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朧火の意志  作者: 布都御魂
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暗き地に蠢くモノ


「着いたゼ。」


ライノス800から降り、目的地である洞窟の前に立つ。見た感じ普通の洞窟に見えるが、陸軍の兵士達が言う通りであればこの中にはヒュージ・ワームがうじゃうじゃいるという事になる……正直キモイのは気が引けるが、やるしかないだろう。


「んじゃ、行くとするか……俺が先頭を行くから、ジャックは後ろの警戒を頼む。」


「任せロ。」


AKのグリップを握り締め、ジャックと共に洞窟の中へと歩みを進めて行く。入り口付近はともかく、中は光源が無いのもあって完全に暗闇状態だ……気を付けて進まなければ。


フェイスガードの暗視装着を起動し、フェイスガード越しの洞窟内を鮮明に映し出す。一面が灰色に染まった洞窟が映し出され、その表示を頼りに洞窟内の探索を開始する。


「……随分と深い洞窟だな。」


「まぁヒュージ・ワームがいるからナ……アイツ等は岩盤を食って掘り進めるミミズだし、その数が多けりゃ多い程洞窟も広くなっちまうって訳ダ。」


「なるほどな……ん?今何か動いたか…?」


灰色に染まった視界の端に、何かが動いたのを捉えた……この洞窟内で動くものと言ったら──


「……お出ましカ。」


「そうみたいだな…。」


目の前に長い筒のような物体が蠢く。暗視装着のせいで色は分からないが、体長は約4mはあるだろうか……とにかくデカいミミズが、俺達の前に姿を現していた。


偶然視界の端に映ったから良かったものの、気付かす進んでいれば危うく喰われていた所だったな…。


「やるぞジャック……さっさと始末して先に進もう。」


「オーケイ!」


ジャックが前に出て、手に持ったAKをセミオートでぶっ放す。ジャックが使っているのも俺と同じく、ロシア製の最新型アサルトライフルである『AK-15』だ。大口径の7.62✕39mm弾をぶっ放す事の出来る優秀なライフルであり、その威力はこの馬鹿デカいミミズ共を屠るのにも役立ってくれる筈だ。


『ギィィィィィィィィィィィィィ!!!!!』


銃弾をモロに受けたデカミミズが悲鳴を上げてのたうち回る………ミミズって鳴くんだな…。


ボタボタと体液を撒き散らしながら暴れるミミズに巻き込まれないようにしつつ、ホロサイトを覗き込んで引き金を引く。サプレッサーによって音を殺された銃弾が銃口から放たれ、デカミミズの頭部に風穴を開けていく。風穴からは体液が流れ落ちているが、どうやら体液自体は本当にただの体液らしい……強酸性とか、そういう要素は無いようだ。


何発かセミオートで銃弾を叩き込んでいるうちにデカミミズから力が抜け、掠れた悲鳴を上げつつ音を立てて地面に倒れ伏す…ピクリとも動かないし、どうやら絶命したみたいだな。


「ふぅ、なんとかなったな…。」


「相変わらずデケェミミズだゼ……こんなのが大量に嫌がるとか、世紀末にも程があんだロ…。」


クソデカいミミズが蔓延る世紀末とか想像したくもないな……控えめに言ってキモすぎる。


「……先に進もう。こんな奴ら、さっさと駆除してしまうに限る。」


「…同感ダ。」


暗視装置を頼りに洞窟内を進んでいく。洞窟内は思っていたよりも緩やかな斜面であり、切り立った岩盤を降りていくとかそういった事はしなくて良いようだった。まぁ装備もあるし、その方が助かるんだが。


しばらく緩やかな斜面を下って行くと、少し開けた場所へと出た。洞窟の最奥……と言う訳では無いようだが、いかんせん先程までの通路と比べると格段に広い。警戒しておくに越した事はないだろう…。


「……随分広いな。」


「あぁ……この感じ、元々あった空洞に行きついちまった感じか…?」


ミミズ共が掘り進めて行った先が、この巨大な空洞という事なのだろう……とはいえミミズ共の姿は無いようだが…。



ボタボタッ。



ボタボタボタボタッ。



「何だ……水音…?」


「いや、それにしちゃ音に重みがあるような…。」



ボタボタッ。



ボタボタボタボタッ。



「雨漏りなのか…?いったい何処から……」


「っ!メルト!上だっ!!!」


ジャックの声に目線を上に向けると、暗視装置が洞窟内に()()()()を映し出した。


……天井に張り付く無数のナニカ。


まさかアレ全部────


「っ、退避!!」


来た道を全速力で突っ走る。あの数が一気に降り注いで来たらひとたまりも無いぞ!?


とその時、後ろの方から轟音と共に土煙が舞い上がる。土煙は空気の流れがある入り口の方へと流れ、一瞬にして俺達を土煙の中へと包み込んだ。


「ゲホッ、ゲホッ……降りて来やがったか…!」


「ゲホゲホッ…クッソ、洞窟崩れたらどうしてくれんダ…!」


土煙が晴れた先、暗視装置の映し出す光景は──とてもこの世のものとは思えない光景であった。


グネグネと音をたてながら地面を這い回るヒュージ・ワーム達。絡み合っているせいで総数の把握が出来ないが、恐らく30体以上はいる筈……さっきの1体ですらデカく感じたのに、これだけ集まると巨大な1匹の生物にも見えて来てしまう。


……その姿はまるで、数々の神話や伝承に登場するヒュドラの様であった。


「コイツぁ骨が折れそうだナ…!」


「来るぞっ!」


数匹のヒュージ・ワームがこちらを認識し、勢いよく体を此方へと伸ばして来る。捕食しようと開かれた口からはダラダラと涎のような物が溢れ落ちており、よく見るとその口元にはびっしりと尖った牙が生え揃っていた。


どうやら先程の水音はコイツ等の涎が正体だった様だ……汚ぇな。


「ミミズの癖にいっちょまえに牙生やしやがって…!」


セレクターバーをフルオートに切り替え、向かってくる1匹に向かって銃弾を叩き込む。シュパパパパパという空気の抜けた様な音と共に放たれた銃弾がミミズの肉体に風穴を開け、分厚くも柔らかいミミズの肉体を小汚いミンチへと変えていく。暗視装置越しだからモノクロの肉片にしか見えていないが、これが明るい場所で肉眼で見るような事になっていたらと思うとゾッとする……うわ、鳥肌立ってきた。


風穴を開けられ崩れ落ちていく1匹から目線を外し、まだまだ元気な隣の個体にも7.62mm弾を叩き込んでいく。甲高い悲鳴を上げながら体液と肉片を撒き散らしつつ絶命するミミズ達に顔をしかめつつ、移動しながら着実に数を減らしていった。


3匹目…4匹目と撃破を重ねていったものの、5匹目を撃破しようとする段階でマガジン内に装填された弾薬が底をついてしまう。普段であれば残弾数を把握しつつスムーズなリロードを心掛けているが、迫りくるデカミミズと真っ暗な洞窟内という緊迫した状況下においては、いつもどおりの動きが出来なくなってしまっていた。


「ちっ…!」


舌打ちしつつ沈黙してしまったAKをスリングに預け、マグネットホルスターから改造ショットガンである『スプラッター』を取り出す。セーフティを解除し、目前まで迫り来るヒュージ・ワームに向かって至近距離で12ゲージの散弾を叩き込む。切り詰めたせいで少し増してしまった反動がワイヤーストックを当てている肩に猛威を奮うが、その反動に耐えたお陰で目前に迫っていたデカミミズの頭部がグッチャグチャのミンチになって吹き飛んでいく。


モノクロ越しですら感じるグロテスクな光景に若干の吐き気を催すが、今は胃の中のものを出している場合ではない為、気合で吐き気を押さえ込む。若干の嗚咽を漏らしつつフォアエンドを引き、薬室に次の散弾を装填して発射準備を整えておく。


先程ミンチになった個体を乗り越え、此方を捕食しようと涎を撒き散らしながら迫り来るヒュージ・ワームに向かって『スプラッター』強烈な一撃をお見舞いする。放たれた散弾がヒュージ・ワームの肉を引き裂き、至近距離の為に密集して着弾した散弾達がミミズの頭部中央を思いっきり抉り取りつつ吹き飛ばす。近いせいで此方にも肉片や体液が飛び散ってくるが、今はそんな事を気にしている場合ではないのだ……落ちるかな、コレ。


雑念を振り払い、後退しつつ着実にヒュージ・ワーム達の数を減らしていく。コイツ等を放置してしまえば、いつか確実にエリア021の人々に襲いかかるだろう……そうなってからでは遅いのだ。


とはいえ、だ…。


「ちぃとばかしジリ貧じゃねぇかなっ!」


『スプラッター』でミミズをミンチにしつつ、真横に迫っていた別の個体の捕食をギリギリの所で回避する。


「弾薬はまだまだあるが……ちょいと火力が足んねぇなぁ!」


ジャックもAKを乱射してミミズ達を穴だらけの肉片へと変えていく。暗視装置越しだから表情は分からないが、動きから見ても疲労が蓄積しているのは明らかであった。


「一時撤退も視野にいれるべきか──っ!?」


撤退を考え始めていたその時、唐突に洞窟内の地面がグラグラと揺れ始める。その揺れは地面から来るものというよりは別の場所からの……


とその時、ガラガラガラッという轟音と共に何かの落下音が洞窟内に響き渡る。音の発生源は俺達のいる場所よりも少し後方からのようで……


「……オイオイ、嘘だロ!?」


ジャックの声に、音のする方を振り向く。





そしてその光景に、俺は目を疑った。





──俺達が先刻潜り抜けた洞窟の入り口が、崩落した岩肌によって塞がれてしまっていたのだ。





「……マジかよ。」





……暗く深い、雑食のヒュージ・ワームが蔓延る洞窟に、俺達は閉じ込められてしまったのだった。



お読み頂き、ありがとうございますm(_ _)m

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