第四話 非常識
俺と香菜は宿屋から出る。
もう夕方だが世界が輝いて見えるな!
「ま、待って、歩きづらい」
「おっと、すまんすまん」
何故か体のどこかが痛そうな香菜。
大丈夫か?ん?
疑ってたけど本当に初めてだったんだな。
歩きづらそうな香菜を連れ、穴のある建物へ。
中に入ると変わらず穴がそこにある。
良かった、少し緊張した。
ひょっとしたら穴が無くなってるんじゃないかと考えてしまった。
「ここも不用心よね、いつも鍵が開いてるけど」
「・・・俺らの町も最近じゃ鍵閉めるようになったよな」
俺らの地元も何年か前から外国人が増えて来た。
子供の頃は鍵は開けっ放しだったけど・・・
治安も悪くなってる気がする。
「リターナに言って鍵くらいはつけて貰いましょうよ」
「そうだな、この街のやつが俺らの町に来たら大変だ」
メモに書いておくか。
出来るだけ早い方が良いだろう。
一応平仮名でメモを残した。
これなら読めるはずだ。
香菜を連れ、穴を出る。
夕闇が迫ってるな。
香菜を家まで送ろう。
「ねえ、わたし明日は家にいるわ。浮気しないでよね」
「おおそうか。ゆっくり休んでくれ」
「う・わ・き、しないでよね」
「わ、解ってるよ」
ふう、女は大変だな。
家の近くで手を振り、香菜を見送る。
俺も家に帰ろう。
今日も疲れたな・・・
・・・むふふ、今日の疲れは心地よい。
いっぱい汗かいちゃったなぁ。
うへへへ、あ、家に着いた。
「おう萌花!元気か!」
「な、なに?ご機嫌ねぇ」
「いやはや、お前も勉強頑張れよ!はーっはっは」
「な、なんなの?」
寝た。
翌日、またリターナが来た。
「メモを見たぞ。早速鍵を付けておいた」
「これが鍵?」
「魔法で作った鍵だ。3枚作ったが複製不可能」
なんか見た事の無い素材の板状の鍵。
ドアはオートロックにしたらしく、この鍵をかざした時にだけ開く。
こっちの鍵よりよっぽどハイテクになっちゃったな。
「それより昨日あっちの世界に来たんだな。こちらで売れそうな物でも見かけなかったか?」
「ヤバイもんだらけだったよ。呪い人形とか」
「あれか。こっちで売れそうか?」
「あんなもん売ったら捕まると思う」
「そうか、残念だな・・・」
「なあ、昨日行って思ったよ。やはり文化の流入は慎重にやらなければ駄目だ」
「ううむ、そうか。迷惑をかけるのはこちらとしても本意ではない」
「もっとえ・・・」
萌花が来ちゃった。
また喫茶店に行くかな。
「ああ~、浮気だ~」
「ちげーよ。リターナが今日も来るのは香菜も知ってるよ」
「今日香菜さんは?」
「なんか用事あるってさ」
外に出る。
「どこ行こうかな」
「サキに教科書を返さなければ」
「もう漢字覚えたの?」
「ああ、勿論だとも」
すげえな。
一日で日本語書けるようになったのかよ。
商店街まで来た。
あ、ヤンキーが睨んでる。
無視しよ。
「ヒラノだったか?あいつは昨日喫茶店を出た後、私を尾行しようとした」
「なんだと?!」
「カズヤは私の世界の事を色々言うがお互い様だと思うぞ」
「恥ずかしいヤツ・・・どうやってまいたんだ?」
「魔法で」
「うーん、俺も尾行されないよう気を付けなきゃ。つか向こうから穴出た瞬間も危険なんだよな」
「そうだな。もっと木を成長させて穴の回りを険しくしておくよ」
「あ、ああ、頼む」
最悪だよ・・・
あいつ何してんだ?
気持ち悪すぎるだろ。
やって良い事と悪い事の区別もつかない。
なんなんだよ・・・
喫茶店に着いた。
「水ください」
「ええ?・・・100万円だよ?」
「マジか・・・」
「カズヤも大概非常識だな」
ガーン、平野レベルかよ。
終わったな俺。
「サキ、教科書をありがとう」
「もう覚えたの?すごいねぇ」
「なあ葉山、お金が無いんだ」
「じゃあコップだけ出してあげるよ」
俺の前に空のコップが置かれる。
リターナの前にはコーヒーが置かれた。
「おい、今日はリターナの分も払えないぞ」
「いいよ。絵里ちゃんの薬のお礼だよ」
「俺には日頃の感謝は無いの?」
「無いよ?」
「そうか、この店が潰れますように」
「縁起でもない事言わないで」
「ふうむ、カズヤは本当にお金が無いんだな」
「養われてる身だぞ?こんなもんだよ」
「この世界の物を手に入れようにもカズヤがこの調子ではな」
「早く代わりの人間探せよ」
「サキはお金を持ってるか?」
「600円くらいなら」
「・・・60クランか、うううむ」
リターナが難しい顔しちゃった。
ごめんね、役立たずで。
「そうだ、平野の野郎が昨日リターナの跡をつけたんだってよ」
「なっ!・・・さ・・・最低だねえ」
「呆れるだろ?葉山も気を付けろよ」
「はぁ・・・そこまでバカだったとは」
平野はいつ気づくんだろうか。
いつか自分がバカだったと後悔する時が来るんだろうか。
そりゃあ俺だって思い出して頭掻きむしりたくなる失敗の2つや3つはある。
だがそれは平野の比では無い。
「この世界はああいう奴を罰さないのか?」
「・・・未成年は過剰なほど守られてるんだ」
「ふむ、やはり私から見たらこの世界の方が変だ」
「・・・その通りかもしれない」
情けない・・・
あいつの存在が恥ずかしい。
リターナの世界の奴らがこっちに来たらどうしようとか心配してた自分がバカみたいだ。
「そうだ、穴のある建物に鍵を作ったんだ。サキは鍵いるか?」
「うーん、また行く事あるかなぁ?氷川は貰ったの?」
「ああ、貰った」
「また行くの?」
「うーん、平野の話聞くと俺もやらかしそうで不安になって来たよ」
「常識が違う世界だもんね」
昨日の行動は大丈夫だっただろうか。
健全だったとは言えない。
異世界ではとんでもなく非常識な行動だったりして。
ああ、すでにやらかしてんのかな、俺。
葉山が奥に行った。
この隙に聞いてみようかな・・・
「な、なあリターナ」
「ん?」
「昨日俺・・・そっちの世界の宿屋で・・・・・・・
「・・・な!なんだと!そ、そんな事したのか!!」
ああヤバイ。
やっぱまずかったのか。
「う、羨ましい」
「え?」
「私はこの歳でまだなんだ」
「は?」
「カズヤとカナは15歳なんだろ?良いなあ、カッコいいなあ」
「・・・・・・」
よくよく聞いてみると昨日の行動は恋人同士なら普通の事らしい。
向こうの法も犯してないらしい。
良かった。
「今の皆には内緒な」
「くぅ・・・悶々としてしまう」
「た、頼んだぞ?」
「はぁ、イチャイチャしてみたい」
リターナはこんな凄い体してるのにまだなのか。
始めて会った時エロい恰好してたのに。
昨日、バスタオルがはだけた時も、動揺して無かったから大人の余裕なんだと思ってた。
「なんの話してたの?」
「何でもない」
チリンチリン
「あ、絵里ちゃんいらっしゃい!」
鏡原さんが来た。
あれ?いつもより露出多いような。
「絵里ちゃんがショーパンって珍しいね」
「う、うん。折角痩せたから思い切ってみようかと思って」
上半身もキャミソールに上着を羽織っている。
イメージがかなり変わったな・・・
「あ、鏡原さん」
「な、なあに?氷川君」
俺は平野と鍵の話をした。
「ふうん。平野君がそんなことを・・・」
「鏡原さんも気を付けてよ」
「鍵・・・かぁ」
「エリ、鍵は欲しいか?」
「・・・・・・・・・欲しい」
嫌な予感がした。
昨日いきなり脂肪燃焼薬を飲んでしまった鏡原さん。
鍵を渡すのはマズい気がした。
「え、絵里ちゃん。向こうに行くの?心配だよ~」
「そ、そうだぞ?常識が違う世界なんだから気を付けないと」
「でも・・・」
「なんか目当てでもあるの?」
「・・・・・・」
黙って俯いてしまう鏡原さん。
なんだ?言えない事をしようと思っているのか?
「行くにしたってもっと向こうの常識をリターナに聞いてからにしないと危険だ」
「なんだ?私はこの後お店を回りたいのだが」
「お金無いのに回ってどうすんだよ」
「まだ見ぬこの世界の品々を把握しておきたいじゃないか」
「うううむ」
「じゃあ私が案内しよっか?」
「鏡原さんが?」
「うん、案内しながら色々話を聞くよ?」
「・・・まあそういう事なら」
大丈夫かな・・・
昨日行ってしまった俺には鏡原さんが異世界に行く事を止めることが出来なかった。
「リターナさんの服も沙希ちゃんのお姉さんの物でしょう?いつまでも借りておく訳にも行かないし、昨日の薬のお礼に私がプレゼントします」
「それは助かるな」
ううむ、そういう事なら。
出掛ける2人を見送った。
「氷川、大丈夫かな?」
「俺も少し心配だ」
「絵里ちゃんは良い子だけど、憧れが強いと言うかなんというか」
「ん?はっきり言ってくれ」
「本をよく読んでるの知ってるでしょ?その世界への憧れが強いと言うか」
「ああ、入りこんじゃうのか」
「不思議の国のアリスとかすごく好きなんだよね」
どんな話だっけ?
作者がちょっとアレな人なんだよな。
「なあ、鏡原さんが向こうに行きたいって言ったら葉山もついて行ってよ」
「うん、心配だからついて行くけど。でも一人で行こうとしたらどうにも出来ないよ?」
「そっか、リターナも鍵渡しそうだったしな」
「不安だよ~」
・・・失敗したかな。
俺達は鍵要らなかったんじゃないか?
うーむ、厄介事にならなければいいが。
「・・・じゃあ帰るかな」
「ちょっと、昨日香菜ちゃんとあった事を聞かせなさいよ」
「な!聞いてたのかよ!」
「誰にも言わないからさぁ」
「頼むぞ?香菜にバレたら殺される」
「で、ど、どんな感じだったの?」
「えーっと・・・
「・・・そっかあ」
「葉山は好きな奴とか居ないのか?あ、まず彼氏いるのか?」
「居たら家の手伝いなんてしてないよ」
「そうだな。せっかくの夏休みだしな」
「人がどんどん先に行く話を聞いちゃうと焦っちゃう」
「リターナはまだらしいから気休めにしろよ」
「あんなに綺麗なのにね。向こうは遅いのかな?」
「どうなんだろうな」
早く経験したいとは思うが、同時に愚かな行為でもある。
何も責任が取れない未成年が、大人の真似をするのは滑稽だろうか。
「昨日、偉そうに『責任のとれない未成年だから、親に迷惑かけるような事したくない』って言ってたくせに」
「たしかに矛盾してるな。そう考えると俺は平野と同レベルだな」
「そうやって冷静に考える事が出来るなら、同レベルでは無いと思うよ」
「そうか、葉山は早まるなよ。葉山だけに」
「うわあ、サムイよぉ」
真夏なのに何を言ってるんだこいつは。
さて、そろそろ帰るか。
商店街でヤンキーに因縁つけられる。
「おい氷川!てめー香菜と別れろよ!」
「お前は自力で香菜を落とせないからって裏工作か?女みたいな奴だな」
「な、なんだとてめえ!」
「そうだろうが、自分が付き合ってる訳でも無いのに他者が自分の好きな異性にちょっかい出すのを邪魔をする。根回しをする腐った女みたいだ」
陰湿な女の世界。
男がそれをやると更に醜い。
「て、てめえ、絶対に許さねえぞ」
「それはこっちのセリフだ。外国人の跡をつけるのもやめろ。これだけで十分犯罪なんだからな」
「ぐっ!」
悔しがる平野を無視して家に向かう。
若気の至りってのはいつどこで無くなるのだろうか。
痛い目に会わないと治らないのでは無いだろうか。
いっそ警察にでも捕まれば良いのかもな。
だがリターナは異世界人。被害届も出せ無い存在。
魔法で身を守れるみたいだから問題ないかも知れないが。
いや、犯罪は犯罪だ。
その行為を許してはならないだろう。
「ただいまー」
「ああ、お兄ちゃん。おかえり。良いねえ遊んでばっかで」
「そうでも無いぞ。商店街行くたびにヤンキーに因縁つけられるし」
「ヤンキーって平野君?あの人いっつも居るよね」
「昨日リターナの跡をつけたらしい。萌花も気を付けろよ。」
「うわあ、そんな事する人だったの?小学校の頃はラジオ体操毎日一番に来る元気な人だったのに」
「ああ、更に香菜の事が好きだからって俺に別れろと詰め寄って来るしょうもない男だ。萌花があんなのを好きになったら縁切るからな」
「あはは、でも居るよね、不良を好きになる人」
「ちょっと悪い奴がカッコ良く見えるんだろ?」
「どうなんだろね?クラスメートにも不良の高校生と付き合ってる子居るけど、男を盾にして態度デカいんだよ」
「あー、男のステータスを利用してるのか」
しょうもない。
自分に何も無いから男にすがるのだろう。
「お前そいつらにイジめられてないだろうな?」
「ううん、お兄ちゃんが香菜さんと付き合ってから萌花の株も上がりまして」
「てめえ、俺のステータスを利用してんのか?」
「香菜さんは下級生からも憧れの存在だったからね。お兄ちゃんと言うより香菜さんの威光だよ」
中学時代、香菜が下級生の女子からも羨望の眼差しで見られていたのは俺も知ってる。
足が長くてスラっとしてカッコ良かったもんな。
俺はその当時また違う子を好きだったんだけど。
元気かなぁ、西野さん。畠山さん。笹村さん。あと下級生の宮本さん。
「お兄ちゃんは王道を行かなかったよね。ヒネくれてると言うか」
「どういう意味だよ。どの子も可愛かったぞ?」
「告白はしたんだっけ?」
「笹村さんだけしたな。お友達以上の進展は無かったが」
ああ、思い出すと切なくなって来た。
と言っても狭い街だから時々見かけるんだけどね。
西野さんは彼氏と歩いてるの見た事あるし。
もう好きでも無くなってたけど、少し心がザワついた。
「宮本さんも彼氏出来たみたいよ」
「なんだと!受験生のクセにけしからん!」
「2人で勉強して同じ高校行くんだって」
ふーん、どっちか片方だけ受かればいいのに。
ちなみに宮本さんは萌花と同級生だ。
1年の時は同じクラスだったので時々話す事があるらしい。
「まあ今更どうでも良いか」
「そうだよ。お兄ちゃんはあの香菜さんと付き合ってるんだよ?」
うーん、実は鏡原さんと付き合いたいって言ったらおかしいと思われそうな雰囲気だ。
香菜って王道なのかなぁ。結構ビッチみたいな恰好してるけど。
清楚系が好きという人の方が多いんじゃないだろうか?
「おっと、話こんじゃった。勉強しなきゃ」
「頑張れよー」
・・・俺も勉強すっかな。
ピンポーン
「はーい」
鏡原さんとリターナが来た。
「どうしたの?お、リターナ服買って貰ったんだな」
「下着まで買って貰ったぞ。こっちの下着は着心地がいいな」
「下着も?鏡原さんお金持ちだなー」
「う、ううん、これぐらいで痩せれるなら安いもんだよ」
それでどうしたの?
取りあえず中に入れてお茶でも出すか。
「お茶か・・・」
「嫌か?じゃあコーラな」
「リターナさん炭酸飲んだ事あるの?」
「昨日カズヤにぶっかけられた」
「え?」
「じゃあ紅茶でいいか?」
「ああ、構わないぞ」
余計な事言うんじゃないよ。
お湯沸かすのか。めんどくさいなー。
「お?クッキングヒーターってヤツだな」
「今日も妹2階に居るんだからな。あまり騒ぐなよ」
「どうしてこれでお湯が沸くんだ・・・」
「熱伝導だっけ?」
「表面はガラスじゃないか」
「謎だな」
詳しい事は俺も知らない。
作った人にでも聞いてくれ。
「カズヤ、他にも欲しい物がたくさん出来た」
「それを言いに来たのか?」
「ああ、まずは腕時計」
「時計?スマホについてるぞ?」
「いやいやカズヤ、こう腕をくいって回して見るのがカッコイイんだよ」
「またそれかよ。恰好ばっかりじゃん」
「でも充電が要らないと聞いた。私の世界では実用性が高い」
「確かにそうかも」
時計ならピンキリだ。
安いのなら1000円で買えるし、高いのだと車くらい高い。
「次に・・・なんだっけ、エリ、あのくるくる回すヤツ」
「ボールペン?」
「そう!その中でも万年筆がお気に入りだ」
「くるくる回すのが目的じゃ無いんだけどな」
どうせクルクルにときめいたんだろ?
リターナの世界では羽ペンが主流らしい。
確かに万年筆は便利かもしれない。
これも値段はピンキリ。
「次は眼鏡、これはどうしても欲しい」
「こう、クイってあげる仕草がカッコイイからか?」
「ど、どうして解ったんだ」
全部スタイルだ。
「あ、あとノートパソコン・・・」
「カタカタ、ッターーンがカッコイイからか?」
「う、うん」
ふう、まあいいや。
「スマホに比べればどれもハードル高くないな」
「そ、そうか?」
「安いので良いなら時計、万年筆、眼鏡はすぐにでも・・・」
「安いのは嫌だ」
「さいですか」
「リターナさん、レロックスのカタログ見てたよ」
「レロックス?!」
ネットで調べてみる。
・・・安くても20万くらいするんだな。
「カズヤ、ノートパソコン持ってるのか?かっこいいなぁ」
「親のだよ。中古でも20万するぞ?レロックス」
「中古なんて嫌だ」
「・・・・・・」
「あ、これがいいな。綺麗だ」
「84万て」
高校生がこんなもん手に入れられるわけない。
「万年筆と眼鏡から考えよう」
それぞれ検索。
「ノートパソコンは何でも調べられるんだな」
「インターネットは契約だからリターナにはハードル高いかも」
「そうなのか・・・」
「スマホでも調べられるんだけどな」
「しかし契約は難しいと」
「うーん、そうなんだよ」
「あ、この万年筆いいな」
「12000円か、これくらいなら・・・」
「買えるか?」
「いや、ムリムリ」
眼鏡も伊達で良いならそこまで高くない。
しかしそれでも高校生がおいそれと買えるもんじゃない。
「やはり、私の世界の物を売ってこっちの金を作るしか・・・」
「それが出来れば苦労しないんだけどね」
脂肪燃焼薬とか売れればレロックスもあっと言う間に買えるだろうが・・・
「待てよ?ネットでオークションなら個人でも売れるのか?」
「少なくとも銀行口座が必要だよ」
「あるにはあるけど・・・」
残高39円の口座を持ってるけど。
「それでも脂肪燃焼薬なんて売ってたら捕まりそうだな」
「うん、危険だと思うよ」
他に何があるって言ってたっけ?
水の上を歩ける靴とか、透明虫メガネとか、マジックバックとか・・・
「どれもこの世界にあるとおかしな事になるんじゃないかな?」
「ああ、俺もそう思う。もっとソフトな物がいいよね」
「ソフトな物?例えばどういう物だ?」
「この世界にあっておかしく無い物」
「服とかでもお洒落な物なら売れるはずだよ」
「リターナの世界の服かぁ」
「うーむ、正直着心地は良くないぞ?」
「売れても『最低な出品者です』にチェック入れられそう」
「そうなると問題有るのか?」
「出品者の信用が下がると売れなくなる」
「ふーむ」
難しいなぁ。
商売なんて俺には10年早いよ。
「もう一度私の世界に来て色々見てくれないか?」
「うーむ、嫌だなぁ」
「そんなバッサリ・・・」
「わ、私は行きたい!鍵も貰ったし」
ああ、貰っちゃったんだ。
「うーん心配だ」
「氷川君も行こうよ。霧島さんも誘って」
「そうだぞ、昨日だって2人で来たんだろう?」
おい、余計な事言うなよ。
「そうなの?」
「あ、ああ、こっちのお金が無かったから、リターナに貰った向こうのお金で遊ぼうって事になって」
「遊ぶ?あんな事してたクセに・・・」ブツブツ
リターナうるせえ!
言うなって言っただろ。
「わ、解ったよ。協力するから。でもリターナが案内してくれ。俺達だけじゃ行動範囲が狭い」
「そうか?じゃあ明日でいいか?朝からでいいか?」
「お前本当はヒマだろ?」
「バカを言うな。昨日もあの後王宮へ行って魔法の家庭教師をだな・・・」
リターナが何か言ってるがどうでもいい。
はあ、結局行く事になっちゃった。
まあ鏡原さんも心配だししょうがないか。
「沙希ちゃんも誘ってみるね」
「・・・じゃあ香菜も誘ってみる」
どうせなら鏡原さんと2人で行きたかったな。
いや、やっぱリターナが居たほうが良い。
向こうの常識知らない者だけで行かない方が良い。
「では私は帰る。2人共また明日」
「私も帰るね。氷川君の家始めて入ったけど綺麗にしてるんだね」
・・・そういやせっかく鏡原さんが来てくれたのに。
何も進展が無いまま終わったな。
2人共帰って行った。
さて香菜に連絡するか。
どう切り出そうかな・・・鏡原さんと異世界行く事になったとか。
うーん、説明がメンドイ。
ブブブブブブブブブブブ
「うお!・・・か、香菜か」
向こうから電話かかって来ちゃった。
『もしもし?浮気してないでしょうね』
「第一声がそれっすか」
『今日もリターナ来たんでしょ?』
「ああ、彼女は葉山に教科書を返して鏡原さんと服を買いに行った」
『鏡原さんと?どうして?』
「喫茶店に来たからだよ」
『ふーん、他には?』
「ああ、他にもいろいろ見て来たらしくてな・・・
俺は事細かく説明した。
別に後ろめたい事は無いはずだ。
たぶん・・・
『それで向こうの世界に行く事になったの?』
「ああ、悪いんだけど香菜も明日来てくれないか?」
『・・・いいけど、鏡原さんを家に入れたのね』
「ええ?リターナと一緒に来たから仕方ないじゃん」
『彼女が居るのに他の女を家に入れるなんて』
「うーん、そう言われてもな。帰れとも言えないでしょ」
『まあいいわ。あした、昨日あった事を鏡原さんに話すからね』
「は、はあ?聞かれても無いのに話すの?鏡原さんポカーンってなるぞ?」
『別に良いじゃない、じゃあね』プツ、ツーツー
な、何だあの野郎。
めんどくせえ。
うすうす感づいてたけど女ってめんどくせえ。
香菜ってさっぱりとした性格に見えるけど、束縛強いんだな。
昨日の事があったからなおさら強くなった気がする。
「あ~あ、明日が憂鬱だよ」
不貞寝しようとしたら親が帰って来た。
お仕事お疲れさまです。
え?それ本当?
平野の姉ちゃんが詐欺で捕まったって。




