SIDE 菫 -感情-
「ねぇ新刊、何時入る?」
知り合って2カ月が過ぎると、伊緒クンは敬語を止めた。
「あたし買ったら先、読む?」
「菫さん読んでから貸して?」
閉館間際の図書館のカウンターを隔ててあたし達は話をしていた。
「明日はバイト?」
「ううん、明日は休み。」
「菫さんちに行っていい?」
「もうすぐ期末じゃないの?遊んでて良いの?」
「菫さんに英語教えてもらう。」
屈託なく笑う伊緒は17歳。
この笑顔の為に、何でもしてあげたくなる気持ちは”母性”だろうか。
そんなつもりじゃなかったんだけどな・・・。
今となっては織戸悠が口実だったみたいな状況だな。
あたしはパソコンの電源を落とした。
利用者が居ない事を確認し、電気を消していく。
待っていたかのように、図書館の入り口付近の壁に寄り掛かっていた伊緒クンがあたしの手を引いた。
「キスしていい?」
「だから何でわざと聞くの?」
「菫さんのそういう顔が見たいから。」
「じゃぁ、しないで。駄目よ。」
伊緒クンの顔を見ずに、掴まれた手を振りほどく。
伊緒クンが何も言わないので、盗み見るようにちょっとだけ伊緒クンに顔を向けた。
少し長めの前髪が伊緒クンの表情を隠してしまっている。
「伊緒クン?」
近寄るあたしを、伊緒クンは引き寄せて腕の中に収めた。
「菫さんとシタイ。良い?」
伊緒クンの囁くような声が左耳直ぐそこで届いた。
彼のおねだりを断った事はない。
寝息を立てている彼の前髪を左手で掬いながら、寝顔を見つめる。
5歳も年下の男の子とこんな関係になるつもりは無かった。
しかもたった3カ月で・・・。
普段、織戸悠の話をする様な友達は居ない。お互いがそうだった。
だから織戸悠の本ばかり読んでいる彼に興味があったのは確かだった。
それは男だからとか高校生だからとか、そういう次元の話じゃなかった。
話して、本当に細部まで本を読みこんでいる事に関心した。
話していくうちに少しずつ惹かれていった。
反面、5歳も年下の子に?と問いかける。
そんな時だった。
伊緒クンが図書館からの帰り道の遊歩道で、突然、こう言った。
「菫さんとキスしたいな。」
とてもそんな事を言うような男の子という感覚は無く、どちらかと言えば女の子には憶手そうだった。
返答に困っていると伊緒クンは、唇に触れるだけのキスをした。
視線がぶつかって彼は照れ笑いをしてて、それを見て”伊緒クンが好きだなぁ”そう思ったのだ。
それからはあっという間だった。
そこは17歳。女の身体に興味無い訳なく、初めてだと言う伊緒クンに、あたしは簡単にイカされてしまった。
逆上せるような恋だった。
今更ながらですが、大分前に投降した”陰”の短編というか詩的な3作品の解説を今、させて下さい(笑)
『罪深き思考』→天が地に対して叫んでます。
『DARK IN THE DARK』→星目線のお話。アノヒトとは月です。
『深愛』→僕の中にある”嫉妬”を描いています。
いかがだったでしょうか。




