイツが問題なのかって言うとねぇ……コイツの射程距離が、此処"フォートレス"にすら届き得るという事にあるのさね。」
「「「「「「「!?」」」」」」」
俺達のいる"フォートレス"はどちらかというと内陸に存在する活動拠点だ。各国境線からある程度均等に離れているからこそ、各地域の問題に迅速に対応が出来るのである。
だが、此処にその榴弾砲の一撃が届くというのは、はっきり言って非常にまずい。
なにせ、『エリアの中心付近まで、隣接エリアからの砲撃が着弾する可能性がある』なんて状況は、どう見ても大問題である。下手すればこっちが手も足も出ない状況に陥る可能性だってあるのだ。
「ふむ……なんとしても阻止…いや、その兵器を破壊する必要性があるな…。」
ヘンリクもいつになく真剣に巨大兵器の情報を精査している。
「そうさね……コイツは、アタシ等にとって存在してはいけない敵性兵器だ。早急にコイツを破壊し、革命派の大量殺戮を未然に防ぐ必要がある。」
ヴァネッサが端末を操作し、立体映像に作戦領域と導入兵器リスト、そして作戦遂行メンバーを映し出す。
「作戦を説明する。作戦目標は革命派が保有する巨大兵器……識別呼称『ポンマー』の破壊だ。本作戦にはアナライザー、地上兵器の他に艦艇も導入する。作戦チームは機動艦隊と連携し、『ポンマー』の破壊を遂行せよ。」
今回は機動艦隊も導入するのか……随分と大仕事になりそうだ。
……あとなんで誰も識別呼称にツッコまないんだろうか……何故にオーボエの祖先楽器…?
「出撃メンバーはヘンリク、ヴィンセント、モーリス、ジャック、そしてアタシだ。トリシャ、アンジェ、メルトは"フォートレス"にて待機、万が一に備えておくれ。」
万が一に備えて……?
「ヴァネッサ、何かあるの?」
アンジェがヴァネッサに問いかける。
「まぁね……この作戦は『砲撃敢行前に榴弾砲を破壊する』事が大前提となる作戦だ……であれば、砲撃を止められなかった時の事を念頭に入れておく必要があるのさ。」
「動きを察知されたり、予想外の足止めを食らう可能性だってある。常に最悪を想定して動くのは、この業界に於いては必須項目なのさね。」
……ヴァネッサの懸念は当然のものだ。間に合わなければ、俺達が死ぬ……慎重にならざるを得ないのも当然である。なにせ自身の采配一つで、仲間全員が命を落とす可能性だってあるのだから。
……作戦が終わったら、ヴァネッサを労うとしよう。
「……にしても、待機している俺達はどう動けばいいんだ?」
「……メルトには対空迎撃を担当して貰う。万が一、間に合わなかった際に飛来する榴弾を迎撃してもらう役目さね。」
……………割とエグい役目だな…。
「アンタに迎撃を任せるのは申し訳ないんだけどね……迎撃に使う兵器の規模と性能の関係上、『デュランダル』が一番適切なのさね……頼まれてくれるかい?」
珍しく申し訳なさそうに頼んでくるヴァネッサだったが、俺の返答は既に決まっている。
返答はもちろん──
「──任せてくれ。その時が来たら、俺がこの場所と皆を守ってみせるよ。」
……ま、その時が来ないのが一番ではあるけどな。
「……ありがとね。」
ヴァネッサがぽつりと礼を言った後、再び説明を再開する。
「メルトはアナライザーでの対空迎撃、アンジェはアナライザーで目視での飛翔体観測及び身動きの取れないメルトの護衛、トリシャは各種無人機を用いてデータによる観測支援をしておくれ。」
「オッケー!メルトはアタシが守るからね!!」
「ふふふ……支援はお任せください。」
二人とも、やる気は十分のようだ。
「破壊作戦の遂行メンバーは機動艦隊に合流し、可能な限り作戦の発覚を遅らせな。合流後の移動はアノマロ級の四番艦『アクチラムス』にて行い、作戦領域目前で甲版から出撃するんだ。……既にアンデルセン大将には話を通してある。」
……今回はアンデルセン大将とは会わないだろうなぁ。俺、待機側だし。
「本作戦におけるコールサインは、襲撃チームを『トルトニス』、防衛チームを『スヴェル』とする。襲撃チームはヘンリクが、防衛チームはトリシャがリーダーを担当しな。」
後でアンジェとコールサイン順を話し合っておくとしよう。……多分俺がスヴェル3だろうけど。
「説明はここまでさね……ヘンリク、締めよろしく。」
「うむ……本作戦は、下手をすれば全員の生死を左右する重要な作戦だ。私も『トルトニス』チームとして全力を尽くすが、万が一の事もある……その時は、頼む。」
ヘンリクが此方をまっすぐと見据える。相変わらず、言葉も意志もまっすぐな人だ。
「「「了解!」」」
「もしそうなった場合でも……あの兵器だけは、木っ端微塵に切り裂いてみせると、此処に誓おう。」
一呼吸おいて、ヘンリクは言葉を紡ぐ。
「……戦争において、どちらかが正義であるという事はありえない。どちらにも正義があり、どちらかを悪にせざるを得ないのだ。だからこそ、彼らが殺戮兵器を用いるのを、我々も殺戮を以てして食い止めよう。全ては、護るべきものを守るために。」
ヘンリクが席を立つのに合わせて、全員が同じように席を立つ。
「これは我々の未来を守る為の戦いだ……諸君等の奮闘に期待する…!」
返答の代わりに、皆が一斉に敬礼する。
───守るんだ。俺達の大切な、この場所を。
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