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黒の英雄譚 ~漆黒の女帝~  作者: 涙目 ホクロ
職人の街 ファージ
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第59話 黒龍変化

ゆっくり、と

まるでビデオカメラのスロー再生を体全体で味わっている気分だ。

いや実際には、これほどゆっくりではない。これはオレの意識の時間の感じ方に問題があるのだろう。


まぁ俗にいう、死ぬ直前という奴だろう。


だとしたら不思議だ。後悔や死への恐怖といった感情――生への執着とでもいうのだろうか?

それらが全く出てこない。

もしかしたら、オレ自身何処かで諦めてしまって自暴自棄になっているのかもしれない。


転移して、たった二か月。桜坂吹雪、齢一七と少し、人生に幕を下ろす。


うーむ。十七か、短い気がする。

だが、内容は十分に濃いだろう。なにせ、人生の最後を異世界で迎える。

オレの人生に幕を下ろす死神はウサギの魔族。

魔族・・・・・・これまたファンタジーの世界でしか聞かない種族名だ。


オレが死ぬことを親父やお袋、そして何より明はどう思うだろうか?

悲しんで涙を流してくれるのだろうか?

そもそも、オレが死んだという事実はどう伝わるんだろうか?

もしかしてその事実すら知らずに生き続けるのだろうか?

だとしたら残酷だ、ほんとに残酷なところに来てしまった。

帰りたい、家に帰りたい、こんなところから今すぐ家に、日常に帰りたい。

こんな化け物どもから、こんな戦場から、こんな世界から今すぐ逃げ出したい。

いやだ、いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ――

――こんなところで〝死にたくない!!”


《やっと聞けたぞ。その言葉、貴様の生への願望》


頭の中で声が響く、アトラスやティターニア、はたまたツバサからの念話でもない。

そもそもここはオレの意識の中、オレ以外の奴からの干渉なんてできるはずもない。


「あんたは誰だ?」

《さぁ、私自身以前までの記憶がなくてだな。まぁ、安心しろ。これだけは断言できる、お前の味方だ》

「味方?」

《あぁ、何せ私はお前自身であり、お前の意識とは別の存在》

「何が出来るんだ?」

《そうだな、少なくとも目の前の敵に貴様を勝たせること可能だな》

「勝たせる? 何を言っているんだ、あんたもオレの中にいたのなら見ただろ? アイツの速さの前にはオレは」

《そう深く考えるな。生きたいと願え、それだけでいい》


そう声が響くと時間の感覚がかわる。

間違いない、

目の前の死神の鎌が、今、振り落とされる。

生への願い、具体的には何をすればいいか分からない。

だが、今、目の前への死に向かってオレができることはただ一つ。


「こ、こんな所で、死んでたまるかあぁぁあああああああああああ!!」


コマンド確認――‟黒龍変化ディザスターモード”起動。


「うぐ……ううう……GÚuuAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaa――」


後に聞いた話によると、戦場に突如として巨大な黒い竜巻が現れたらしい。

ただその竜巻からは物凄い濃い魔力が溢れていたことから調査を繰り出した帝国兵は魔族が生み出したものとして決定づけたらしいが、実際は違う。

何せこの竜巻の被害者は紛れもない魔族だったからだ。


「こ、この魔力、似ている、いやこれは、あのお方の魔力!? そ、そんな、われら魔族の悲願が、こんな形で顕現するなんて、断じて認めはせぬ、いやみとめてなるものかぁあああああ!!!!」


先程までの余裕を無くして、ウサギの伯爵が発狂している。

ん? 何だか違和感を感じる。

いつもより視界が広いってェえええええええええええ

視界が広いってレベルじゃない、先程まで目の前に迫っていたウサギの伯爵は今や足元に、その前に立っているのが自分の足だとするとオレは今、少なくとも身長は20メートルは優に超す巨体となっている。

ましてやこの鱗の生えた足、まるでB級RPGに出てくるリザードの鎧を来ている状態みたいだ。だが、直に鱗が生えている。それにこの背中にある違和感、特に肩甲骨(?)辺りから何か生えている、まるで重りを背負っている感じだ。


「あり得ない、あり得ない、あってたまるものかあああああああ、我らの悲願、黒龍様の復活が・・・・・・器か、まさか、こんな小娘に器が宿っているのか?」


いや、ありえない、ありえない、ありえないって思っているのはオレの方なんですけどぉおおおお!?


「貴様ら、先程からうるさい、黙れ」


その一言で、ウサギの伯爵が言葉を発することをやめた。

否、発することができないのだ。

なぜなら、オレも言葉を発することが出来ないからだ。


「無事に成功したみたいだな。肉体の主よ、しかし、生きることに必死になって半分ほど暴走状態になる所だったぞ?」


ニヤリ、ともう1人のオレが言う。

恐らくオレの体は今、もう1人のオレの手により操作されている。


「どれ、この姿では少々戦いにくいのでな。適当なサイズまで調節するぞ」


そう言うと、体がどんどん縮んでいき最終的には、ウサギの伯爵より少し小さいサイズで止まった。


「さて、ウサギと言ったか? 伯爵クラスよ」


ドンっ!! ドンっ!! ドンっ!! ドンっ!!


もう1人のオレが言う前にウサギの伯爵が動いた。

あの行動は・・・高速で足を蹴ることにより、空気を踏んで空中で加速しているのか?

ダメだ、仕掛けは分かるが、もう目で追いつけない。

恐らく、もう音速の領域に差し掛かっている。


ダンっ!!


耳の前で大砲を打たれたみたいな衝撃音が響く


死角からの脳天を狙った回し蹴り


ウサギの伯爵は生まれ持った強靭な足と自分が使う身体強化系の魔法に自信があったのだろう。

衝撃音がした時、彼は確かな手応えを感じていた。

なぜなら、伯爵クラスの維持として敗北はありえないから、本気を出していたからだ。


「・・・!?」

「何を驚いている?」


おいおい、嘘だろ?

恐らくウサギの伯爵の本気の必殺の技を片手で止めたのだ。

ウサギの伯爵の顔に恐怖という文字が浮かび上がっている気がした。

まるで化け物と戦っているような感じだろう。


「貴様は何も分かっていないな、貴様が今いるのはどこか。簡単だ、私のだした竜巻の中、こうゆう風に言えば伝わるかな?――固有結界、ここは私の世界、故に貴様が私に勝つ可能性は0に等しい、まぁせいぜいがんばってくれよ、野ウサギさん」


メキメキとまるで軋む音をたてながら、肩甲骨辺りに折り畳まれていた重りをと思っていた物が開き、竜巻の起こした風に乗る。

翼、それも蝙蝠と酷似した、真っ黒な翼。

そして、風に揺れる真っ黒な髪。

ウサギの伯爵の目に映る、紅い目とその色と同じ頭に生えた2本の角。

この見た目は間違いない、どうやらもう1人のオレはドラキラの世界において最高種族にて絶対的種族――龍人族らしい。

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