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群青のアウトル  作者: しゅん
14/15

後悔と誤ち、そして変動

この作品はフィクションです。

実在の人物や団体とは関係ありません。


 ブージェ領地についたアヴェルタとレイは、転がり込むように屋敷のテラスに着地した。テラスのドアを突き破り、部屋の中に入った。

 大きな音に驚いた使用人達や屋敷にいた騎士達が慌てて3人に駆け寄った。


「どうされたのですか!?」


アヴェルタ「はぁっ…っはぁっ…っはぁっ…っ」


 滝のように汗を流し、虫の息のアヴェルタはレイにルシエルを預けるとそのままその場に倒れ込んだ。

 能力を使って、2人をここまで運んできたアヴェルタは、かなり体力を消耗していた。誰から見ても話せる状況ではなさそうだった。


 レイはアヴェルタや驚く他の人間を無視して、気を失っているルシエルを抱き上げてベッドに寝かせた。


レイ「…っつ」


 奥歯がギリギリと音がなるほど噛み締める。顎に力が入って、握られた手には爪が食い込んで出血していた。そんなレイに向かって、状況を把握したい使用人が近づいてきた。その者の名前は、この屋敷の執事長モーラだった。


モーラ「レイ殿!一体どうされたのですか!?ルシエルぼっちゃまは、なぜこんな…ご説明を!!」


 唯一、状況の説明ができそうなレイに迫るが、レイはモーラを突き飛ばした。


レイ「黙れっ!!!今私に話しかけるなっ!!!!」


 突き飛ばされたモーラは、テーブルにぶつかってその上にあった食器が床に落ちて割れた。


 レイは気持ちの整理がつかなかった。


 バロナン・ブージェと呼ばれる男は、この帝国で最も強く最も恐れる人物だと思っていた。帝国内の騎士達はそんな彼に憧れている者ばかりである。レイもまた、騎士として彼のような人間になりたいと思っていた。そんな男が、謎の男相手に手も足も出せずに、その胸を貫かれた。


 そして、何よりも守るべき主人を背にしておきながら、レイは何もできなかった。立ち向かうことすらできなかった。

未知の相手にただ手が震え、立ち尽くすことしか出来なかった自分が許せなかった。


 アヴェルタが出てこなければ、自分自身も死んでいたかもしれない。そう思うと、劣等感と自身の弱さに悔しさが込み上げてきた。


レイ「っ…ルシエル様……。」


 気を失って眠っているルシエルに対して、レイは跪くと自分の心臓の位置に手を置いて頭を下げた。


レイ「っ……」


「レイ。何があったんだ。ゆっくり話せ。」


レイ「……ジンバスさん。」


 戸惑うレイの背に手を当てて、寄り添ったのはブージェ家の騎士団の副団長ジンバス・チェイカー。レイやアヴェルタの師匠に当たる人物である。


ジンバス「王都で何がった。バロナン様はどうした。」


 ジンバスと目を合わせた瞬間、少しだけ落ち着いたのかレイはゆっくり呼吸しながら口を開いた。


レイ「っ…黒ずくめの男が現れてっ…、奴はルシエル様を狙っていました。」


ジンバス「!」


レイ「……そこに、バロナン様が騎士を連れて助けにいらしたのですが………その男に、胸を貫かれて…」


 レイの言葉に、それを聞いていた全員が戦慄した。帝国一強いとされていた男が、何者かに胸を貫かれた。それが、どれほど恐ろしいことなのか、この帝国に住む者なら容易に理解出来た。


ジンバス「……白髪に緋の目の男か?」


レイ「!」


 なぜ、その男の見た目をジンバスが知っているのかわからなかったが、バロナンもあの男を知っているようだった。それなら、ジンバスも何か知っていてもおかしくない。


 レイはゆっくりとうなづいた。


ジンバス「そうか……。」


 ジンバスは何かを考えていた。その時、部屋に慌ただしく伝令兵が入ってきた。


伝令「失礼します!ジンバス副団長!!帝国騎士団より応援要請です!!」


ジンバス「詳細を」


伝令「皇城に第四皇子を次期皇帝とする群衆が革命を起こし、対立貴族と連合軍を編成して皇城を襲撃中とのこと!帝国騎士団副団長グリエゴ様より応援要請がありました!!また、バロナン様の所在不明により帝国側は劣勢状態にあります!」


ジンバス「…わかった。これよりアリスチナに向かう!」


レイ「ジンバスさん!団長はっ!」


ジンバス「所在不明ということは、遺体がないということ……遺体がないということは、もしかしたら生きているのかもしれない。」


レイ「!」


ジンバス「バロナン様の救助及び革命軍の鎮静に向かう!」


「「「「はいっ!!!」」」」


レイ「ジンバスさん!それなら、私もっ…!!」


 立ち上がったレイは、今抱えている劣等感を払拭するためジンバスについていこうとした。しかし、ジンバスは険しい顔でレイを見ると、ゆっくり首を横に振る。


ジンバス「レイ。お前の気持ちは嬉しいが、お前はルシエル様の護衛騎士だ。お前はここに残って、引き続きルシエル様の護衛にあたれ。」


レイ「っ…。」


ジンバス「アヴェルタ!貴様はいつまで寝ているつもりだ!!さっさと起きろ!!!!」


 ジンバスは床に倒れているアヴェルタの頭を叩いた。ビクッと反応してアヴェルタは起き上がった。


アヴェルタ「痛いっすよ…師匠…。」


ジンバス「甘ったれたことを言うな!話は聞いていただろ。護衛の騎士はお前らの他にも置いていく。お前らは、ルシエル様を守ることだけに集中しろ。いいな。」


レイ「はい!」


アヴェルタ「はいっす!」


 その頃、アリスチナ皇城では混乱が起きていた。


リベロフ「チッ…まさか、あの時逃げた妾の子供が、ロワの信託を得ていたとはっ……っ。」


 リベロフの子供は合計で5人。皇子が2人と皇女が3人。

皇女うち1人がシシリアである。それ以外の娘達は、他国との交易のために嫁に出していた。


 病にかかってから勇退を考えていたリベロフは、次の後継者を決めかねていた。その理由は、リベロフの血を継いだ皇子がロワにならなかったからである。

 だが、ここに来て捨てたはずの子供がロワになり、戦力を束ねて攻め込んできた。由々しき自体。


リベロフ「…こんなことならばっ、“子の選別”などしなかったと言うのにっ…!!!」


 カリスティ帝国は能力至上主義社会である。能力を持たないアスラは淘汰され、王都に入ることすらできない。それどころか、能力を待つイヒルでも、能力が弱ければ淘汰される。そんな常識を作ったのは、他でもないリベロフ自身である。


 “子の選別”というのは、これもまたリベロフが行っていた行為である。実は両親がイヒルであっても、遺伝子の組み合わせによっては、アスラが生まれる可能性がある。


 リベロフは過去に何人もの妻がいて、何人もの子宝に恵まれた。しかし、彼は有能な子供だけを自らの子供であると認めていた。能力に利用価値がない子供やアスラとして生まれてきた子供とその母親を彼は殺戮し処分していた。


 リベロフは200年以上生きていると言うのに、現在いる子供はたったの5人なのは、それが理由である。


 今回群衆を率いて攻め込んできた“第四皇子”と呼ばれる男は、25年前に気に入っていた使用人が産んだ子供だった。子供に能力がないことを知ると、妾は子供を抱えで逃げた。リベロフはその時、特に害はないと思い、妾を追いかけるようなことはしなかった。


リベロフ「あの子供がロワになることが最初からわかっていたならば、女を殺して子供を手元に置いておいたと言うのにっ…!!あの女っ、まさか隠していたなっ…!!」


 ギリギリと奥歯を噛み、テーブルの上にあったガラスを掴んで床に投げつけた。そんな彼のもとに、伝令が駆け込んできた。


「リベロフ様っ!!奴等が城内に侵入しました!!」


リベロフ「何をしておるんだ貴様ら!!!バロナンはどうした!!!」


「それがっ、バロナン様の行方がわからないんです!!」


リベロフ「なんだと!?あの男、私を捨て置いてどこにいったんだ!!!ロワを守るのがブージェの役割だろ!!」


「現在グリエゴ様が指揮を取り、革命軍と抗争中です!」


リベロフ「っ…くそっ!!」


「念の為、城内からリベロフ様はお逃げくださいっ!」


リベロフ「なんだと!?ここは私の城だっ!!!何故私が逃げなければならない!!!」


「しかしっ…!!第四皇子はロワに覚醒し、帝国騎士たちから()()()()()()()()()()()()!!!」


リベロフ「!!!」






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