緋色の命
この作品はフィクションです。
実在の人物や団体とは関係ありません。
レイとアヴェルタは謎の男に剣を構える。得体の知れない男にレイは少し震えていた。だが、アヴェルタは黙って男を見据えていた。
アヴェルタ「この環境、お前の仕業っすか」
いつになく真剣な顔をしたアヴェルタは、男に対してそう聞いた。“この環境”というのは、イヒルの能力が使えないこの状況のことを指している。
?「俺の仕業って言えば……まぁ、そうだな。」
アヴェルタ「イヒルの能力は人には干渉できないはずっす。一体どうやって俺らの能力を無効化してるっすか?」
ルシエル「…。」
イヒルの能力は物や自然に干渉することができるが、人間に対しては干渉することができない。それが世の中の常識である。故に人の能力を強制的に無効化できるわけがない。
だが、アヴェルタの質問に対して、男は何を言っているんだ?と言いたげな顔で、キョトンとした顔をすると、その後に笑い出した。
?「ぁ〜そうだな。確かにそうだ。人には干渉できないのは、そりゃあ確かだな。だが、“能力”は人じゃないだろ。」
能力は人じゃない。つまり、能力には能力で干渉できるということである。どんな手を使っているか、彼の能力なのかはわからない。その分、手が出しづらい相手である。
?「イヒルの常識は俺にはわからんが……案外融通きくもんだと思うぜ。俺は。能力は勿論だが、死体にも干渉できる奴だっているくらいだ。」
イヒルの能力については、まだ未知数であり、何故能力が使えるのか、何故神はそれを与えたのか…等、日常的に使用されるイヒルの能力について詳しく知るものはいない。
だが、彼はその理を知っているかのように語った。
アヴェルタ「なんなんすか…アイツ…」
そう呟くアヴェルタに、ルシエルは近づいてそっと声をかけた。
ルシエル「ヴェル、能力が使えないのは相手も同じ事だ。難しく考える必要はない。」
そう言われて目の前の男に再び目を向ける。男は武器らしき物も持っていない。完全に丸腰状態である。
アヴェルタ「そう…っすね。レイ。ルシエル様をお願いッス。」
レイ「…あぁ。」
アヴェルタは男に対して剣を構える。だが、そんなアヴェルタに対して、男は余裕そうに笑う。
?「やるつもりか?やめとけよ。俺はお前に勝てる相手じゃない。」
アヴェルタ「やってみなきゃ分かんないっす!」
?「意固地な野郎だねぇ。たくっ…お前、ルシエルの護衛か?別に俺はルシエルに危害を加えるつもりはない。」
アヴェルタ「そんな嘘信じられると思ってるっすか!?」
?「嘘じゃない、嘘じゃない。俺はただ、迎えに来ただけだ。」
そう言って男はルシエルに視線を向けた。その白い手をルシエルの方に向ける。
?「ルシエル、俺と一緒に来い。お前の力が必要だ。」
ルシエル「ぇ?」
その時、部屋のドアを蹴破って、ブージェ家の騎士達がズラズラと入ってきた。ルシエルを取り囲むように整列した。その先頭にはバロナンが立っていた。
?「はぁ…厄介なジジィが来たなぁ」
バロナンの顔を見てめんどくさそうに頭を掻いた男。
バロナン「何しに来やがった。お前が求めるものはここにはない。」
どうやら2人は顔見知りのようだった。
?「適当なこと言うなよ。俺はずっと探してたんだぜ?」
バロナン「黙れっ!!こいつはお前が求めているものではない!!」
?「嘘つけよ。あの顔。“あの女”にそっくりだ。」
バロナンの肩に力が入っているのをルシエルは気がついていた。ギュッと剣を握るその手を見て、バロナンが緊張しているのが見てわかった。
国の英雄、ドラゴンスレイヤーの称号まで与えられた男が謎の男を前に緊張している。益々、目の前の男が誰なのか気になって仕方がない。
?「“ディアナ”って言ったか?」
ルシエル「!」
男がその名前を口にした時、バロナンは激昂した。ルシエルはその女の名前が自分の母親であることを知っている。
バロナン「貴様が彼女の名前を軽々しく呼ぶなっ!!!」
周りの騎士達も驚くほどの声量。普段寡黙なバロナンがそんなに声を荒げることを戦中とてみたことはなかった。
明らかに心を乱されているバロナンに、全員が少し戸惑っていた。
?「ハハハッっ…!!お前、まだあの女の亡霊に取り憑かれてんのか!?こりゃ、傑作だっ!!」
男は腹を抱えて笑い出す。
?「あの女のどこがいいんだ?指一本も触れさせてもらえなかったくせに。いつまであの女の影を追いかけてるつもりだ。」
バロナン「黙れっ!!!」
ルシエル「…?」
?「だが相手にされなくてよかったな?あの女の喘ぐ声は、聞くに耐えなかったからな。」
バロナン「貴様っっ…!!!!」
カッと目が開き、バロナンは男に向かって剣を振りかぶって向かっていった。だが、男に剣が当たる寸前で剣が止まった。
バロナン「っ…」
アヴェルタ「剣がっ…!止まった!!!!」
レイ「アイツは何もしていないのにっ!何故剣が止まったんだ!?」
まるでそこに壁があるかのように、男の前で剣は止められていた。
?「やめとけよ。お前に俺は殺せない。」
バロナン「っこのっ…!!小僧っ…!!」
男を睨みつけるバロナン。それをみて、ルシエルを囲っていた騎士達もバロナンに続いて男に攻撃を図る。だが、どの剣も彼には届かなかった。
?「いい加減にしろ。誰に向かって剣を向けている。」
男の赤い瞳がギラリと光っていた。
バロナン「っ…貴様は必ずっ、俺が殺すっ!!!」
?「だからっ…誰に向かって、言ってんだ?」
その瞬間、バロナンの背中から血が吹き出した。
バロナン「っ!」
ルシエル「父さんっ!!!!」
?「お前、いらねぇや。」
剣を振りかざしたまま固まったバロナンの胸を男の腕が貫いていた。
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