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3話 さいかい

前回のあらすじ

トレスが首席のセレスティアにやられ意識が飛ぶ。その時思い出したこととは...

「お母さん、能力、開花したよ」

「で、何だったの?」

「コピーだった」

「コピーって言っても色々あるじゃない」

「持ち点100ポイントのヤツ」

「そう」

 母は顔をしかめ、俺と目を合わせようとしなかった。

「そう、まず能力本買ってきなさい」

「うん、行ってくる」

────────────────────

 俺はすぐに自分の能力についての本を買い、家に帰ってくると、父の部屋が少し開いており、母と父が話していた。

「なんであいつによりにもよってポイント制のコピーなんだ……! 覚えることが一番と言っていいほど多い能力だぞ……」

「あの子、ノアちゃんと同じ高校行きたいって言ってたのに……」

「あの子はまだ若いのに二つ能力があるから、ヴァルデン学院は受かると思うけど、トレスは……せめてもう1年、2年早く開花してれば……14歳で開花って1番遅いじゃない!」

「俺、絶対受かるから!」

 聞き耳立ててたのに出ちゃったな……

「トレス、いつからそこに」

「俺、頑張るから」

 

「……そう。まあ、頑張りなさい」

 

────────────────────

「これが、能力についての基礎理論、こっちが応用編ね」

 図書館のカウンターで、山ほどの本を借りていく。


「トレスくん、また?」

 顔馴染みになった司書のお姉さんが、苦笑いしながら聞いてくる。


「入試までに間に合うか怪しいので」

「感心だけど、少しは外で遊びなさいよ」

「暇になったら遊びます」


誰かの能力を完全に理解しないと発動しない――そんな仕様、聞いたこともない。理解するためには、まず世の中にどんな能力があるのか、片っ端から知る必要があった。

────────────────────

「トレスまた図書館?」

 放課後、ノアが呆れた顔で聞いてくる。

「他にやることねえんだよ。あと2年しないうちに受験だし、休んでる暇もねえ」

「息抜きも大事だよ」

「暇になったらな」

 ノアは俺の隣の椅子に座ると、勝手に本を一冊手に取ってぱらぱらとめくり始めた。

「私にはさっぱり分かんない」

「俺もわからんページあるよ例えば魔眼の能力とか。効果と発動条件が複雑でわかんない」

「すごい分厚いのもあるけど一年でこんなに読んだの?」

「まだ半分もいってねえよ」

 ノアが小さくため息をついて、それでも本を閉じずに眺め続けていた。

────────────────────

「なんで俺の能力だけこんな面倒なんだよ」

 二年目、魔力操作の練習中に、何度目かの魔力切れで倒れかけた俺は、地面に座り込んだまま愚痴をこぼした。

「俺生まれつき魔力トゲトゲであんま繊細な操作できないのにな」

「あああ、チートみたいな能力欲しかったなー。せめてお前みたいに10歳とかで開花してれば」

俺が愚痴をこぼす


「努力するからこそ、できた時の価値があるんじゃない?」

「綺麗事過ぎ」

「綺麗事ないとやってけないでしょ」

ノアなりの励まし方だったのかな

────────────────────

「結果、出たよ」

 入試の結果発表の日。俺は、掲示板に貼り出された順位表を、下から順に目で追っていった。

 三十番。俺の名前。

「……最下位、かよ」

 二年間、あれだけやったのに。

「トレス」

 振り返ると、ノアが立っていた。

「同じクラスだったよ」

ノアがニコッと笑う。ノアの成績ならもっといいクラス入れたはずだろ


「……知ってる」


「でも、あんたの二年間、私は全部見てたから。だから」

ノアが、少し困ったように笑う。

「胸張っていいと思う」

「慰めなくていいよ」

「慰めじゃないもん」

 あの時は、素直に頷けなかった。

────────────────────

 ふと、光が見えた気がした。

「……っ、ん」

 瞼が、ゆっくりと開いていく。

「――トレス!」

 視界に飛び込んできたのは、今にも泣きそうな顔をしたノアだった。俺の膝に顔をうずめる。

「よかった……本当に、よかった」

「ノア……?」

「三日も目を覚まさなかったんだよ! もう、あのまま――」

 そこまで言って、ノアは言葉を飲み込んだ。何を想像したのか、なんとなく分かる。

「悪い、心配かけたな」

「本当だよ。生きてて、本当によかった」

 ノアの声が震えている。いつも気丈な奴が、こんなに分かりやすく取り乱すのは珍しい。

「大袈裟だな」

「大袈裟じゃないもん」

 言い返しながらも、ノアの目にはまだ涙が滲んでいた。

 「俺はもう大丈夫だから、な?涙拭けよ」


「その……ただいま」

 少し照れくさかったが、それだけ言った。

「うん。おかえり」

 ノアがやっと、いつもの柔らかい笑顔を見せてくれた。

 窓の外は、もう夕暮れ時だった。三日分の空腹が、今更になって主張し始めていた。

「よし、今から夜飯行くか。奢ってやるよ」

「やったー、トレスの奢りだ!」


「少しいいか?」

 カーテンの隙間からセレスティアが顔をちらりと覗かせていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

今回はトレスの過去について書きました。

次回はセレスティアとの続きです。

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