SIDE 菫 -カオス-
嫉妬。
嫉妬だね、この感情は。
同じ年嵩の、同じ制服を纏った女子高生。
伊緒クンと並ぶ姿が、初々しくて目を瞑ってしまった。
何回も震える携帯は、力を失ったようでベッドの上でただじっと固まっていた。
あたしが10歳の時、彼は5歳だった。
あたしが25歳になった時、彼はお酒が飲めるようになる。
その年の差は、どうやったて、どんな想いがあったって縮まらないんだよね。
・・・この年の差があったから、彼もあたしを求めたのかもしれない。
セックスをしたいとか?
面倒くさくなさそうだからとか?
あたしは両手で髪をわしゃわしゃと掻き毟る。
「あぁーっ!」
今凄く、自分が嫌な人間。凄く醜かった。
あたしはベッドの上の携帯を充電器に繋ぎ、電源を入れる。
受信メールは20通近く、着信は10回程の履歴を表示する。
確認するのが怖かったメールを開こうとして指を伸ばすと、ディスプレイに
伊緒クンの名前が浮かび上がる。
「もしもし。伊緒クン?」
『菫さんっ!あぁやっと出てくれたぁ。』
「ごめんね・・・ごめんね?」
『さっきの子は違うんだよ?・・・そのコクられて断ったら思い出にしたいから
一緒に帰ってって言われたんだ・・・だから、誤解しないで?』
それを聞いて尚更、あたしは伊緒クンを解き放たなきゃいけない気がした。
「誤解も何も・・・別にあたし達付き合ってる訳じゃないんだし、良いんだよ。
あたしの事は気にしないで。」
『え?』
「じゃごめん、あたしこれからレポートやんなくちゃいけないから。」
その後の伊緒クンは何かを言ったかもしれないけど、あたしは聞きたくなかった。
ベッドカバーの上に落ちる水滴は、涙なんだろうけど、
これが悔しい涙なのか、悲しい涙なのか、自分でも良く解らなかった。
これで良かったって思うしかないじゃない。
彼もあたしもお互いに”スキ”だとは言ってない。
惹かれ合ったのは違いないのだけれど、急速過ぎて前が見えなくなったんだと思う。
今までに出会った事のなかった人間に出逢い、心が逸り身体を重ねた事で
それを熱い想いだと錯覚したのかもしれない・・・彼は。
あたしは?
あたしはどうだろう。
屈託なく笑う彼の笑顔が可愛いと思った。
彼にせがまれれば何にでも応えたいと思った。
恋なのだろうか。母性なのではないだろうか。




