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群青のアウトル  作者: しゅん
10/15

青色のドレス

この作品はフィクションです。

実在の人物や団体とは関係ありません。


 パーティー4日目。ルシエルはアレンから購入した青色のドレスをシシリアの元に持って行った。


シシリア「まぁっ!!!素敵なドレスね!!!」


 シシリアはドレスを両手で広げ、くるっと回って喜んでいた。嬉しそうにはしゃぎながら、ドレスを自分の体に当てて鏡の前に立った。


 サファイアのように美しい青色の布に、空のように美しい絹とふんだんにあしらわれたパールで飾られたドレス。アレンの解説では、これは他国で作られた特別なドレスだという。製作者は不明であるが、上等な材料で作られたこのドレスを、アレンは知人から商品として購入したのだという。


シシリア「一体どこからこんな素敵なドレスを見つけて来たのかしら。本当に素敵だわ!」


ルシエル「お似合いです」


 そう言って笑顔を見せたルシエルだったが、心の中では赤毛に黄緑色の瞳を持つシシリアにその青い色は似合わないと思った。


シシリア「そうでしょ!私もそう思うの!」


 嬉しそうにはしゃいでいるシシリア。ルシエルからもらったその青色のドレスを最終日に着るのだと語った。


シシリア「本当に楽しみだわ!ありがとう!ルシェ!さすが私の婚約者だわ、とってもセンスがいいのね。」


ルシエル「…ありがとうございます。よく似合うはずですから、僕も楽しみにしていますね。」


シシリア「ふふふ、あなたと夫婦になるのが本当に楽しみだわ。愛しているわ、ルシェ。」


 シシリアはルシエルの胸に身を寄せた。だが、ルシエルはそんなシシリアの体を抱きしめることはなかった。ただニコッと微笑んでシシリアの肩に手を添えて距離をとった。


シシリア「ルシェ?」


 少し低い声でシシリアはルシエルの愛称をよんでギリっと睨みつけるような視線を送った。その時、部屋のドアが叩かれた。使用人がシシリアを呼びに来た。


「シシリア様、失礼します。陛下がお呼びです。」


シシリア「……わかったわ。ルシェ、それじゃあ、また夜のパーティーでね。」


ルシエル「はい。」


 ニコッと笑うルシエルを睨みつけるように歩きながら、シシリアは青色のドレスを侍女に渡して部屋から出て行った。

 侍女がドレスをラックに掛けた。しかし、ルシエルはそんなドレスをじっと見つめていた。


「本当に綺麗なドレスですね。」


 シシリアの侍女がルシエルの視線に気がついて、そう声をかけた。


「どちらで購入されたのですか?」


ルシエル「最近知り合った商人から購入したんですよ。彼は珍しいものを取り扱っていて、このドレスはその一つです。」


「珍しいもの…では、このドレスも珍しい物なんですね。」


ルシエル「えぇ、まぁ、そう見たいですね。」


 ルシエルは侍女にそう言葉を返しながら、頭の中ではアレンの言葉を思い返していた。それは、一昨日のことである。


 カルファを通じて、アレンとやりとりをしていたルシエルは、初日のパーティーの翌日には、アレンと会っていた。王都内にあるブージェ家の別邸にアレンを招いた。


アレン「こんなにすぐに御用立てしていただけるなんて、光栄です!ルシエル公子様!」


ルシエル「僕もアレンがまだカリスティにいてくれてて助かったよ。また助けられてしまったな。」


アレン「いえいえ!商品を買っていただけるのであれば、僕はそれ以上の幸せはありませんから!」


 そう言って笑ったアレンは、持っていた箱をいくつか机の上に置いた。


アレン「ドレスの取り扱いはあまりないのですが、青色のドレスをご所望であれば、この3つがよろしいかと。」


 そう言ってアレンは箱を開けて、中に入っているドレスをいくつか見せた。どれも美しく、上等な物であるのはルシエルの目で見ても一目瞭然だった。

 だが、シシリア皇女はかなりの派手好きである。ドレスはどれも美しいがシシリアから見たら、かなり地味に思えるようなデザインだった。


ルシエル「他にはないのかな?」


アレン「一応、他の色のドレスも念の為、お持ちしましたが…公子様が言う青色ではございませんゆえ。」


ルシエル「そうか…。ドレスは素晴らしいんだけど、彼女は派手物好きでね。すこしシンプルすぎるんだ。」


アレン「なるほど。青色のドレスは珍しいですからね。青色をより良く見せるために、シンプルなデザインが多いんですよ。」


ルシエル「…やはり、そうか。」


 青色は自然界にはあまり存在しない色である。石や鉱石から抽出されることはあるが、染料とするには手間がかかり、あまり数を得られないのが難点である。ドレスにするにはかなりの量の染料が必要であり、青色のドレスを作っているブティックはほとんどない。


ルシエル「念の為、他のドレスを見てもいいかな。」


アレン「えぇ。構いませんよ。僕が取り扱っているドレスは全て持って来たので。」


 ルシエルはそう言って他のドレスの箱を開けた。赤や緑、黄色に白…たくさんのドレスが目の前に並んだ。派手なものもあればシンプルなものまで多種多様だった。


ルシエル「これは?」


 最後に開けた箱には青色のドレスが入っていた。デザインもシシリアが気に入りそうな豪華で派手なものだった。


アレン「あ、それは…青色なのですが…すこし、曰く付きでして。プレゼントにはあまり向かないかと思ったんです。」


ルシエル「いわくつき…?どんな?」


アレン「そのドレスは、亡国の王女の誕生を祝うために作られた物なのですが…、その王女がこのドレスを着る前に謎の死を遂げたんです。」


ルシエル「謎の死?」


アレン「彼女の誕生日を祝うパーティー当日の朝に、自室のベッドの上で無数のナイフに刺されて亡くなっていたそうです。」


ルシエル「誰かに殺されたのか?」


アレン「殺した犯人はわかっていません。ただ、このドレスはその王女が着るはずだったもので、曰く付きと言われています。」


ルシエル「そんなドレスをなぜアレンが持っているんだ?」


アレン「その王女が亡くなって、しばらくして国の財政が傾き、ドレスや宝石類を売りに出したようで。それで回り回って、僕の元にやって来たって感じですね。その国は今、シェラ帝国の一部になっていて、このドレスを僕が購入したのもシェラ帝国の行商人からでした。」


ルシエル「このドレスを作ってから、王女が死んで国が傾いたか……。この国もそうなるだろうか。」


アレン「え?」


ルシエル「…これにするよ。」


アレン「え!?本当にこれでいいんですか!?」


ルシエル「うん。きっと、他のじゃ彼女は満足しないだろうし。それに、このドレスは亡国の滅亡の渦中に巻き込まれただけだろ?その背景はバレなきゃ問題ない。」


アレン「あの、失礼ですが、ドレスは愛する女性に贈られるのではないのですか?」


ルシエル「アレンも知ってるんだ。あの小説のこと。」


アレン「いえ、僕は姉からカリスティの淑女の間では、それが流行っていると聞いたものですから。てっきり、そうなのかと思って…」


ルシエル「そうなんだ。あの小説、読んだことある?」


アレン「いえ。」


ルシエル「僕は婚約者に言われて読んだことがあるんだけど、あの小説のラスト、ヒロインがどうなったか知ってる?」


アレン「え?」


ルシエル「“戦争に負けたヒロインの国は滅亡し、ヒロインは愛する人とは結ばれずに生涯を終える”…そんな話なんだ。」


アレン「そうなんですか!?」


ルシエル「そう。物語自体は残酷な物なのに、綺麗な場面だけに憧れるなんで変な話だよね。」


 ルシエルは曰く付きのドレスを箱から取り出した。美しい生地で作られたその豪華な青いドレス。


ルシエル「だから、僕の婚約者もこのドレスの背景なんて、気にならないんじゃないかな。」


 そう言ったルシエルは少し楽しそうだった。


 愛する人に贈るものとして、曰く付きのものを渡すのはどうかと思った。だが、購入者がそれでいいのであれば、止める権利はアレンにはない。


アレン「それなら、そのドレスにしますか?」


ルシエル「うん。そうするよ。」


 そうしてルシエルはアレンから曰く付きの青いドレスを購入したのだった。


 その2日後の朝、シシリア皇女が死んだ。


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