第23話 ファージの街(1) 仮題
狐サクラです。少し間が空きましたが本日より活動を再開します。
「雪様、外壁が見えてきました。多分あれがファージの街だと思います」
御者台でマフユとマナツの手綱を握るキツナから報告が入り、俺は御者台に行く。
予定では今日の夕方あたりに着く予定だったのだが、カラジシの足が速く昼前に着いた。
「外壁の門が閉まってますね」
「とりあえず、門番とかがいるだろうしそのまま進行しよう」
「かしこまりました」
そうは言ったものの何かおかしい。
この予感が的中しないことを願いながら門に近づいて行った。
「開門を望みます」キツナの声が門の前で響く。だが門を開ける気配はない。それどころか人の声すら聞こえない。
「困りましたね。誰か居る気がしませんね」
さっきからの胸騒ぎはもしかしたらこのことだったのかもしれない。
俺は急いで索敵スキルで人がいないか確認する。
二か所だけ反応があった。
一か所はファージの街の冒険者ギルド、もう一か所は領主の館だ。
どうやらこの二つの場所で謎の流行病の治療もしくは隔離を行っているのだろう。
とりあえず街の状態は分かったが、この外門をどうやって開けるか。
外壁自体は二十メートルだ。登れない高さではない。
「ちょっと門を開けてくる」
俺はそう言って御者台を降りた。
外壁を登って思ったことは、改めてこの身体の身体能力の高さとスキルによる恩恵の凄さだ。
登っている最中に突風が吹き足を踏み外した際に慌てて掴んだ外壁の壁が壊れたことには正直驚いた。
まぁそんなことはどうでもいいとして、上から見るとファージの街は壊滅的だった。
建物は無造作に壊され、街の中には人一人もいない。
一言でいえば殺風景。だがどうにも建物壊れ方が不自然だ。
何かに溶かされたように不自然に曲がった煙突や、鋭い刃物で傷つけられた痕跡が見える。
ただ外門だけは何故か傷一つない。
現状の把握はできた、とりあえず門を作動させる物を探そうと思う。
幸いにも外壁の上には監視塔らしきものがあるためそこにあるだろう。
そう思い監視塔らしき場所に入ったのは良かった。しかもそれらしき機械も見つけた。
「だが、操作の仕方が分からないッ!?」
致命的なミスだよ。何が「ちょっと門を開けてくる」だよ。開けるいぜんの問題だよ。
「全くその通りだな」
その声は俺しかいないはずの監視塔に響いた。
「アトラスか」
「全くこのような魔法道具の操作の仕方も分からないとは笑わせる」
少し俺を小馬鹿した態度で操縦席に座る。
「動かせることができるのか?」
「当たり前だ。我は水の龍王だぞ」
答えになっていないが、アトラスのおかげで機械は動き出し門を開くことはできた。
「さて宿主よ。覚えているかファージに来たら我の旧知のなかの者がいると言ったことを」
「ああ。覚えているぞ」
「ならば街の中心にある祠に行くといい。あ奴にはもう宿主達のことは話したからな」
「承知した。お前はどうする?」
「いつまた我の力が必要になるか分かるまい。そのためしばし魔力を練る」
そう言い終わるとアトラスは藍色の粒子となって首輪に吸い込まれた。
とりあえず領主に会う必要があるな。蔵鬼さんから渡された救援物資もあるし。
俺はそんな事を思いつつ監視塔から出るのであった。
「これをみんなに付けてもらいたい」
俺は『対魔の耳飾り』を俺とキツナ、ヒョウ以外の者に渡す。
「主よ。主の分は必要ないのですか?」
俺の身を心配してかゲンブが聞いてくる。
「安心してほしい。俺とキツナ、それにヒョウには元から魔族や魔力に関して耐性がある」
俺の場合は称号による恩恵だが。
「主よ、もう一つないのか?その耳飾りは」
「どうしてだ?」
ヒョウの質問に俺は聞き返す。
「先日助けた子供の分だ。『対魔の耳飾り』を全員に配ったということはここから先は危険地帯と見た方がいいのだろう」
なるほど少女の分か。俺は荷馬車を鑑定する。
やっぱりあった。結界魔法『対魔』。
つまりこの荷馬車からでなければ少女は安心だ。
「安心しろヒョウ。この荷馬車には対魔の結界が張られている。それでも心配ならお前が近くで見てやるといい」
「そうか。留守中のことは任せろ」
そう言ってヒョウは少女の部屋に戻った。
「それじゃこれからの予定を話すよ」
俺を中心にヒョウ以外の仲間たちが俺を囲むようにしてソファーに腰掛ける。
「まず現状で分かることは、ファージの住民は冒険者ギルド、領主の館で匿われていることが分かる」
これは先ほどの索敵スキルで得た情報だ。
「そこでだ。ツバサ、スザク、それからビャッコは冒険者ギルドにこの救援物資を届けてもらいたい」
街の壊れ方を見る限り、これは自然の摂理で起きた現象とは言いにくい。
もし、迷宮の攻略に向かった生き残りがいるならば情報が知りたい。
ただ今回は俺以外にギルドカードを持っている人物はツバサしかいない。冒険者は、自分たちとと同じ志を持ったものを好む性質がある。だから今回の件はツバサはうってつけだ。
それにツバサ曰く、先程からこの街の東側より悪意ある魔力が流れてきているらしくどこに敵がいるか分からないためスザクとビャッコを護衛につけた。
「今呼ばれなかったゲンブ、キツナに修羅姫は領主の館に行ってもらう」
一応今回の件に対し修羅姫はアスラの街からの使者という位置に居る。その為、修羅姫は領主の館に来てもらう必要があった。
「そしてこれは共通の目的だ。今回の件は情報が極端に少ない、各自情報収集を行い夕方にここに集合してくれ」
俺は仲間たちにそのことを言い終えると先程アトラスの友人に会うためにアトラスに指示された英雄の祠に向かったのであった。




