前へ目次 次へ 8/11 三秒前の贈り物 路地裏の「過去店」には、過ぎ去った時間そのものが並ぶ。妙に古ぼけた店主の老人が差し出したのは、琥珀に封じられた「恋人の最後の一言」だ。 「気を付けるようにね」 何に気を付けるというのだろうか。 「これを使えば、後悔の瞬間に三秒だけ戻れる……」 私は大金を払い、事故の直前へ跳んだ。ハンドルを切る三秒前。だが、そこで見たのは、私を庇って微笑む彼女の横顔だった。時間は無情に動き出す。 手元に残ったのは、あの日と同じ、空っぽの琥珀だけだった。