第38話 初の迷宮探索(5)
「熱い」
暑いじゃなくて熱い。額から汗が止まらない。というか熱さで目がくらむ。
階段を上った先は、赤く燃え上がる溶岩の上の岩盤というところだ。
先程の暑さを涼しいと感じてしまう。
「ふむ。我の寝床に似ているな」
スザクは火龍。
普段は火山地帯に生息している設定だった。ちなみに宝物庫に繋がっているスザクの寝床の魔方陣の先も火山の火口だ。
そのせいかこの過酷な環境でも平気なようだ。
「はぁ、はぁ、駄目だ。暑い」
その横に居る修羅姫は、滝のように汗をかいている。
その際に汗で巫女服が透けてしまっているが、そんなことを注意する気力が湧かない。
ただひたすら思うことはただ一つ。
あ・つ・い。
オレも鎧の下はサウナ状態を通り越し鉄板で焼かれているみたいだ。
「主よ、顔色が優れないな。そんなに暑いのならクールを使えばいいんじゃないか?」
それだ。
ドラキラでも火山のフィールドでは、熱により徐々にダメージを食らう。
特に魔物との戦闘で火口付近に行く場合は、ダメージ量も馬鹿にならない。
そんなときに必然的に重視されてくる魔法、それが熱さまし。
氷結魔法に分類されている為、氷結魔法を覚えないといけないがこの汎用性の広さに運営はいきな計らいをした。
熱さましの巻物化、これにより氷結魔法のスキルが無くても火山地帯の安全が確保された。
たまには役に立つなスザク。
「雪、涼しくなる方法があるなら早くかけてもらえないかな? 僕もう駄目かも」
いけない、修羅姫のHPが暑さで半分以下まで下がって来ている。
急いでアイテムポーチに手を突っ込み、巻物を取り出す。
「熱さまし」
清涼感が全身をめぐり、体内に籠っていた熱が四散する。
「ふぅー、さっきよりかはマシになったけどそれでも暑いね」
「まぁ、溶岩の上だからね。」
カン、ブシュ―、カン、ブシュー
ん何か今聴こえた。
カン、ブシュ―、カン、ブシュー
何かを叩く音が聴こえる。
「この音は?」
スザクが音の原因を探す。
「この音、剣を叩く音に似ている。雪、ジヤは元々鍛冶師なんだよね?」
「ツバサに聞いた限りではそのはずだ」
「ならこの階はジヤの工房とかじゃないかな」
なるほど工房か。
先程は暑さで気にする暇はなかったがよく見ると床には剣や盾、屋などの武器が散乱している。
それにクレナの工房も火山の火口にあった。
だとしたらジヤの工房の可能性は高くなる。
「それにしてもこの階層には次の階層に上がる階段がないな。何かを倒さないといけないのか?」
「いや、その必要はない。オレの索敵スキルには反応はない」
そう索敵スキルが反応しない。逆になにも反応しないから不安になる。
ピコーンピコーン
ん? 罠探知スキルが反応してる。
どうやら近くに罠があるらしい。神経を研ぎ澄まし罠の位置を特定する。
一、二、三……はっ? な、なんだよ、この数の罠は!?
反応している罠の数が徐々に増えてきている。
気づいたらここの階層一面罠だらけだ。
――トラップ階層か。
ドラキラの迷宮でもごく一部の迷宮にしか存在しない階層。簡単にいえば魔物が一匹も出ないが事故死が多発する階層。なかでも高難易度の迷宮のトラップ階層は踏むと即死魔法が発動したりする質の悪いプレートがフィールドに埋められてたりもする。
確か修羅姫とスザクは罠探知スキルを持っていなかった。
「スザク、修羅姫、ここはトラップ階層だ。オレの後から慎重に――」
進めと言おうとして目の前の状況に絶望した。
「師匠。ここだけ不自然に出ているでっぱりってなんだろうね?」
「押してみたらどうだ?」
「そうだよね、こんな不自然に出てるでっぱりがあったら押したくなるよね。えいっ」
「エイッじゃねええええええ。うわっ!?」
罷免が揺れてる? いや違う岩盤が沈んでいる!?
まずい。このままじゃ溶岩にダイブすることになる。
冗談じゃない、他の岩盤は――チッ、遠いな。
「修羅姫、スザク!! オレに掴まれ」
「何か策があるのか?」
「んなもんない!! だがどうにかしないと死ぬ」
全くこの二人実は疫病神かなんかじゃないのか?
まぁ一つだけ策がないわけじゃない。ドラキラで一時期はやった裏技……というかトラップ階層でしかできない裏技。
「そらあああああ!!」
他の岩盤に刀を投擲する。
投げる際の注意点は、45度で投げること。
そうすれば必ず地面に刀が刺さる。
「あんなところに刀を投げてどうすんのさ!?」
「こうするのさ」
《開け我が宝物庫》
岩盤から黒い大扉が現われる。
「さぁ中へ」
◇
《閉門しろ、我が宝物庫》
重々しい音を立てて宝物庫の扉が閉まる。今頃岩盤は完ぺきに沈んでいるだろう。
まさに危機一髪だった。まぁ皆無事だから結果オーライだが
「全く、何してくれるんだ二人とも?」
いい機会だ。二人に少しお灸を添えよう。
宝物庫の中で二人を正座させる。
多分二人とも今から何が起きるのか大方気が付いているんだろう。
二人とも顔が真っ青だ。
「オレは言いましたよね? 何があってもすぐに適応できるように常に緊張を持って迷宮に挑めと。違いますか?」
『『はい、その通りです』』
二人が声をそろえて言う。
「でわスザク。お前は戦い以外ではほぼ無能に等しいから。って、いやダーティワームの時もお前は周りのことを考えて戦えてなかったから完璧な無能に……」
「主、我に対する。説教だけひどくないか!?」
「気のせいだ。ちゃんと師匠なら弟子の面倒を見てやれ」
次は修羅姫の番だ。
「修羅姫、慎重に進め。いつどこで何が起こるか分からないから」
「了解したよ、ちゃんと緊張感を持って挑む」
ギギギギィィィ。
重苦しい音を上げて目の前に扉が現われる。
どうやらぼちぼち回収するみたいだ。
「雪、これは?」
「プレイヤー紛失物自動回収機能。まぁオレ達の間ではオートコレクション、そう呼ばれている」
ドラキラには武器を手放してしまった際に自動で回収するシステムがある。
それがこのプレイヤー紛失物自動回収機能。
武器を落としたところに宝物庫の門が現われ、プレイヤーが安全に武器を回収する。
まぁモンスターがいたら稀に宝物庫の中に入られたりして大損害になったりするから、トラップ階層でしか使えないのが難点だけど。
「さぁ、迷宮探索の続きと行こうか」
約二週間ぶりの更新です。
投稿遅れて済みませんでした。




