第43話 覚悟
「やったな。スザク」
「……あぁ」
勝ったというのにスザクの表情が浮かばれない。
恐らくスザクはジヤという職人が打つ武器を気に入っていたのだろう。
だからこそジヤを斬ってしまったことに対して後悔の念が出ているのだろう。
「なぜジヤは剣を打てなくなってしまったのだろう?」
ジヤは楽しく打てなくなってしまったといっていた。
ではなぜ楽しめんくなった?
そんなの決まっている。
「ジヤ自身が言っていたガラクタだと言われたのが悔しかったからだ。だから無我夢中で剣を打ち続けるうちに膨大な魔力というものを欲しがったんだろう」
「――そいつは少し違うね」
嘘だろ、レイドボスを倒すほどの強力なスザクの蒼炎を食らって平気なんて。
いや、ポジション的に言ったらこいつはこの迷宮のボス。
途中にいたダーティワームよりも強いということもあり得る。
「貴様、何故平気でいられる?」
スザクがジヤに問う。
ジヤを鑑定した際、このような特殊な攻撃に対する耐性スキルやアビリティは持っていなかったはずだ。
「これをみてみろ」
ジヤが羽織っていた上着を脱ぐ。
まぁ大胆。なんちゃって。
そんな事より目が行くのは左胸に埋め込まれた紫色の拳サイズの石。
見た印象は禍々しいの一言に限る。
「これは魔族から差し出された魔力の塊だ。これがあるからオイラは……」
ジヤが胸に埋められた石について説明しだす。
まぁ、オレには鑑定スキルという便利スキルがあるためあの石の正体は分かった。
炎の龍王が封じられている魔封石だ。
それも炎の龍王を封じる為に作られた火属性に特化したもの、故にスザクの蒼炎が効果がない理由だ。
まぁ何故紫色に変色しているかはわからないが。
《宿主、今すぐあの半端者魔族の石に触れろ!!》
声を荒らげて頭の中でアトラスが叫ぶ。
「どうしてだ?」
《浸食されている、このままじゃ黒き魔力に炎の王龍が飲み込まれる》
中々深刻な問題らしい。
珍しくアトラスが焦っている。
「んで、オレはどうすればいい?」
《先ほども言った通り、あの石に触れるだけでいい。あとはこちらでティターニアを回収する》
「ちょっと失礼」
「なにするのさ」
ジヤの経緯を説明を区切るようにジヤに埋められた石に触れる。
手のひらに熱が伝わってくる、、、というかあっつ!!
反射的に手を離してしまったが未だに手が熱い。まるで炎を握りしめているみたいだ。
《まったくこの程度の熱さに驚くとは今回の勇者は先が思いやられるな》
頭の中でアトラス以外の声が響く。
透き通っていてどこか芯のある女性の声だ。
《とわいえ助かった。感謝するぞ、アトラス、そして首輪に選ばれしものよ》
《まったく宿主よ。あと少し手を離すのが早かったらティターニア取り出すことが不可能だった》
どうやら彼女が炎の龍王ティターニアらしい。
「……オイラの体に何をしやがった」
突如、ジヤの体から蒼い炎が噴き出した。
《私を取り出したんだ。あの石にもう炎を無効にする力は含まれていない、魔族に堕ちた報いだ》
ティターニアが冷たく言い放つ。
まぁどのみちジヤが生きていたとしても残りの余生は少ない。
なぜならここ亜人領の法律により魔族落ちしたことで処刑か、よくて終身刑からは逃れられない。
「熱い熱い熱い熱い熱い熱い」
ジヤ悲痛の叫びがこの場所に響き渡る。
自業自得だ。魔族の言葉にたぶらかされる方が悪い。
「オヤオヤ、ワガハイガミナイアイダニタイヘンナコトニナッテイマスネ。ダイジョウブデスカジヤサン」
その声を聴いたとき全身の毛が逆立った。
――嫌悪感いやそんな優しいものじゃない。
この声の存在を生理的に受け付けない根本的な強力な拒絶。
気が付いたらとっさに刀を抜き戦闘態勢をとっていた。
「オヤオヤショタイメントイウノニズイブンキラワレテシマッタヨウデスネ」
そんなオレなど動作もないようにジヤに近づいていく。
ただ目の前を通られただけで、手の震えが止まらない。
そしていやな汗が背中を流れる。
「トワイエコンナイロノホノオハミタコトモキイタコトモアリマセン。アナタナニモノデスカ?」
豚の怪物がスザクに問いかけたその時
「――雷騰、閃光の華」
眩い閃光が視界を奪う。
この技は確かビャッコの技で相手を目くまらし状態にする技だ。
だがなぜビャッコがここにいる?
「命令に背いたことをお許しください、主様。ですが主様の身の危険を感じて参上いたしました」
光がやむと目の前に、傷だらけのビャッコがいた。
酷い傷跡だ、特に右肩まるで何かに抉られたみたいに。
「オヤオヤマタアナタデスカ。ホントニシツコイデスネ」
豚の魔族がどこからか大槍を召還する。
「ツギデシトメテアゲマショウ」
今、あの魔族なんて言った?
次で仕留めてあげるだと?
つまりビャッコが今あんな姿をしているのはこいつのせい。
ふざけんな。
「ふざけたこと言ってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ」
手の震えは止まった。




