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群青のアウトル  作者: しゅん
11/15

謎の男

この作品はフィクションです。

実在の人物や団体とは関係ありません。


 シシリアの訃報は朝、ルシエルの耳にも入って来た。今日はパーティー最終日。つまり、シシリアとルシエルが正式に結婚する日だった。


リベロフ「何故だっ!何故こうなった!!バロナン!!」


バロナン「…現在、シシリア様の死亡の原因を捜査中でございます。」


リベロフ「警備は滞りなく行われていたのではないのか!?何故シシリアが死ぬことになるんだ!!貴様、何故ルシエルとシシらを結婚させねばらなぬのか、忘れたわけではないだろうな!?」


バロナン「忘れてなどおりませんっ…」


リベロフ「なら何故こうなったのだ!!!」


 興奮し激昂するリベロフは突然咳き込んだ。バロナンも頭の中では焦っていた。ここでシシリアに死なれては困る理由があったからだ。


 その頃、ルシエルはシシリアの自室にいた。今朝、侍女が彼女起こすために部屋をノックしたが、返事がなくドアを開けると彼女は寝台の上で亡くなっていた。


 彼女が寝ていた布団の上は生々しくもまだ赤い血で濡れていた。部屋の隅には、ルシエルがプレゼントしたあの青いドレスが飾られていた。


 彼女の遺体は既に別の場所に移動されていたが、ルシエルはそこで祈りを捧げた。


 そんなルシエルの背後に、レイが現れた。


レイ「ルシエル様」


ルシエル「急に声をかけるなよ。驚いたじゃないか。」


レイ「…申し訳ございません。」


ルシエル「…ねぇ、今、この付近に人はいる?」


レイ「いえ。他の者の鼓動はありません。」


ルシエル「そう。」


レイ「…。」


ルシエル「…人として失格かな。シシリアが死んで、喜んでいる自分がいる。」


レイ「…。」


ルシエル「……最低かな。こんな僕。」


レイ「ルシエル様はシシリア様との結婚を望んでおりませんでしたから。その感情は当たり前のことだと思います。」


ルシエル「でも、シシリアと結婚できなかった僕は、父さんにとってはなんの価値もない。」


 ルシエルの心境はかなり複雑だった。シシリアと結婚しなくて済んだ喜びと、バロナンにとってなんの価値もなくなってしまった脱落感。


レイ「っ…そんなことはありません!ルシエル様はあの女と結婚しなくたって…!!」


 少し焦ったように言葉を発するレイ。ルシエルはレイの肩に左手で触れた。


ルシエル「大丈夫だよ。……ありがとう、レイ。」


レイ「っ…出過ぎた真似を、してしまいました。」


ルシエル「僕のことを思ってしてくれたんだろ。かまわないよ。もう行こうか。」


 そう言って、部屋を出ようとした時だった。


「なぁ、ここで何かあったのかい?」


レイ「!!!」


 背後から声がして振り向くと、部屋のテラスに誰かが立っていた。レイが慌ててルシエルの前に剣を構えて守るようにたった。


 レイの耳は鼓動が聞こえるほど耳がいい。一定の範囲内いる生物の鼓動を聞くことができる。それなのに、テラスに立つその人間の鼓動にレイは気が付かなかった。


レイ「貴様っ!!何者だっ!!!」


 黒い服に身を包み、顔は深くフードをかぶっていてよく見えなかった。ただ、長く白い髪がフードの隙間から垂れ下がっていた。


?「まぁ落ち着けよ。ただ、ここで何かあったのか聞いただけだろ?」


 少しレイはパニックになっていた。自分の近くにいる生物の鼓動を感知できる環境に慣れすぎていた。故に、レイの耳をすり抜けて来たこの人物が少しだけ怖いと感じた。


?「主人を守る忠実な下部。いい部下を持っているんだね。ルシエル。」


ルシエル「!」


 何故か、ルシエルの名を知っていた。だが、ルシエルは目の前の人物に心当たりはなかった。


ルシエル「何故、僕の名前を?」


?「…ぁ〜。覚えてない、か。まいったな。」


 男は額に手を当てた。

 何か困った様子で、何かを考えていた。そして、何かを閃いた様子をみせた。


?「ぁ、これか。顔が見えないからだな?」


ルシエル「?」


 そう言って、その人物は黒いフードを取った。靡く白い長髪に雪よりも白い肌。尖った耳と唇の隙間から見えるまるで牙のような八重歯。真っ白なまつ毛と鮮血のように赤い瞳。

 その姿はまるで人とは思えない風貌であるが、神々しく美しい顔立ちが神秘的だった。


 だが、ルシエルにはその人物に見覚えはない。


ルシエル「…?」


?「え。マジ??わかんない?」


ルシエル「……わからない。何処かで会っただろうか?」


?「なっ。」


 その人物はその場に落ち込んだようにしゃがみ込んだ。


 美しい顔立ちとはいえ、背丈はかなりある。綺麗な声ではあるが低音で男であることは間違いない。こんな特徴的な見た目の人物。どこかで会ったことがあるのなら、忘れるわけはない。


 ルシエルの前にいるレイの手は震えていた。レイの耳でも感知できなかった上に、人とはかけ離れた異次元の見た目。だが、ルシエルは何故かその人物に恐怖心はなかった。


 男はフラフラと立ち上がると、はっと息を吐いた。


?「まぁいい。連れ去るまでだ。」


レイ「貴様っ!!」


?「お前、邪魔。」


 レイは反応できなかった。いつの間にか男が目の前まで来ていた。レイの視界が男の手ひらで覆われたその瞬間、一瞬強い風が吹いて、目の前に大きな背中が現れた。


レイ「っ…アヴェルタっ!!」


アヴェルタ「大丈夫っすか!?レイ!!」


 突如現れたアヴェルタは、謎の男を体当たりで突き飛ばした。だが、男は無傷でそこに立っていた。


レイ「何故お前がここにいる!!屋敷で待機なはずだろ!?ルシエル様のことは私がっ!!」


アヴェルタ「それは後から説明するッス!今はあいつからルシエル様を守る事が大事ッス。」


 そう言ってアヴェルタは背中から剣を取り出した。レイもそれを見てアヴェルタの隣りで剣を構える。


レイ「っ…チッ、私の耳は使えない。貴様の風でどうにかできるか?」


アヴェルタ「それが…、この部屋に入ってから、力を使おうとすると、強制的に無効化されるんすよね。」


レイ「!!」


 



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