第58話 ウサギの伯爵
久しぶりの投稿です。
北の方角から蒼い炎の大爆発と呼べる現象が起こる。
蒼い炎からは煙は生じず、ただ延々と森を蒼く光らせる。
よくニュースで火事などの映像は見たことあるが、炎の色が蒼色ということに普通の人なら違和感を覚えるだろう。
しかしオレはこの世界に来て、日常ではあり得ないこと、刺激的な毎日を過ごしてきた。
故に思うのだが、森の損害賠償がどうかうちに回ってきませんようにと。
まぁ、とりあえず。蒼い炎って何か、かっこいいよね!!
スザクじゃなくてあくまでも蒼炎がね!!
「よくここが分かりましたね、人の子よ。私こう見えて隠密行動には自信があったのですが」
目の前に居る隻腕の兎の魔族、いやこの魔力量……伯爵級がそう告げる。
ここに来るまでにいくつもの術式があった。
相手の方向感覚を鈍らせる術式や、対象を恐怖に陥れる術式。
どれも、人の思考に影響を与える術式の為、魔術に関する知識が長けていなければ創ることのできない相当複雑な術式らしい。
まぁオレの場合は術式の場所が分かれば、刀で切れば魔法の効果を打ち消せるというチートクラスの武器であったのであまり関係なかったが。それに、アトラスという信頼できるナビゲーターもいたしね。
さて、問題はここからだ。
痕跡を頼りにウサギの伯爵を追い込んだがいい、いいのだが……これからどうする?
もちろん戦闘だ。戦闘を開始する。
ウサギの伯爵が魔方陣の召喚者なのは違いない、故に伯爵をたたけば魔法陣も消え、無限のような魔物の群れももう召喚されなくなるだろう。
これはファージの街を救えることになる。
だが、問題はその戦闘だ。
相手は伯爵クラス、魔物やジヤのような魔族よりも断然敵に強い魔族。
豚の伯爵の時は、脳からはアドレナリンが大分抽出されていた。なおかつ、ティターニアからの援護もあった。
だから、多少のごり押しで勝つことができた。
じゃあ、今はどうだ?
この魔族に近づけば近づくほどに、魔物のレベルや量は格段に増えていき、殲滅戦を得意とする炎の王で対処したためティターニアの魔力は尽きた。
それに今のオレは興奮状態かどうかを問うならばそうじゃない。
この伯爵を前にして、戦闘意欲よりか恐怖の感情のほうが上回っている。
状況が違いすぎている。
魔族の性格上これから戦闘になるのは避けられない。
ならどうやって戦うか?
・越えられない種族差の壁をどうカバーしつつ戦うか。
・伯爵級ならば魔王より授かったユニークスキルを持っているはず。
あげるとしたらこの二点だろう。
それにユニークスキルが分からない以上、うかつに手を出すことすらできない。
――緊張が全身を駆け巡る。
「さて、人の子よ。私は私の美学に合う戦い方を好みます。故にあなたに質問します。降伏するか、それとも私に挑むのか?」
――ウサギの伯爵からの提案
「仮に降伏すると言ったら?」
「その選択を別に蔑んだりはしません。むしろ賢い考えでしょう、今から滅びゆく街の見方をするよりかは、えぇ、賢明な判断です。あ、でもあなたほどの実力があれば魔族になるという手もありますねぇ。どうです魔族なって一緒に世界を作り替えましょうではありませんか!!」
ウサギの伯爵がにたりと笑う。
なんだろう、相手にとっては冗談を言っているつもりなんだろうけど、全然笑えない。
「さぁ答えをお聞かせください。人の子よ、あなたはどちらを選ぶ!! 戦うのか、降伏するのか!!」
――ウサギの伯爵が天を仰ぎそう叫ぶ
その姿はまさに狂気を現化した姿だ。
「ファージの街を守るには、戦う以外の道はないんだろう? なら戦うまでだろ」
「そうですか、では戦うまで。我が名は色欲の魔王にお使いする、ウサギ、あなたを狩る者。さぁ色欲の名の下にいざ勝負!!」
ウサギの伯爵言い終わると同時に姿が消え、オレは吹っ飛んだ。
いや正確には吹っ飛ばされた。
「!?」
腹部に激しい痛み――腹パンだと?
いつ間合いに?
瞬歩か?
いや、瞬歩だとしたら必ず魔力の痕跡が残る。ウサギの伯爵がいた場所には魔力どころか足跡自体残っていない。
目は離さなかった、伯爵が消えると同時に吹っ飛ばされた。
風魔法? いやないか、今のオレはどの王の姿もしていない。
黒龍装備の状態では魔法に絶対の態勢がついている。
やはり、物理的な攻撃。
超高速移動だとっ!?
「おや? 今の一撃で倒されないとはあなた人間ですか?」
「その質問、あんたの同僚にもされたよ」
「同僚とは豚ですかな?」
オレの後ろに、その声はささやいた。
言葉を交わすまで、気配すら気づかなかった。
ドラキラのスキル、隠密でもここまで気配を消すことは不可能。
「人間のわりにタフですね。今の一撃で上級魔族は倒れますよ」
そういってまた腹部に激しい痛みが襲い掛かる。
うぷっ、
口から大量の息が吐かれる。苦しい、息が……。
「今あなたを蹴りました。今ので死なないなら貴方、本格的に魔族になりませんか?」
ウサギの伯爵が笑いながらそう語りかける。
あばら辺りが痛い、おそらく何本か折れた。
「なんの冗談だ? 冗談にしては笑えないな」
「ほほぅ、まだ息がありますか。まぁこれで止めです――死ね、人の子よ」
ウサギの伯爵が足を振り上げた。
次回の更新はできれば近々できるようにしたいです。




