第22話 ファージまでの道中(2)
北におよそ三キロ、体感的には十分で着いた。
帰りの時間もおよそ十分として、十分以内にターメリックを探し出さなければならない。
「おっかしいな―。ここのはずなんだけど」
俺は索敵スキルでターメリックを先ほどから探知している。
うむ、やはりここだ。俺がちょうど立っている真下にあるはずなのだが……。
「主よ。何をそんなに焦っているのだ?」
人の姿に戻ったヒョウが聞いてくる。
「いや、おかしいんだ。索敵スキルでは俺の真下にお目当てのものがあるはずなんだけど」
そう言いつつ俺は下を見るが、やはりそこには何もない。しかも、立っている位置が岩盤の為雑草などが生えているというわけでもない。
「意外とこの岩盤の中に潜んでいたりしてな」
ヒョウが目を細めて、岩盤を触る。
「どうゆうことだ?」
「この違和感を感じないか主よ」
「違和感?」
いまいち理解できていない俺にヒョウは「すぐに分かる」と言い岩盤を思い切り殴った。
その衝撃で岩盤に亀裂が走り、その亀裂から何かが飛び出した。
「こいつは?」
「人喰い植物の一種だろう、これが主の探していたものか?」
いや違いますと言いかけて人食い植物の形状を見る。
これはウコンなのか?。
ターメリックとは、ウコンの地下茎を乾燥させたもの。
つまり、お目当てのものだ。
「ヒョウ良くやった。もう下がっていていいぞ」
「何をするか分からんが、巻き込まれたくはないのでその言葉に甘えさてもらおう」
何をするかって、それはもちろん加工作業だ。
とりあえず必要な部分は地下茎だ。邪魔な上の部分を切るか。
切る場所を決めたため俺は刀を抜く。
するとウコン型の人喰い植物は体を支えている根の部分を振り上げ威嚇するような姿勢をとる。
だが遅い。
俺は威嚇のために振り上げたのであろう根を切り裂きながら、剣の間合いに入り「ズバッ」という音ともに人喰い植物の体を真っ二つにした。
PIIIIIIIEEEEEEEEEE
と甲高い断末魔を上げる人喰い植物を更に粉状にしようとしたところで手を止める。
人だ。真っ二つにした人喰い植物の中から人喰い植物の溶解液まみれの少女が出てきたのだ。
「ヒョウ!!」俺は急いでヒョウを呼ぶ。
「なんだ?」と返事をしながらヒョウは走ってこちらに来てくれた。
「人喰い植物を切ったら、中から子供が出てきたんだ」
興奮気味な俺とは裏腹にヒョウは落ち着いて子供の脈を確かめる。
「脈はある。運良く溶解液で消化される前に助け出すことができたようだ」
「そうか、ヒョウこの子のことしばらく頼めるか。少し作業が残っているんだ」
そう言うと地下茎だけの状態になった人喰い植物を目で捉えることができないくらいの速さで切り刻んでいく。そして粉状になった物をまたもや目に見えない速度で腰に付けていた巾着袋で回収する。
後は乾燥させるだけなのだが、乾燥には乾燥の魔法が描かれた巻物が必要になるため荷馬車に戻らなくてはならない。
「ヒョウ、また頼めるか。荷馬車まで」
「いいが、主よこの子供はどうする?」
ここで俺はある変化に気付いた。ヒョウが食べようとしない、むしろ心配している。
「お前はどうしたい?」俺はヒョウの変化に嬉しさを覚えつつ、質問する。
「せっかく助かった命だ、ここに置いて帰るというのはあまりにも非情だと思うのだが」
「つまり、荷馬車に連れて行って回復するのを待つってことでいいか?」
「ああ。異論はない」
元から俺はこんな所に子供を置いて帰るつもりはなかったが、ヒョウの変化を確かめたかったためヒョウの意見を聞いた。
うむ、やはり変化している。
「何をそんなにニヤついているのだ主よ?」
どうやら顔に出てしまっていたらしい。まぁ気にすることでもないか。
「さぁ帰るぞ。ヒョウ頼む」
俺がそう言うとヒョウはまたライオンの姿になる。
ライオンの姿になったヒョウに子供を乗せ、その子を落とさないように支えながら俺もヒョウに乗った。
その際に、一瞬だがその子のステータスが文字化けしているように見えたのは気のせいだろう。
そして俺達はみんなのいる荷馬車に帰った。
「雪、この物体は本当に食べれるのですか?」
この物体とはカレーのことだ。多分、ツバサにはこの物体があれにしか見えないのだろう。
思い出すな―、小学生の頃の俺を。
「ツバサ、でも匂いはいいですよ。この食欲をそそる香りは……」
そうは言いつつもキツナも食べるのに戸惑っている。
「うむ。実に美味なものだ」
「そうだね、師匠」
そう言って食べてくれるのはスザクと修羅姫だ。彼らは修行でつい先ほどまで、演習場で修行をしていた為人一倍お腹が空いていたんだろう。
「主よ、先ほど取られてきたターメリックという植物の苗をとりあえず十個ほど作れましたよ」
「そうか、これでいつでもカレーを作ることができる。ありがとうゲンブ」
あらかじめ粉状にしたターメリックを少しだけとっておき、ゲンブにターメリックを作れないかと頼んだのだ。もちろん地球のウコンと同じように。
「主様、先ほどの少女は指示された通り二階の一番奥の部屋で休んでもらっています。ヒョウ様も一緒ですのでご安心ください」
ヒョウたちにカレーを持って行ってくれたビャッコにお礼を言いつつ、ビャッコの分のカレーをつぐ。
「おいしですね」とビャッコは食べてくれた。その際のとてもかわいい笑顔は俺の脳内に焼きついたことはここだけの内緒である。




