第14話「フーカの追撃」‐③
夢を見ている。それだけはすぐに分かった。何度も何度もみていた夢と白昼夢だ。
「 」
誰かの声が聞こえるが、なにを言っているかは分からない。音として聞き取ることはできるようで、しきりに訴えかけるそれを聞き流す。答えることも、理解を示すこともできない。
ただ聞こえる音を聞いている。それだけの──夢だったはずだ。
「どうして」
いつからか、音は意味を持つようになった。
「なぜお前だけ」
──私だけ。私だけなんだというのだろうか。それ以上のことは聞こえなかった。それでも、
これが一体なんなのかだけは理解できる。うっすらと上げた瞼の先で、暗い天井が待っていた。ゆらり、視線を巡らせてドアの傍に佇む影に問う。
「……なに?」
影はなにも言わず、ただその場で揺らめいて……ふっと消えた。身を起こすと同時に、部屋の戸を叩く音が聞こえる。すぐに戸を開けてみれば、ろうそくを持ったタネが目を丸くした。
「あら、起きているのね」
「今目が覚めたのよ。夢見が悪くて」
「……そう。眷属は選ばないと」
そう言いつつ、タネは部屋にあった椅子に腰かける。ゆらり、とろうそくの灯が揺らめいた。
オウも、促されるままに寝台に腰かける。
「よく分かったわね?」
「見ればね。逆にあなたは見ても分からなかったのね」
「……そうね。私の力は記憶と一緒に封印されてるみたいだし」
「へえ、そういうことなの……それで、あの子を眷属にしちゃった理由は?」
「不可抗力だったのよ。ああしないと死んでた」
「そうなの……なら、あの子の問題を解決してあげれば、夢見もよくなるわね」
「まさか。どうかしらね」
軽く笑いながら、魔法使いは返す。
「あら、冷たい」
「私なんかじゃ、解決の一手にはなれないわ。これは自分で解決すること、でしょう? 夢に見るんだから、そういうもんよ。というか……私も知りたい」
「……そう。いつか分かるわよ、きっと」
答えを求めた魔法使いは、むっ、と言葉を飲み込んだ。
「その代わり、今はお茶でも淹れてあげようかしら。ほら、子供なんだから、もう少し寝ないと」
ぱちんと指を鳴らせば、ポットとカップが踊るように現れる。軽い手つきで茶を淹れた魔女タネは、微笑みながら茶を差し出した。ふわり、と花の香りが漂ってくる。
「別に、眠れないわけじゃないのだけど……貰うけど、貰うけどさ」
初めてこちらへ来た時とは違う、柔らかな香りの茶に、不思議と胸の奥がほぐれていく。口をつけた茶は、少し熱すぎた。火傷した舌を庇いつつ、熱いままのそれを飲んでいく。飲み切る頃にはもう、タネは部屋に居なかった。




