第52話 ファージの街総力戦 北の門 紅刃烈火と守護者統括者
キツナ視点です。
どうも皆さんこんにちは。雪様の頼れる眷属兼雪様の守護者の統括者、キツナです。
本日は雪様の命により、アホもといスザクの保護者として北の門の指示を任されました。
先程から対極の位置にある南の門や西の門からすごい爆発音や竜巻などが飛んでいるのが見えますが、北の門はいたって平和です。
なぜなら
「ぬははははっはははははっ」
うちの戦闘狂が一人で無双しているからです。
前線がゴーレムや冒険者の方では歯が立たず、危うくなったのでスザクを出したのですが今では戦場を巻き返すどころか守備戦なのにも関わらず、今では敵の中心部まで攻め込んで一人で魔物を無双しています。
この分ならあと一時間足らずで敵戦力をすべて壊滅できそうですね。
何ですか? この強大な魔力。
「前方およそ300メートル先巨大魔法陣出現!! あの魔方陣の構成召喚魔法です、召喚物は……
何だと!? 前方300メートル先3体の巨大キュクプロス出現推定レベル600!!」
防壁の見張り塔に待機していた帝国兵がそう告げます。
やはり、敵も一筋縄ではいけませんね。
しかしあれを相手にするのは、冒険者は勿論、帝国兵でも相手にならないでしょう。
「聞きなさい、帝国兵、冒険者よ。前線を手放し、一度引きなさい」
無駄な命など絶対にあってはなりません。
仕方ないですが、ここは彼らに引いてもらえます。
「ゴーレムたちは、全員が逃げ切るまで足止めを。さぁ皆さん全力で帰ってきなさい」
帝国兵をはじめとした前線に出ていた方々が、門をくぐり街の中に避難してきます。
ここから見る限りですと怪我人はいませんね。
「さぁ、門を閉めなさい。魔物が入ってきてしまいます」
「ですが、まだスザク殿が戻ってきていません」
「あの……バカッ」
これでは門を閉めることなどできないではありませんか。
全く何を考えているんですかッ!? あの戦闘狂は
「ピヨ」
「まぁ可愛い」
あの戦闘狂もこの小鳥に見たいに可愛げがあれば、少しはマシなのに。
ん? この鳥の足についてるのは紙?
何か書いてありますね。なになに……。
我のことは心配するな
伝書バト飛ばす余裕があるなら、とっとと門を潜ってほしいですねって。
スザク? 何をしているんですか?
なんでキュクプロスに向かって……。
あのバカッ、また勝手に。
はぁ、仕方ありませんね。
「すみません、バカのサポートに行ってきます。私たちがキュクロプスをどうにかするまで皆さんはここに待機していてください。あ、門は閉めてていいですよ」
「了解でありますが、キュウクプロスをどう対処するのでありますか?」
「それはまだ考え中です。ですがあの程度の敵に後れを取る私達ではありません」
懐にしまってあった扇子を取り出します。
「さぁ、出てきなさい。紅鬼、藍鬼」
扇子に描かれていた紅鬼と藍鬼が扇子の中から飛び出てきます。
その姿を見て兵士たちが怯えているのが見えますが、今は仕方ありせん。
「でわ、行ってきます」
紅鬼に飛び乗り、防壁を一気に駆け下ります。
とても爽快感があり楽しかったので今度もう一回させましょう。
「さぁ我が障害を壊せ、鬼たちよ」
私がそう命令するとまずは藍鬼が、キュクプロスの象徴的な大きな一つ瞳を握り潰します。
GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOUUUUUUUUU
キュクプロスが瞳を失って、のたうち回ります。
まぁ瞳を握りつぶされたんです。想像を絶する痛みでしょう
のたうち回るキュクプロスに馬乗りになり、藍鬼がさらに追い打ちをかけるかの如く関節技を決めていき、
最後にはキュクプロスの腕は曲がっていはいけない方向に曲がっていました。
さすが藍鬼、体格差がるのにもかかわらずおよそ三分で仕留めてしまうとは。
「グウウウゥゥゥ」
「分かっていますよ、紅鬼。貴方も遊びたいのでしょう?」
「ウイィィィィィイイ」
「分かったからこの奇声を上げるのは止めなさい」
GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOUUUUUUUUU
仲間がやられたことに気付いてか、残りの二匹のうち一匹がこちらに向かってきます。
「ほら、遊び相手が来ましたよ。さぁ存分に遊んできなさい」
まぁ相手さんは鬼の遊び相手にもなれないほど貧弱でしょうが。
「グギャア」
紅鬼に遊ばれている。
キュクプロスから無残な悲鳴が聞こえてきます。
もうぼちぼちですかね。
「グギャァ……」
キュクプロスが絶命します。
「惜しいですね、後16秒早ければ藍鬼に勝てましたよ」
「グウゥゥ」
「まぁ、そう落ち込まないでください」
藍鬼の記録に惜しくも追いつけなかった紅鬼をなだめつつ、最後のキュクプロスの様子を見ようと思いましたがそれはできないみたいですね。
最後のキュクプロスのいた場所に巨大な焦げ跡が残っています。
スザクが終わらせたみたいですね。
「たわいもない」
スザクはもう終わったとみていますが、まだです。
先程と同じ魔力、しかも今度は複数ですか。
召喚されたものは……これはまた面倒ですね。
「スザク、追加です。一個体推定レベル800のワイバーンの群れ×9です」
「ほほぅ。ちょうどいいキュクプロスだけでは退屈すぎたところだ」
「数が数ですので手伝いま――」
「――よい。それより貴様の鬼共を仕舞っておけ、巻き沿いを食らいたくなければな」
全く何を言っているのか理解に困ります。
「それでは何か策があるのですか?」
「いや、ただ気に食わないだけだ。劣等種がこの紅刃烈火の異名を持つ我に向かってくるのが」
「それだけで?」
「まぁ見ていろ。紅刃烈火の人間版の活躍をな」
そう一言残して、スザクは飛び上がりあっという間にワイバーンと同じ高度まで行ったかと思うと刀を抜きます。
「紅き刃は烈火ごとく。紅刃烈火、カズラ斬り!!」
スザクの刀から炎が吹き出し刀に纏わり着いた瞬間、刀から斬撃が出されます。
一発、二発目は目で追うことができましたが数を重ねるごとにその斬撃は早いものになっていき、今では斬撃ではなくビームを打っているかのように見えます。
「グゥウウウウ」
「ええ、気づいていますよ。スザクの斬撃が速くなっていることですよね」
紅鬼も察知したみたいですね。
明らかに龍の姿の時よりも速くなっている。
いやそれだけじゃありません。放出されている魔力の精密度、更に狙いの正確さ全てにおいて龍の時よりも上がっている。
スザク、人間の姿で何かを得ましたね。
私がそう考察している間にも、スザクは早くも群れを一つ潰します。
「どうした劣等種? 貴様ら反撃もできないのか?」
PUWAAAAAAAAAANNNNNN
スザクの挑発に対し、ワイバーン達が一斉にブレスを吐きます。
ですが、スザクはそれを次々とかわしていき一匹一匹着実に仕留めていきます。
この分なら、スザクの心配はないでしょう。
「さて、出てきなさい。そこにいるのは分かっているんですよ」
「あれれ? おっかしいなー。ちゃんと魔力は断ち切っていたのに何で分かったのー?」
その存在は、何も躊躇うことなく私の前に姿を見せます。
パッと見は少年ですがこの甚大な魔力、ただ者ではない。
「つかぬことをお聞きしますが、貴方は魔族でということでよろしいのでしょうか?」
「面白いこときくね、見た目の通り僕は魔族だよー。あ、自己紹介がまだ終わってなかったね。僕は怠惰の魔王ベルフェゴールに仕える伯爵、通称ロバです」
「まぁご丁寧にどうも。私は雪サクラ様に仕える守護者統括者、キツナで御座います」
伯爵クラスですって……!?
油断はできません。雪様の話ではビャッコが敵わなかった魔族。
念のため藍鬼を後ろに回らせておきましょう。
「ところでロバ様は何をこんなところでなさっているのですか?」
「ふーん。それをこたえて僕に何か得でもなるの? まぁ僕の隠密スキルを見破った褒美として教えあげるよ。ファージの街を壊しに来た、ただそれだけ」
敵対者ですね、やれ藍鬼。
「おっとこれはまたすごい召喚精霊だね。この僕でさえ見たことない」
かわされた。後ろからの不意打ちなのに!?
しかもあの藍鬼の攻撃を。
これが伯爵クラスの実力、少し厄介ですね。
「おや、不意討ちで終了ですか? でわこちらから行かせて頂きます」
攻撃の軌道が見えない――
「――グっ」
「あぁキツイの一発入ったね」
不覚にも見えなかった。
ですが、この者を街に向かわせるにはいかない。
「藍鬼、紅鬼、この障害を壊せ」
『『ウイィィィィィイイイイイイイイイイイ』』
奇声を上げながら、紅鬼と藍鬼の怒涛の攻撃がロバを襲います。
信じたくないですが、私はスザクよりも自分の心配をした方がよかったということですね。
正直に申し上げると私ではロバに勝てない。
ですが時間を稼げば、こちらに勝機が回ってくる。
だからどうか頼みます。紅鬼、藍鬼。
そう思い、私は紅鬼と藍鬼の供給魔力を増やしていった。




