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黒の英雄譚 ~漆黒の女帝~  作者: 涙目 ホクロ
職人の街 ファージ
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第37話 初の迷宮探索(4)

スザクはドラキラで一番最初に仲間にしてそれ以来ずっと育ててきた。

だから断言できる。

スザクはあんなアビリティ使えなかった。

蒼く燃え上がる刀身が斬りつける度に、ダーティワームのエイチピーバーが削られていく。

分からない。スザク自身の能力とレベルの上昇。

そして何故こんなスピードであれだけのダメージを稼げるのか?


「雪、傷口を見て!!」


修羅姫に言われダーティワームの傷口を見る。

燃えている。

スザクによって斬られた箇所が蒼く燃えている。


すかさずダーティワームの状態を鑑定してみる。

何だこれは?

状態異常の名前は命の灯というらしい。

効果は相手の生命力つまりエイチピーを毎秒100ずつ削るという状態異常。

チートだ。ドラキラでもあんなゲームバランスを崩す状態異常はなかった。

ましてやスザクがあんな能力を手に入れていた覚えがない。


PIGYAAAAAAAAAAAA


ダーティワームがあまりの熱さに堪えられなくなったのか滝の中に突っ込むが、火が消えることがない。

火が滝の水を蒸発させ、水がダーティワームに届くことを許さない。

気がついたら辺り一帯が霧に飲み込まれていた。

一メートル先が見えないくらいの濃さだ。

暑い。ここに長くいたら脱水症状になるのは確実だろう。


「全員滝から離れろ!!」


バチョフの指示が響き渡る。

なるほど、滝の中心部は霧が最も濃い。霧による隊の乱れをなくすためか。


「うぅ……何これきつい」

「どうした?」


修羅姫が巫女服の袖を使い鼻を押さえうずくまる。


「雪、分からないの? この強烈な悪臭が」

「悪臭?」


修羅姫を鑑定してみる。

しかしステータスには何も変化はない。

なるほどオレの場合状態異常には耐性を持っている、それが多分適用されているのだろう。


「……もうだめかも」


修羅姫がそう言い残し気絶する。

耐性を持っていなければ気絶するレベルの悪臭。

これほどの悪臭を放つ原因はなんだ?

オレは悪臭により動けなくなった修羅姫をおぶり滝から離れる。

『ジュワワーー』

肉を焼いた時の特有のおいしい音が滝の方から聴こえる。

音だけなら食欲を刺激されるが、焼かれているモノを想像してみると……。

だが音がした際、微かだがオレも強烈な匂いを嗅ぐことができた。

硫黄特有の腐卵臭に近い匂いだ。

なるほど。恐らくだがこの悪臭はダーティワームの血液が原因だ。

音から察するに傷口を燃えている蒼い炎によって流れ出た血液が蒸発しているのだろう。

多分これによって悪臭が生み出されている。


「ぐわぁぁぁあああああああ」

「うわぁぁぁあああああああ」


あちこちから悲鳴が響き渡る。

鑑定スキルを使用していたため、滝から退避している隊員の状態が表示される。

まずいな。

大多数の隊員が火傷を負っている。

ひどい者は目に火傷を負い盲目にまで至っている。

それにこの悪臭が充満している霧の中。

状況は最悪だ。このままでは迷宮攻略に支障がでる。

全く何でこうなった?

そもそもこんな状況を作った原因はなんだ?

いったん状況を整理してみよう。


ダーティワームが現われた。

バチョフとオレが体制を立て直している間にアホが特攻。

アホの放った蒼炎というチートスキルによりフィールドに霧が発生。

さらにそのチートスキルが、この悪臭を発生させた。


結論、この原因を作ったのはスザクだ。


「はぁ、やっぱりあいつはアホだ」


《アトラスいけるか?》

《無論だ。魔力は練り終わっている、いつでもいけるぞ》


しかし責任を取るのも主の務め。

攻略が終わったらスザクにはお灸を添えよう。


首輪が青い光を放つ――

「ユニットチェンジver,水の王」


先程まで身に着けていた鎧が消え、代わりに水色の布製の服になる。

しかしこの姿だと隠れるところは隠れているが、露出が多いので少し恥ずかしい。


「お前その姿は!?」

「話は後だ」


アトラスの力を使って、周辺の温度を下げる。

すると霧が解け、視界が明白になる。

温度を下げた際にバチョフの隊の隊員の火傷状態が治ったり、あの悪臭も消えた。

アトラスの魔法は普通の水魔法とは違う聖水魔法の為、治癒効果があったのかもしれない。

修羅姫も気絶から目を覚ましたし。


「お、お、おいアレを見ろ」


隊員の一人大声で滝の方向を指さす。

そこには霧で見えなかったダーティワームの全貌が明らかになった。

ボロボロだ。体中のあちこちに蒼い炎が燃えている。

エイチピーバーの数値もゼロに等しい。


「貴様もこれで終わりだな。我の邪魔をしたからこうなったのだ」


スザクの一振りがダーティワームに落とされる。

PGYAAaaaaaaaaaa――

一際高い声が滝から響き、ダーティワームが絶命するのと同時に滝の中から階段が出現する。

どうやらこの階のゲートキーパーはダーティワームだったらしい。


「ふぅ。たわいもない」


ダーティワームを倒したアホが帰ってくる。

手土産にドロップしたと思われるアイテムを持って。

ん? ダーティワームがあんなに出血していたのにこいつには返り血一滴も着いてない。

凄過ぎて隊員はスザクのことダーティワームを見たとき以上に怯えている。

バチョフに関しては乾いた笑みを浮かべている。


「ふぅ。たわいもないじゃない、周りを考えろ馬鹿!! ここに居るのはお前一人じゃないんだぞ」


思い切りスザクの耳を引っ張る。

罰としてこれぐらいはしてもいいはずだ。


「すまなかった。だから主、耳を引っ張るのはやめてくれ、千切れてしまう」

「あぁその辺にしといてやりな。スザク殿のおかげでとりあえず道はできた。お前らもこのことを喜ぶんだな」


バチョフが前半はオレ達に後半は隊員に告げる。

少しだけ隊員のスザクを見る目が変わった気がした。

さすが隊長だ。


「しかし困ったな。こちらとしては一度撤退して準備を整えたいが……」


不幸中の幸いにも被害は小さい。しかし二階でレイドモンスター次もまたレイドモンスター位の魔物だとしたら連戦はきつい。

確かに状況的には撤退した方がいいのだろう。

特にバチョフの隊の隊員のほとんどは戦意を喪失している。

一回撤退し、作戦を練って挑んだ方が攻略するスピードは速いだろう。


「ティタさんを助けて」


――ふとクレナの顔を思い出した。

立場上誰にも助けを言えないで必死に堪えて、堪えて、更に堪えてやっと来たチャンスにすがるような顔を。

涙目で訴えてきたあの顔を。


「オレは撤退しない」


気付いたらそう言いきっていた。


「そうか。なら俺達は一度ファージの街に戻るが物資を確保したらまた戻るつもりだ。」

「あぁ安心しろ。もう迷宮を攻略しておいてやるよ」

「ふっ、それができればいいがな」


オレとバチョフはそう約束し、それぞれの階段を進んでいった。



「さてとバカ弟子、そろそろピヨ太を返してくれないか?」


三階へ向かう階段の途中スザクがそんなことを言う。

ピよ太。

なんだそれは?


「ピヨ太って師匠何?」


オレと同じことを思ったのか修羅姫がスザクに質問する。


「我の精霊だ」

「あぁはいはい」


修羅姫がスザクに精霊を渡す。

それにしてもピヨ太って。


「ブフォッ」

「主、今笑ったな。笑ったよな?」

「さぁ何のことかな?」


迷宮の攻略中というのに全然緊張感がない会話が、迷宮の中に響いていった。

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