第42話 初の迷宮探索(9)
「これはどうすればいいんだ?」
四つの天秤の欠片を集めるところまでは無事に終わった。
だがしかしここで問題が発生した、この欠片の接着方法だ。
もちろん接着剤など持っていない。というかこの世界に接着剤などあるのだろうか?
もしかしたら何か不思議な力でくっつくのではないかと思い形に沿って欠片をつなぎ合わせていくも何も起きなかった。
材質は鉄、溶接でくっつけるのだろうか?
まぁ溶接に使そうな魔法はオレは使えないが……。
仕方ない、一度修羅姫たちの意見を聞いてみるか。スザクの意見は参考にならないだろうけど。
◇
鉄掘り機のところまで戻ってきた。
とりあえずこの現状を一言で言うとこうなる。
「どうしてこうなった?」
この岩盤だけ鉱石で溢れかえっている。鑑定によると全部鉄鉱石らしい。
「師匠がね。その炭鉱夫的な奴に目覚めちゃって……」
修羅姫が呆れ目で理由を教えてくれる。
スザクにはある意味の才能を感じてしまう。
「それでそのスザクはどこにいるんだ?」
「あそこだよ」
修羅姫が鉄掘り機の真下を指す。
まさか鉄掘り機があるのにつるはしか何かで掘っているのか?
「そりゃ」
わぉ、素手で掘っちゃってますよこの人。
というか魔力で体を覆うことであそこまでの力が出るのか。
「スザクもう鉄を掘るのはいいぞ」
「主か、すまんがもう少し待ってくれないか? まだ納得のいく鉄鉱石を見つけてないのだ」
「お前目的忘れていないか?」
「目的? 鉱石採取じゃないのか?」
「おいっ」
「冗談だ。それで探し物は見つかったのか?」
スザクに先ほどの出来事を一応報告する。
こうゆうところはしっかりと聞いているあたり意外とアホではないのかもしれない。
「なるほどな。主よその天秤に魔力は流してみたか?」
「なんでだ?」
「忘れたのか。魔力とは我らの力の源であり変幻自在な存在だ、その天秤に魔力を流し繋げることを連想したら一時的に使えることができるのではないか?」
なるほどね。確かに魔力はまだ流していなかった。
というかその発想がて来なかった。少し見直したぞスザク。
魔力を流すときは集中力が大切だと本に書いてあった。
そもそも魔力とは繊細な物であり壊れやすい。故に集中力が切れると魔力は崩壊を始めるらしい。
一つ一つの欠片を触り、形を確かめていく。
そして欠片をはめ込んでいく。何というかジグソーパズルをしている気分になる。
組み立て終わると次は固定だ。
組み立てた天秤に魔力を流し繋ぎ合わせていく。感覚は布を縫い合わせていく感じに近い。
最後に縫い終わった個所に玉止めする。
「できた」
うん、少々形は歪だが使うには申し分ないだろう。
鍵を取り出し天秤の皿の部分に鍵を載せ、もう片方に釣り合うように鉄鉱石を載せていく。
カーン、カーン、カーン
鍵の重さとちょうど天秤が釣り合った時、どこからか鐘の音が鳴り響いた。
「来る」
ドラキラ通りなら鐘の音が鳴り響くということはこれはボス戦の合図。
「雪、扉が出てきたよ」
上から修羅姫がそう告げる。
ほんとだ。先ほどまであった鉄掘り機は消え去り、代わりに扉が出現している。
それにしても地面が掘られているため空中に浮いている扉はとても不思議な光景だ。
「さぁお前の出番だぞ」
「うむ」
扉を開ける。
「あんたらここまで来たからにはオレを退屈させることだけはしないぐらいの強さを持つんだよな?」
扉を開けたらそこには真っ白な髪をした少年がいた。
見た目から判断する限りは、年はオレと変わりないが鑑定スキルによると年齢は400を超えている。
そして種族は妖精族の魔妖精で名前がジヤ。
何というかツバサから聞いた話からイメージしていた姿とはだいぶ離れている。
まぁ魔落ちしたからその影響で性格も少し変わったのかもしれない。
「それじゃ始めようか、退屈で退屈で死にそうだったんだよ。さぁ、楽しもうか」
ジヤが腕を振り上げると上空に無数の魔法陣が出現し中から刀や剣といったメジャーな武器からハンマーなどの鈍器にいたる多種多様な武器を召還する。
なるほどこれがジヤの持つユニークスキル『無限の武器庫』の能力だろう。
まったくどこかの英雄王がしてくる技のまんまだ。
ただ少し厄介だ。すべての武器に特殊効果が付与されている。
「ほんとに一人で大丈夫かスザク?」
今一度スザクに確認を取る。
「無論問題ない。主よ手出しはするなよ」
こいつ笑っていやがる。
へまして死なないことを祈ろう。
まぁ殺させないが。
「いいねぇいいねぇ、オレあんたみたいなバカ結構好きだよ。でもね。その余裕なんかむかつくからこれ食らって死んじゃいなよ」
怒涛の勢いでジヤが召喚した武器がスザクに降り注ぐ。
だが一つもスザクに届くことはない。
「貴様の武器は全てこんな炎にも耐えることの貧弱な武器なのか。残念だな」
ドラキラの中で四聖獣と数えられる、ビャッコ、ゲンブ、セイリュウ、そしてスザク。
この四体にはある特性がある。
それは戦う際に魔力を纏う特性。
ゲンブは木族性の魔力を、ビャッコは雷属性の魔力を、セイリュウは水属性の魔力を、スザクは炎属性の魔力を纏う。
つまり今のスザクには全身を覆る炎の守りがあり、ジヤが放つ武器はスザクの炎で溶けてしまっている。
「ならこいつはどうだ?」
ジヤが指を弾くと魔法陣の模様が変わった。
あれは水魔法の魔法陣、だが出てくるのは全て武器。なるほど属性の有利で勝負を挑むわけか。
だが無駄だ。
「おいおいさすがにそれはないだろう。なんで効いてねぇんだよ?」
「知らないのか? 強い炎は水を蒸発させることもできるんだぞ」
炎属性が水属性に勝つ、これはドラキラではありえないことだ。
だがここは異世界だ。
オレも先ほどのダーティワームの時、スザクの炎で滝が蒸発する現象を見て気付いた。
だから今までの認識だけではいけない。
ゲームの知識と現実の知識、この世界ではこれが大切になってくる。
「ブファ」
ジヤが血反吐を吐いた。鑑定スキルを使用して状態を確認をしてみたら魔力枯渇状態になっている。
なるほど『無限の武器庫』は長くは続かないらしいらしい。
そこにすかさずスザクが鋭い一撃をジヤに与える。
「チッ、ここまでか。多分これがオレの最期になるんだろうなら冥途の土産に教えてくれよ」
ついに上空を埋め尽くしていた魔法陣がすべて消える。
スザクはいまだに無償だ。
「冒険者じゃないしかといっても聖騎士でもない、何者だよあんた」
「我か。我の名はスザク、漆黒の女帝雪サクラに仕える守護者だ」
スザクめ、中々恥ずかしいことを言ってくれるな。
今度から漆黒の女帝と名乗ることは極力控えることにしよう。
「これを受け取れ」
スザクがジヤにある剣を投げる。
あの剣は迷宮に入る前に冒険者ギルドでスザクが借りてきた剣だ。
「これは……」
「この剣は貴様が打ったらしいな。その状態でも剣は振れるだろう?」
ジヤが剣を杖のかわりにして立ち上がる。
オレから見るとボロボロでとても剣を振れる状態とは言えない。
踏み込みもまともにできないで剣筋も滅茶苦茶でスザクにかすり傷を与えることすらできない。
それでもジヤはスザクに立ち向かう。
剣を必死に握りめて、ふらつきながらも何度でも向かっていく。
「なるほどな、剣を通じてようやく貴様のことが分かった。貴様はただ単に認めてほしかっただけなんだろう? 何を認めて欲しいかはは知らないが、我は少なくとも貴様の剣を認めていたぞ。一寸の狂いがないどこまでも真っすぐな見ていて気持ちがいい武器だった。だからこそ怒りを覚えた、貴様が先ほどから放つ武器は魂がこもっていない、いくら性能がよかろうと魂がこもっていないのならそれはただのガラクタに過ぎない」
「それは一番オイラが分かっている!!」
――ヒュン
ジヤの渾身の一振りがスザクの前髪を掠った。
おそらく今の攻撃をスザクはあえて避けなかった。
スザクはジヤの本質を見極めようとしているんだろう。
「打てないんだよ。もう昔みたいに楽しく打つことができないんだよッ」
ジヤが悲しみの雄たけびを叫びながらスザクに突っ込む。
んっ、魔力が回復している?
「アンタには分かるか? オイラの武器を手にした人々が軽く振っただけでこういうんだ『あぁ、これはただのガラクタだな』ってオイラがどんな気持ち打ったかも知らないくせにたった付加効果がないだけでこうも差別されるんだ。だからオイラがどんな気持ちで魔力を欲したかアンタには分かるか!?」
「すまんが分からないな。我は鍛冶師ではないし貴様のような境遇でもない。だがなギルドにて貴様の武器を振ったとき貴様の信念というものを感じた。魔力がない体質?そんなもの知るかッ。魔力がなくても貴様にしか打てない剣があるだろうッ!!」
凄まじい魔力と魔力のぶつかり合いだ。
スザクが剣に蒼炎を纏わせたかと思うとジヤはジヤで紫色の炎を剣に纏わせている。
ただ一つ分かることは二人とも凄まじい破壊力の剣を振るっているということだけだ。
二人の剣がぶつかるたびに衝撃で地面にひびが走る。
おっとついに地面まで抉れてきたか。
「修羅姫つかまって」
修羅姫を抱えひびが少ない場所に移動する。
ここなら二人の戦いを安心して観戦できるだろう。
「この勝負、師匠勝てるかな?」
修羅姫が心配げにこちらを見つめてくる。
「正直ジヤがここまで強いとは思っていなかった。だけどね修羅姫、戦いに関しての実戦経験はうちの中じゃスザクが一番経験している」
なんたってオレの一番最初の仲間なんだから。
だからこそ信じれるスザクは負けないと。
「せりゃああああああああ」
スザクの一撃がジヤを捉える。
ジヤに蒼い炎が広がり燃え盛る。
この勝負どうやら決着がついたみたいだ。




