染まる赤とギラめく緋色
この作品はフィクションです。
実在の人物や団体とは関係ありません。
ポタポタとバロナンの血が垂れる。内臓が貫かれて、バロナンは口から血を吐き出した。
ルシエル「父さん!!!」
アヴェルタ「団長っ!!!」
レイ「っ…!!」
ルシエルがバロナンの元に駆け寄ろうとしたが、レイがルシエルの体を押さえた。
男の腕はバロナンの胸を貫いて、バロナンの背中から男の手が見えていた。ただの素手で屈強な男の胸を貫いたその男。その異様な光景に、誰もが思考を停止した。
ルシエル「離せっ!!!!レイ!!!父さん!!!!父さん!!!」
バロナンが死ぬと直感したルシエルは、慌ててバロナンに駆け寄ろうとしたが、レイはルシエルを離さなかった。レイが初めてルシエルの命令に背いた瞬間だった。
?「あっけねぇな。バロナン。」
そう笑った男はバロナンの顔を見上げた。白目を剥き、深く洗い呼吸をするバロナンは、自分の胸に突き刺さった男の腕をギュッと掴んだ。そして、残りの力の限りで叫ぶ。
バロナン「アヴェルタッ!!レイッ!!!ルシエルを連れて逃げろ!!!」
レイ「!」
アヴェルタ「!」
バロナン「ルシエルをっ!!コイツに渡すなっ!!!」
その言葉を聞いて、アヴェルタはルシエルを肩に抱えた。そして、ただバロナンを背に向けて、2人は走り出した。
ルシエル「離せっ!!!ヴェル離せ!!!!!!!父さんっ!!!っ…父さん!!!!!」
バロナン「っ…カハッ!」
ぼたぼたと口から大量の血を吐き出すバロナン。吐き出す血が多すぎて、バロナンの顔色が冷めていく。
叫ぶルシエルの声を無視して、アヴェルタは走った。部屋を出ると、能力が戻っていた。アヴェルタはそれに気がつくと、レイも抱えて自ら吹かした風にのる。
そして、3人は城から逃げ出した。
ルシエル「ヴェル!!!戻れ!!!!戻れよ!!!!僕の命令が聞けないのか!!!???」
アヴェルタ「っ…」
ルシエル「ヴェルっ!!!!」
アヴェルタ「戻ってどうするつもりッスか!?あんな団長でも手足も出ない得体の知れない男に!!俺らができることなんてっ……!!!!」
ルシエル「っふざけるな!!!!!父さんが死んだらどうするんだよ!!!!戻れ!!!!僕が戻れっていったら戻れよ!!!」
まるで子供のように騒ぐルシエル。いつも冷静で落ち着いているルシエルが取り乱して騒ぎ立てるところをアヴェルタは初めて見た。
レイ「っ…ルシエル様っ、すいませんっ…!!」
レイはルシエルの後頭部を手刀で叩いた。そのままルシエルはガクンと意識を手放した。
レイ「アヴェルタっ!!このまま領地まで戻れるか!?」
アヴェルタ「わかったッス!!!」
そのままアヴェルタはレイとルシエルを抱えて、ブージェ家の領地まで飛んだ。
その頃、皇城のシシリアの部屋では、謎の男だけがそこに立っていた。
?「あーぁ。逃げられたか。」
部屋のテラスから青い空を見上げる男。白い髪の毛が優しい風に煽られて揺れていた。
そんな男の周りには、ブージェの騎士達が血濡れて倒れていた。その中には、バロナンの姿もあった。流れる血溜まりの中ただ立って空を見上げる男の手は、血に濡れていて、その細い指の先からポタポタと血が垂れていた。
?「もう出ておいで。ラバ。」
男がそういうと、部屋の束ねたカーテンの中から小さな男の子が出てきた。
青い肌にぎょろっと大きな目。尖った大きな耳に、頬まで裂かれたような口。人とはかけ離れた見た目の子供。彼の名前をラバという。
?「ありがとう。もう力を解いていいよ。」
男はラバと視線を合わせるようにしゃがむと、頭を優しく撫でてやった。すると、ラバはコクっと頷いた。この部屋に入った者の能力を無効化していたのは、このラバの仕業だった。
ラバ「ねっ、ぼす。」
?「ん?なに?」
ラバ「こりぇ、たべてもぃい?」
そう言ってラバは、床に転がった血濡れの騎士達の死体を指差した。
?「うん。いいよ。食べすぎないよーにね。」
男は優しい声でそう言った。ラバはコクッと頷くと、床に座って両手で死体の腕を掴むとカプっと食らいついた。
「あ"っ!!おい!ラバに変なもの食わせんなよ!!」
部屋の入り口の方から声がした。男はその声に反応して、その声の方に顔を向けた。
?「アド。もう来たんだ。」
部屋に入ってきた男をアドと呼んだ。彼の名前はアドレイン。褐色の肌にサラッとした銀色の髪。ギラリと鋭い黄色の瞳の男だった。
アドレイン「お前とラバは放っておくと何しでかすかわからないからな。監視だ。監視。」
ラバ「あど。ライは?」
アドレイン「あぁ、いるぜ。」
アドレインはラバに自分の背中を見せた。そんなアドレインの背中にはライによく似た髪の長い女の子がひっついていた。それはラバの双子の姉のライ。
ライ「しししっ」
ラバをみてニコニコ笑うライ。アドレインの背中に隠れているつもりだったようだ。
ラバ「ライもおいで、これ、たべていいって。」
ラバの言葉に、ライはアドレインの背中から飛び降りて、ラバの隣に座った。そして、ラバと同じように騎士の死体を食べ始めた。
アドレイン「あーぁ…たくっ、人肉食をやめさせるんじゃないのかよ。」
?「食べたいって言うんだから、いいじゃん。」
アドレイン「たくっ…。それで、ディアナの息子はどうしたんだ??」
?「んーーー。」
ラバ「にげた。」
アドレイン「そうか。逃げたか。………はぁっ!?逃げた!?」
?「ごめんねっ。」
アドレイン「おいおいおいおい。お前が面識あるから説得できるって言ったから任せたんだぜ?こんなことなら、最初から力ずくで奪えばよかったじゃねぇか!!」
?「俺のこと忘れてたんだよね。」
アドレイン「はぁ!?何だそれ!!」
呆れたアドレインは、頭を掻きながら近くのソファに座った。
アドレイン「どうすんだよ。イブ。」
アドレインは白髪のその男をイブと呼称した。バロナンを殺め、ルシエルを狙うその謎の男の名は、イブリス。
イブリス「ルシエルの居場所は、もういつでもわかるから問題ない。今日は少し驚かせちゃったみたいだ。」
アドレイン「…驚かせちゃったみたいだって…お前、その足元に寝転がってんのは、バロナンじゃねぇの??」
イブリス「うん。」
アドレイン「もしかして…ディアナの息子の目の前で、殺したとかねぇよな?」
イブリス「その時はまだ死んでなかったよ。」
アドレイン「はぁっ!?お前なぁ!!!!それ完全に敵対視されたんじゃねぇのか!?」
イブリス「………そうかな?」
アドレイン「そうだろ!!!!この馬鹿っ!!」
イブリスはごめんごめんと軽くアドレインに謝ると、ニコッと笑った。それにアドレインはため息をついた。
イブリス「それにしても外、騒がしいね。」
アドレイン「あぁ、そうだな。スラムにいた第四皇子を正式な時期後継者として祀り立てる派閥が革命を起こしたようだぜ。」
イブリス「そう。タイミングが被ったね。」
そう言って、騒がしい外をイブリスは見つめる。
イブリス「そろそろ、帰ろうか。」
アドレイン「そうだな。巻き込まれたら面倒だ。」
そう言って2人はライとラバを片方ずつ抱えると、その場から消えたようにいなくなった。
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