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群青のアウトル  作者: しゅん
15/15

威厳と幻想の父親

この作品はフィクションです。

実在の人物や団体とは関係ありません。


 ジンバスが軍を引き連れてアリスチナに向かって、しばらく経った頃にルシエルは目を覚ました。


ルシエル「…ん」


 薄く開けた目に見慣れた天井が見えた。朦朧としている意識がはっきりしかけたとき、ハッと記憶が蘇る。


ルシエル「っ…父さんっ!!」


 ガバっと起き上がると、レイとアヴェルタが駆け寄ってきた。心配そうな顔をする2人を見て、ルシエルは歯を噛み締めた。そして、近くにいたアヴェルタの胸ぐらを掴んだ。


ルシエル「なんで逃げたんだっ!ヴェル!!!!よくも僕の命令を無視したなっっ!?」


アヴェルタ「っ…」


レイ「落ち着いてくださいっ!ルシエル様!」


ルシエル「お前もだ!!レイっ!!!僕に指図するな!僕の護衛のくせにっ……っ!!」


レイ「っっ」


 少し傷ついたようなレイの顔を見て、ルシエルはハッとしてアヴェルタから手を離した。ガクッと体の力が抜けて、ルシエルは俯いた。


ルシエル「………ごめん。」


 ルシエルにとって、アヴェルタとレイは兄弟のように育った。ルシエルにとって2人は大切な存在である。咄嗟に出た言葉は、そんな2人にかかるべき言葉ではなかった。


アヴェルタ「大丈夫ッスよ。混乱しただけっすよね。」


 アヴェルタはそう言って笑って、ルシエルの肩を優しく撫でた。いつも呑気なアヴェルタだが、彼が1番いざという時には冷静だった。


レイ「っ…」


 ルシエルはそんなアヴェルタの笑顔を見て落ち着いたのか、ゆっくり口を開いた。


ルシエル「父さんは……どうなったんだ。」


アヴェルタ「……まだ、わからないっス。俺らが城から逃げ出した後、革命軍が皇城に攻め込んできたみたいッス。それで、ここに救援要請が来たんッスけど、その時、団長は行方不明だって、伝令が。」


ルシエル「行方不明…?」


 シシリアの部屋は、リベロフの部屋と同じ階にある。バロナンが死んだのであれば、その部屋に遺体があるはず。それを、騎士達が見逃すわけがない。


ルシエル「…ということは、父さんの遺体が見つからなかった…と?」


アヴェルタ「はいっす。皇城の救援には、師匠が向かったっす。そこで、団長を探してくると。」


ルシエル「…そうか。」


 アヴェルタの報告を聞いて、ルシエルは少しだけ安心して胸を撫で下ろした。だが、記憶の片隅にあの男を思い出した。バロナンの胸を突き刺したあの白髪の男。


ルシエル「あの男は一体、誰なんだ?」


アヴェルタ「…ルシエル様をしっているようだったッスけど、ルシエル様はあの男を知ってるっすか?」


ルシエル「さぁ…あんな特徴的な奴なら、忘れるわけがないと思うんだけど。」


 顎に手を当ててルシエルは記憶を思い返そうとした。でも、あの男にまつわる記憶は全くなかった。だが、一つだけ彼はバロナンと気になることを話していた。


 ルシエルは近くにあった鏡に映る自分の顔を見た。そして、あの男が言った言葉を思い出す。


ルシエル「“あの女にそっくりだ”…。」


アヴェルタ「!」


ルシエル「あの女って、きっと僕の母親のことだ。あの男は、僕の母さんと何か関わりがあるのかもしれない。そこにヒントがあるのかも。」


アヴェルタ「調べるっすか?」


ルシエル「うん……だけど、僕の母親に関する情報は、この屋敷にはないはずだ。だけど、アリスチナの別宅になら何かあるのかもしれない。」


 そう言ってルシエルは、レイの方を見た。


ルシエル「レイ、頼めるか?」


 ルシエルに見つめられて、レイはドキッとする。レイはルシエルに頼まれごとをされた事が嬉しかった。


レイ「お任せください。ルシエル様。」


 レイはこれ以上ない悦びに包まれて、ルシエルに跪いた。


ルシエル「ありがとう、頼りにしてるよ。レイ。」


 ニコリと笑ったルシエル。彼に頼られる事だけが、レイにとっては生きがいだった。強敵を前にして、何もできなかった自分をルシエルに頼られる事で許されたと感じた。


ルシエル「…今日はもう遅いから、少し休もう。ヴェルもレイも疲れただろ。休んで。」


アヴェルタ「わかったっす。だけど、またあの男が来るかもしれないッス。護衛は部屋の外に置いていくッス。」


ルシエル「うん。わかった。」


 そうして、一度ルシエルはアヴェルタとレイを部屋から出した。部屋に1人になったルシエルは、力が抜けたように座り込んだ。


ルシエル「っ……父さんっ…。」


 行方不明と聞いて安心した。遺体が見つかってないことが、震え上がるほど嬉しかった。


 常に冷たい視線を向けてくる父親でも、ルシエルにとってはたった1人の父親である。彼に認められたいと思う気持ちも、そんな父親を親として認識しているからである。


 父親に対する捻くれた感情も、彼に認められたい心も全部、ルシエルは彼を親として愛しているからである。


 だから、涙が止まらなかった。

 

 そんなルシエルの啜り泣く声はレイには聞こえていた。アヴェルタと共にルシエルの部屋から出たあと、2人は並んで廊下を歩いていた。


レイ「……アヴェルタ、お前、あの時の団長と白髪の男の会話を聞いていたか?」


アヴェルタ「聞いてたっすけど…それがどうしたっすか?」


レイ「なら、気にならなかったか?」


アヴェルタ「?」


レイ「あの男と団長がディアナと言う女の話をしていたときだ。あの男、団長に対してこう言ったんだ。」


 アヴェルタはレイに言われて記憶を辿った。


確か、あの男はバロナンに対してこう言った。『あの女のどこがいいんだ?指一本も触れさせてもらえなかったくせに。』と。


アヴェルタ「それってどうゆう意味っすかね?」


レイ「…おそらく、ディアナと言う女性はルシエル様の母親で間違いはないと思う。顔がそっくりだと、あの男もリベロフ陛下も言っていた。」


アヴェルタ「それで?」


レイ「わからないのか?」


 ピンときていないアヴェルタに、レイは呆れたように深くため息をついた。


レイ「あの男が言うように、ディアナと言う女にバロナン様は指一本触れさせてもらえていないんだとすれば、体の関係はなかったと言うことだ。そうなれば、ルシエル様の父親はいったい誰なんだ??」


アヴェルタ「それってつまり…」


レイ「あの男が言うことが正しいのであれば、ルシエル様はバロナン様の子ではないと言うことだ。」


 レイの考察に、アヴェルタは言葉が出なかった。


レイ「調べてみる価値はある。その先に、あの男がルシエル様を狙う理由があるかもしれない。」


 そう言ったレイは翌朝、早朝からアリスチナの屋敷に向かったのだった。





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