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黒の英雄譚 ~漆黒の女帝~  作者: 涙目 ホクロ
職人の街 ファージ
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第27話 ファージの街(5)仮題

それぞれの目的を果たした俺達は、約束の夕方に荷馬車に集まり情報の整理をしていた。


「……と以上のことがこのファージの街で確認されたことでした」


魔族落ちした職人の立てこもりか。

クレナが言うにはティターニアが封じられた魔封石の魔力は街の近くにできた迷宮から溢れ出る魔力が邪魔をして追跡が不可能になったと言っていた。

だが、龍王とは名の通り龍の中の王。その為俺が持っている魔力とは規模が全然違う。

しかも十分の一でこの大きさだ。事実アトラスはアスラの街でヤマタノオロチを撃退した際に、俺に力を与えただけで空気中に含まれる水蒸気を使い水を作りだした。

出現するだけでも環境に影響を及ぼす莫大な魔力を所持する生物の魔力が追跡不能になった?

仮に魔封石で魔力を抑えていたとしてもこんな莫大な魔力はどこからか漏れだしていてもおかしくない、そもそも魔封石だけで封じられる物なのだろうか。どうも何か引っかかる。


「そういえば人工迷宮の魔物とかはどうやって作るんだ?」

「ちょっと待っててください。あった」


ツバサはアスラの街で買ったカバンの中から一枚の設計図を取り出した。


「それは?」

「冒険者ギルドの帰りにジヤさんのお宅にお伺いした時に見つけた物です。これによると迷宮から一番近い龍脈の魔力を利用して、人工的に魔物を作り出す仕組みだと書かれています」


俺はキツナから人工迷宮の設計図を受け取る。

設計図は何度も下書きを繰り返した後や、走り書きでかかれてあるメモがたくさん載っている。

俺はその走り書きを目で読みながら、気になる箇所を見つける

龍脈が何か異常を発生した時の人工魔力補充法。

この設計図によれば自身の魔力を培養機に流し込み何十倍にした魔力を迷宮に送るという発想。

しかし、話を聞く限りジヤは魔力を持っていない。故にこの計画には必然的に魔力を持つ者の協力が必要不可欠といえる。それに培養機は倍にするといっても元の魔力を薄めて迷宮に注入するだけと書いてある。魔物を作る魔力の濃度がおよそ人の体では所持できる濃さではない。

つまり、ジヤは魔族と協力していたもしくは魔族がジヤを利用したことになる。

ん、待てよ。別に生物から魔力を注入する必要はあるのか?

そもそも職人祭のときに魔族は千年帝国から供給されていた魔力で結界を張っていたファージの街にどうやって侵入した?

修羅姫の話を聞く限りでは領主は職人祭が開催される以前に魔族と接触している。

……結界は職人祭がある頃には消えていた?

いや供給が切られたということか。


だめだ、頭がパンクする。

取りあえず今俺ができることはなんだ?

この世界の冒険者達が苦戦している迷宮攻略に決まっているじゃないか。

それに俺が予測するに多分迷宮にはティターニアが居る。

まぁ救出にはジヤっていう職人が邪魔するかもしれないけど。

そうとしたらやることは一つ。


「皆聞いてくれ。ツバサ、ビャッコ、ゲンブは明日もう一度冒険者ギルドに行って迷宮の攻略部隊に参加したメンバーから迷宮の魔物の種類とか迷宮に必要な物を買い揃えてきてくれ。ヒョウ以外の残りのメンバーは俺と明日、迷宮から溢れ出た魔物の討伐だ。皆、明日に備えて眠ってくれ以上」


焦りは失敗するリスクを高くする。

特に迷宮探索は何の情報もなしに行くと痛い目に遭う、過去の自分からの教訓だ。

それにこれはゲームじゃない、現実(リアル)なんだ。

死んだとしたらどうなるか分からない。

生き還りや蘇生方法なんかもあるか分からない。

この肉体も頑丈だが、スキルや魔法が使えなくなったらレベルはともかく種族の差という壁に圧し殺されてしまう。

考えるだけでゾッとする、気をつけなければ。


「待って雪。この討伐僕も参加していいの?」

自分も参加していいのかと尋ねてきたのは修羅姫だ。

無論、彼女は武者修行の旅として俺達についてきた、それに「実戦もぼちぼち良いだろう」とスザクから許可を得ている。

「いいからに決まっているだろう」

それに今から俺とキツナでレベルの高い魔物は狩り尽くしに行くつもりだし。

安全にしておいて損はない。

「分かったなら早く明日に備えて眠れ」

「ふふふ、楽しみだな~」

楽しげに笑う修羅姫にピクニックじゃないんだぞと釘を刺し、外に出る。



外に出ると太陽が完璧に沈み、月と星が夜空を照らしていた。

元の世界では中々見ることのできないくらいの美しい。

「キツナそれじゃ行こうか」

俺の誘いに先に外に出ていたキツナも「はい」と嬉しそうに普段は隠している狐尾をだし引きちぎれないばかりに振っている。

半獣とは滅多に生まれないため、物珍しさに注目されるのでトラブル防止のため普段は尻尾とケモ耳は隠してもらっている。もちろんビャッコもだ。

幸いにも今から行くところは街外れの森の中、しかも夜ということもあり人目も少ないから尻尾を出していても大丈夫だろう。

「何かうれしそうだね」

俺の質問に対しキツナは笑みを浮かべこう告げる。

「それは雪様と二人きりで過ごす時なんてめったにないからですよ」

その笑顔は背景の青白く優しく光る夜空の星たちに引けを取らないくらい美しかった。

多分元の状態の俺なら惚れてしまったかもしれない。

だが残念ながら今は少女の姿になってしまった。

その為、恋愛感情などは胸をときめかない。

だから美しいとしか思えない。

「さぁ雪様、行きましょう。ここで立っているだけでは数は減りませんよ」

キツナのその言葉で我に返った俺は、それから二時間みっちりレベルが高い魔物や即死攻撃を持つ魔物狩りつくし荷馬車に戻った。

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