第29話 ファージの街(7) 仮題
「せりゃああ!!」
修羅姫が力強く踏み込み、バッタ似の魔物に刀を振るう。
「まだまだだな修羅姫。このような敵一撃で仕留めて見せよ」
スザクが刀に焔を纏わせ修羅姫が相手にしていた魔物の数十倍の大きさをもつ蛾の魔物を一撃で仕留める。
「そんな無茶言ったって師匠、僕はまだレベル300だって」
「そんなことはない。お前に回している敵のレベルは400前後確かにお前よりレベルは高い、だがこの敵たちは技や武器を持っていない。よって我らの方が有利だ」
いやぁ、これは凄い。
この世界に来てスザクを暴れさせていなかった為か、現れる魔物を一瞬で灰にしている。
それに魔物のほとんどが昆虫型の魔物のため、火龍のスザクとは相性がいい。
「師匠、少し魔物をこっちに回すペース落としてくれないですか?」
「何を言う修羅姫。それじゃあ貴様の修業にはならんでないか。だいたいまだお前は自分の刀に焔を宿すこともできないのに」
スザクはそう言ってまた団子虫のような魔物を切りつける。
「それに先程から申しているだろう。そっちに回している敵は雑魚だと」
鬼だ。スザクさん先程から口がにやけてますよ。
絶対あなた敵を切ることを楽しんでますよね?
というか修羅姫のレベル上げのこと絶対忘れてるよねッ!?
「雪様、迷宮の入り口と思われる建造物を見つけたと報告します」
俺がスザクの道づれとなった修羅姫に憐みの念を送っていると迷宮の場所を詳しく調べてきたキツナが帰ってきた。
「迷宮はここから北におよそ三キロ先のところにあります。それと迷宮に近づいて行くにつれて瘴魔が強くなっています」
「御苦労さま。他に分かったことはある?」
「分かったというか、聴こえたことなのですが金属を叩く音が聴こえました」
金属を叩く音?
迷宮の中でジヤが何か行っているのか。
「わかった。もう休んでていいよ」
「でわお言葉に甘えて」
キツナはそう言って俺の隣に座りこくり、こくり舟をこぎ出した。
昨夜の件もあったため、キツナはどうやら疲れていたらしい。
少し、無理をさせてしまったかな?
「主よ、大方ここに居た敵は片付けた。他にやることはあるか?」
「他にやることか……」
正直そんな事を聞いてきたスザクよりもスザクの後ろで汗だくになって『何も言うな』と目で訴えてくる修羅姫の方が気になった。
修羅姫大丈夫だよ。
索敵スキルを使用した際に、ここいら周辺に出没していた魔物はスザクが灰燼に帰してしまったから。
だからそんなに睨まないでほしい。さすがに俺泣いちゃうよ、そんな蛇のような目で睨みつけられたら。
しかし俺達がこの郊外の森に来ている理由は、一つが迷宮までの安全な道のりの確保。これはスザクと修羅姫がたった今終わらせた。
そしてもう一つが迷宮付近の調査。これもキツナが帰ってきたことにより達成した。
目的は達成した。
早めの帰宅もいいかもしれないが、せっかくここまで来たんだもう少し調べておきたい。
何かないかなと考えていたら。ふとスザクの仕留めた虫の残骸たちが目にとどまった。
ほとんどの虫はスザクの武器で灰になるか黒こげになっていたが中にはまだ微かに息がある虫もいた。
俺はその虫に対して鑑定を行う。
name:シャドースパイダー
Levels:421
Abilities:影潜り
title:作られし物
一通り近くに居た魔物に共通してみられる点があった。
それは、称号のところに『作られし物』と表示されるところだ。
なお、死体を鑑定しようとしたら文字化けして情報を読むことは不可能だった。
「それで雪、僕と師匠は何をすればいい?」
「そうだな、って何だこれはっ?」
突然死骸達が眩い光を放ち始めた。
そして一際眩しく光ると死骸たちは死骸ではなく何か別の物質となっていた。
多分この現象がこの世界のドロップということだろう。
「あっこれは『ククル糸』だ」
「ククル糸?」
修羅姫がククル糸と呼んだ物を鑑定してみる。
この糸は魔力伝達率が非常に高く、魔力を流すことによって硬化する性質をもっているらしい。
またこの性質上魔導服の原材料としての需要が高いらしい。
他にも麻痺毒の原料となる『シビレモスラの鱗粉』や装飾や衣服に使える『ゲンソウチョウの羽』という高額な値段で取引されるアイテムも確認できた。
これはちょうどいい。
「修羅姫、スザク、アイテムの回収を頼む」
「全てか主よ」
スザクが少しめんどくさそうに言う。
しかし、せっかく目の前にある宝の山を見捨てるということはできない。
「ああ全部だ」
結局、修羅姫とスザクそれに俺は夕方までアイテムの採取を行った。
◇
さて俺達が大量のアイテムを持って帰ってくると、冒険者ギルドの方に行っていたツバサ達が先に帰って来ていた。
どうやら三人ほどお客さんを連れて来ているらしい。
「初めまして自分は千年帝国よりファージの街に派遣されたバチョフと申します」
「雪サクラです。冒険者やってます、でも何故このようなところに?」
バチョフはラグビー選手のような体つきをした人間だ。
レベルも500と中々高い。
ファージの街の結界が切れたことについて千年帝国から派遣されて昨日の夜ファージの街についたらしい。
残りの二人はバチョフの部下だ。
「さて単刀直入に言います。迷宮攻略をあきらめてください」
「それはなぜですか?」
クレナにあそこまで頼まれたんだ。今さらやめろと言われても止める気は毛頭ない。
「それは貴方がまだ子供だからです。そして男や獣人ならともかくこんな細い腕で何ができるというんです? 分かったら貴方が集めたという迷宮の情報を提供していただきたい」
内心切れている。
しかし、ここで事を構えてもいいことはない。
ようするにあれか、ゲームで言う自分の強さ証明しろって奴か。
「そうですか。でしたら私と勝負してみませんか? それで私が勝ったら私達も迷宮攻略に入れてください」
あえて私口調で言う。
俺を格下扱いしたことを後悔させてやる。
「しかし自分はッ……」
「――女に負けるのが怖いのですか?」
ここで挑発を入れる。ゲームではこれでバトルイベントが発生するはずだ。
「いいでしょう。自分が勝ったら大人しくしてくれるんですよね?」
「まぁ勝てたらの話ですけど」
正直バチョフに勝ちはない。だって俺と同じ人間だから。
俺は魔方陣を展開し演習場に繋げる。
「あ、そうそうバチョフさん.そちらから一名審判としてお連れさせて頂いてもよろしいですか?」
「了解した」
バチョフが合図すると付き添いの一人が出てきた。
「それでは行きましょう」
そう言って俺達は魔方陣にのり、演習場に向かった。
バチョフさんは言葉が足りないだけで悪い人でわはないんです。
雪のこと心配しているだけなんです。
ただ雪が短気なだけなんです……。
後次回バチョフ視点です。




