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4話 貸し

前回のあらすじ

ノアとトレスが話してるところにセレスが入ってくる。何やら言いたいことがあるようで…

「少しいいか?」

 カーテンの隙間から、セレスティアが顔を覗かせながらこちらを見てきた。

「……セレスティア?」

「怪我の具合はどうだ」

 律儀に見舞いに来たのか、こいつ。

「見ての通り、ギリ平気だったよ」

「そうか。それは何よりだ」

 ノアがちらりと俺を見て、それから小さく笑った。

「私、飲み物買ってくるね。何がいい?」

「気を使わなくていい」

「気を使ってるんじゃないの、単純に喉が渇いただけ」

 そう言い残して、ノアは病室を出ていった。あいつなりの気遣いだということは、聞かなくても分かる。

 セレスティアは、ノアが座っていた椅子に腰を下ろした。

「わざわざ見舞いに来るとは思わなかった」

「当然だろう。私が本気を出しすぎた結果だ。責任は取る」

「じゃあ貸し1な」

「構わないが」


俺は自分の腕を見る。まだ少し肌が焦げている。

「なあ、まだ傷痛むか?」

セレスティアが心配そうな顔で聞いてくる。


「別に恨んでねえよ。俺が勝てないのは、最初から分かってたしな」

「そうか」

 セレスティアがまっすぐ俺を見る。

「貴様、あの状況でよく食らいついてきたな。正直、驚いた」

「あざす。てかそんなに見つめられると恥ずいんすけど」

「一つ聞きたい。なぜあそこまでする必要があった、私に食らいついてきた」

ガン無視かよ

「物理基礎受けたくなかったからな」

「本気で言っているのか」

「はい」

 セレスティアが呆れたように息を吐いた。

「まあおかげで3日分の授業を休めたわけで」

少しの間沈黙が流れる

「お前、本気で言ってるのか?」

「まあ半分」


「そういえば、私のことはセレスと呼べ」

「なんでだ?」

「セレスティアは長い。呼びにくいだろう」

「急だな」

「別に理由なんてない。この呼び方の方が呼びやすいだろうしな」


「じゃあ、セレスな」

「うむ」

 満足げに頷くセレスに、俺は少し首を傾げた。

「てかなんであんな全力の技使ったんだ?俺10組の最下位だぞ」

 セレスが、少し考えるように黙り込んだ。

「……自分でもよく分からないんだ」

「え?」

「貴様と対峙している時、なぜか、本気を出さなければ負ける、と思った。そんな根拠、どこにもないはずなのに」

 その言葉に、逆にこっちが戸惑う。

「格下相手に、大袈裟だろ」

「そうだな。おかしいのは分かっている。だが、あの時は本当にそう感じた」

 セレスが自嘲気味に笑う。

「まあ、結果的に貴様が無事だったんだから、良しとしよう」

「無事ではねえよ。全身やけどしたわ」

「細かいことを気にするな」

「細かくねえよ」


「あとエキシビションマッチはあくまで学園の行事だ。私怨があったわけじゃない。そこは、な?勘違いしないでくれ」

「知ってるよ、それくらい」

「それに――」

 セレスが、少しだけ言いよどんだ。

「あの粘り、悪くなかった」

 珍しく素直な褒め言葉に、逆にこっちが戸惑う。

「……なんか、調子狂うな」

「褒めているんだ、素直に受け取れ」

 そう言われても、なんと返せばいいか分からない。

「まあ、ありがたく受け取っとくわ」


 ちょうどそこに、飲み物を三本抱えたノアが戻ってきた。

「ただいまー、いっぱい買ってきたよー」

「ぬるくなる前に飲みなー」 

「俺コーラ飲みてえ」

「あんたコーラ好きねだもんね。セレスティアさんはサイダーでいい?」

「ああ。あとセレスティアじゃなくてセレスと呼べ。サイダーとやらは飲んだことがないので楽しみだ」


こいつ箱入り娘すぎだろ


「「「いただきます」」」

 三人で、まだ少し冷えている炭酸を飲む。

「美味いな」

3日ぶりの栄養だ。美味い

 病室に、しばらく穏やかな沈黙が続いた。

 悪くない時間だな、と思った。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

今回投稿期間が少し空いてしまい申し訳ないです。

セレスとの距離が少しずつ縮まっていく回でした。

次回は中間試験編です!

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