第46話 雨を吹き飛ばす風
「逃げろぉおおお」
「早く広場に、急げ!!」
全く先程から外が騒がしい。防音魔法が発動しているのにも関わらず、何故声がここまで届くのだ?
これでは、ハクがようやく寝静まったというのに起きてしまうではないか。
「ヒョウさん、今すぐ馬車で広場まで避難してください。魔物の群れが街に入ってきそうなんです」
ツバサが勢いよくドアを開けて、そう告げる。
なるほどこの騒動の騒ぎの原因は魔物か。
「それで被害は今どんな感じなんだ?」
「はい、地上にいた魔物はゲンブさんの結界と何者かが天変地異ともいえる大魔法で片付けているのですが、地中からこの街に入ってきた魔物に対しては現状冒険者の方とキツナが街中の魔物と応戦しています」
ゲンブ殿の張る結界でも地下から来る魔物に対しては対策は出来ていなかったということか。
しかし天変地異をともいえる大魔法を扱う魔術師か……主だな。
迷宮探索はもう終わったのだろうか?
「しかし先ほどの上空からの様子だと冒険者の方が相手をするのは少々強すぎるみたいで、やや劣勢気味でした」
劣勢気味か。
冒険者には悪いがあまり彼らには期待せぬ方がいいだろう。
キツナ殿でも一人で相手をさせるのは少々厳しいかもしれんな。
それにこの街に来てハクに付きっきりだった。もうぼちぼち体を動かさんと鈍ってしまいそうだ。
「我が出る。ツバサすまないが留守を任せても大丈夫か?」
「そんな、私馬車とか運転できませんよ!!」
「それなら心配ない。主が人形の執事という魔法道具に教え込んだと言っていた。それを使えばいい」
「エェ……もう、承知しました。ハクちゃんのことは任せてください」
「ふむ、では頼んだ」
第二の姿『半獣の姿』
さぁ始めようか。血沸き、肉躍る、一方的な狩りを!!
◇(地面を抉る)雨(豪雨)が降り続けるファージの街外壁付近
「すいません雪様のお手をまずらわせてしまって」
「気にするな、あのまま走っていても間に合わなかった」
まだ雨は止まない。
水の王の変身を解いたのに、まだ止む見込みはない。
自分で降らしておいてあれだが、この雨邪魔でしかない。
この雨のおかげで魔物の群れを分断及びに大多数は殲滅は出来たが街の方をよく見ると、所々から煙が上がっている。
「これはやられましたね。地中からの侵入されたみたいですね」
カガトが双眼鏡で見たものを報告する。
「地中から?」
「はい、確認される魔物だけでもムカデ型、ミミズ型の魔物が多いですね」
うん、絶対に会いたくない。
「おや、アレは何でしょう? 黒い獣人、いや獣?」
「貸してくれ」
カガトから双眼鏡を借り覗いてみる。
確かにムカデの魔物と戦う黒い獣人の姿が見える。
「し・・・じ・は」
黒い獣人が何かを呟くと獣人の体が赤いオーラで包まれた。
恐らく身体強化系の魔法なんだろう。その証拠に先程よりスピード、魔力量ともに上がっている。
スピードだけならビャッコと互角かそれ以上の速さだ。
それにしてもあの赤いオーラ見覚えがあるんだが、どこで見たんだったか思い出せない。
とりあえず街はキツナと黒い獣人に任せておけば大丈夫だろう。
さてとこちらはこちらの問題に取り掛かりますかね。
「運よく雨の範囲にいなかった魔物をどう対処すべきか」
「でしたらこの雨を利用して私とカガトの雷で感電させるのはどうでしょうか?」
「ビャッコさん、感電に必要な魔力量ちゃんと理解しています?」
「あら、それは貧弱ですね(笑)。あと質問を質問で返さないでください」
ここ最近ビャッコの闇が見えてきた気がする。
まぁそれは置いといて、ビャッコの魔力はもう底を尽きかけている。
多分雷を一発撃てば、魔力は尽きるだろう。
「主よ我の炎は当てにならないぞ。何せこの蒼き炎はどうにも制御が難しくてな」
スザクも使い物にならないときたか。
アトラスもこの雨を降らせたときに魔力を使い果たしたとか言っていたし、どうしたものかな。
「やはり雨が上がるのを待つしかありませんね。どちらにせよ、雨が降っている間は魔物たちも動く気配がありませんし……ってあれは?」
カガトがファージの街を指さす。
いや正確には、ファージの街からこちらに走ってくる人物を指さしている。
だがこの雨の包囲網をどうするつもりだ?
もしかして自殺志願者かな?
だとしても嫌だよオレ。なんかオレが起こした雨で人が死ぬなんて。
……後味が悪すぎる。
「おいっ、死にたくないのならこっちに来るな!!」
力いっぱいに叫ぶ。
恐らく届いているはずだ。だが人影は勢いを緩めない、いやそれどころか……えっなんで急に回転しだすんだ?
人影はさらに回転するスピードを上げる。
そしてその人影を中心として巨大な竜巻を引き起こす。
「今行きますビャッコさんッ!! 空斬鎌鼬術、『竜巻飛ばし』」
その男は雄たけびと共に発生させた竜巻を腕に集中させ竜巻を雨空に投げ飛ばす。
そう投げ飛ばしたんだ……物理的に。
飛んで行った竜巻が、雨雲を引き寄せ一つの黒い大竜巻になる。
「そのまま、海まで飛んでけよ。Goodbye for now」
竜巻がゆっくりと移動していく、あの方角はアスラの街が面している海、そうだな向こうの世界では太平洋と同じくらいの面積を誇るこの世界最大の海『ラシャル』がある。
多分あの竜巻のペースだと夜にはラシャルに着くだろう。
「無事でしたか。いやぁそれにしても災難でしたね、まさかあんな雨に見舞われるなんて」
竜巻を起こした張本人がこちらに向かってくる。
もう皆さんお気づきだろう。やってきたのはバチョフ、千年帝国第八部隊の隊長だ。
さて雨が止んだ。魔物たちが動き出す前にこちらから手を打ちますかね。




