第五話 小悪魔
次の日の朝、香菜が家にやって来た。
俺の家の方が異世界の穴に近いから必然的に香菜の方が来ることになるのだが。
「男が迎えに来るのが普通じゃないかしら?」
「効率悪いじゃん。帰りはいつも送ってるだろ?」
「でもなんだか安く見られてない?」
「それより聞いたか?平野の姉ちゃんの話」
昨日親から聞いた話では、平野の姉ちゃんが詐欺で捕まったらしい。
訪問販売で怪しい美容品を売ってたんだよな。
「聞いたわ。狭い街だからあっと言う間に噂が広まるわよね」
「親や平野はどうしてんのかな」
平野の家は父親が大工、母親はスナック経営だ。
子供が捕まれば当然肩身の狭い思いをするだろう。
平野だってグレ・・・もうグレてたか。
「田舎なんだから家族だって白い目で見られると思うわ」
「閉鎖的な社会の宿命だよな」
バカな事したもんだ。
兄弟揃ってバカだとは。
ピンポーン
「はーい」
鏡原さんと葉山が来た。
香菜がいきなり俺にキスをしてくる。
や、やめろバカ。いきなり何してんだ。
「良いじゃない。恋人同士なんだし」
「ひ、人前でやる必要ないだろうが」
「あ、熱々だね」
「見せつけてくれるねー」
チキショウ、もう鏡原さんの前で・・・
香菜のアホめ。
「ねえねえ早く向こうへ行こうよ」
「待ってくれ葉山、今日商店街に平野は居たか?」
「あー、居なかったよ」
「平野君、大丈夫かな」
2人ももう知ってるんだな。
香菜、腕をいやらしく絡めて来るのをやめろ。
「まあ、これで平野につけられる心配は無くなったか」
「きっとそれどころじゃないわよ」チュッ
「ねえねえ早く行こうよ。リターナが待ってるよー」
「うん、そろそろ行こうよ」
そうだな。行きたくないけど行くか。
はあ、先行き不安だな。
公園に向かい、林道に入る。
誰も居ないよな?あれ?穴はどこだっけ?
ああ、リターナが穴の近くの木を伸ばして険しくしておくって言ってたっけ。
魔法ってそんな事も出来るんだな。
「ここか?」
「嫌だわ。そんな茂みの中」
「ね、ねえねえクモが」
「すごく険しくなってるね」
茂みを分け入り、穴を通る。
一瞬暗くなり、異世界へ出た。
「遅いじゃないか」
「リターナもう来てたのか」
「ちょっと険しくし過ぎじゃない?」
「誰にも見られないようにする為だ。なかなか苦労したんだぞ?」
エロい恰好をしたリターナがすでに待っていた。
今日はこっちの恰好なんだな。
「なあ今更だけど俺達の恰好ってこっちでは問題ないのかな?」
「ちょっと変わっては居るが問題ないぞ。こっちは多種多様な人種のるつぼだからな。恰好もそれぞれだ」
「香菜の恰好とか売春婦と間違われないか?」
「なんでよ!可愛いでしょ?」
「それくらいなら大丈夫だ。若いし間違われる事は無いと思うが」
そうだな。リターナはもっとエロい恰好してるもんな。
「じゃあ街を回ってみよう。確認しておくがお前達の世界で売っても問題の無い品物を探して欲しい」
「はいはい、香菜くっつきすぎだ。歩きにくいよ」
「良いじゃない」チュッ
「ぐぐ、い、イチャイチャしやがって!」
リターナが悔しそうに地団太を踏む。
綺麗なんだから彼氏作ればいいじゃん。
「言い寄って来る男はたくさん居るんだが、私の立場が目的の者も多くてな」
「世界一の魔法使いって本当なの?」
「ああ勿論だ。穴を見て解らないのか?」
「解らんて。これがどれくらいすごいのかピンと来ない」
こういうもんがこの世界にはありふれてるんじゃないの?
そうでもないのか?
「ここまでの魔法はこの世界を探しても3人くらいしか使えない」
「ふーん、すごいんだ」
「ねえねえ、そろそろ行こうよ」
「そうだな」
俺達は穴のある建物を出た。
「西に行くのか?女は行かない方が良いんじゃないの?」
「行かない方が良いのは西の外壁側の一部だ。10kmくらい西だよ」
「本当に広い街なんだな」
少し西へ行くと大きなアーケードがあった。
左右に様々なお店が数kmに渡って続いているらしい。
「地下にも店があるからな。あの階段がそうだ」
「人もすげえな。はぐれちゃいそうだ」
「もしはぐれたらあの噴水の前に来る事にしよう」
リターナが指さす方向に大きな噴水があった。
様々な彫刻から水が噴き出している。
噴水の前も人が一杯だ。待ち合わせ場所なのかな。
さっそく珍しい物発見。あれはなんだろう。
「伝言壺だ。あれに向かって伝言を吹きこめば家族に伝言を残すことが出来る」
「ふーん。メモで十分のような」
「リターナさん、あれは?」
「掃除機だな。あの筒をゴミに近づけると吸い込む」
「それは俺達の世界にもあるな」
「ああ、電気屋で見たよ」
うーむ、色々見てみるけどどれも難しいな。
便利な物もあるんだけど、俺達の世界の常識を無視した物ばかりだ。
「これはどうだ?保温カップ」
「・・・普通のカップに見えるけど」
「デザインが可愛いね」
「飲み物がぬるくなりにくいんだ」
「へえ、ウチの喫茶店に欲しい」
「・・・これくらいならソフトかな。ステンレスの似たようなのあるし」
「私も欲しいわ」
良いんじゃないだろうか。
見た目は普通のカップだし。
冷めにくいと言う気づきにくい特徴。
「いくらなの?」
「150クランだな」
「向こうの金で1500円か」
「カップの値段としては高いよ!」
「カップは100円ショップでも売ってるもんね」
うううむ、ネットオークションで売るとしたら梱包送料込みで2000円くらいだろうか。
買い手がつくかなぁ。
「そっちのお金を手に入れるためなら多少の差異は仕方ない」
「うーん、1000円で売って着払いとかなら売れるかな?」
「売り方次第じゃないかしら?ペアにして『二人の愛が冷めないペアカップ』とか売り文句を付けて見たら?」
「それはいいアイディアだな」
「私と和也の愛も冷めないわよね?」チュッ
「そ、そうだ、な」
キョドっちゃった。
鏡原さんがジーっと見てる。
恋人とイチャイチャしてるのに、浮気してる気分。
実際高校生の愛なんてすぐに気が変わるもんだと思うが・・・
その後もいろいろ見て回る。
水を入れると模様が浮かび上がる花瓶か、これもいけるだろう。
虫が寄って来ないペンダント?仕組み解んないけど・・・
「ねえねえこれどうかな?」
「安眠香水?効果はどんなもんなの?」
「寝る前に使えば熟睡間違いなしだ」
「確実なのか。その辺曖昧な方が良いんだけどな」
「リラックスフレグランスとして売ればいいと思うわ?」
「そうだな、安眠って言いきっちゃうと問題有る気がする」
「平野のお姉さんみたいに捕まっちゃうだろね」
「・・・ヒラノの姉が捕まったのか?」
「ああ、詐欺で捕まった。脂肪燃焼薬を平野の姉に売らすのはもう諦めろよ」
「氷川君、香水は薬事法に引っかかるかも」
「お、おっと、鏡原さん、そうなの?」
「私も詳しくは無いんだけど、化粧品と薬って製造方法が似てるんだって」
ああ、そういや化粧品会社が薬作ってるよな。
危ない危ない、知識が無いと危険だな。
香菜、何故鏡原さんを睨むのか。
教えてくれたんだから感謝すべきだろうが。
「ねえ和也、また宿屋でイチャイチャしましょうよ」
回りが全員香菜の方に振り向いた。
ああ・・・このタイミングで言って来るか。
はあ、もういろいろ諦めるしかない。
がっくりと項垂れ成り行きを見守る。
「あ、ああ、うん。恋人同士だもんね」
「わ、わあ、やっぱりそういう事するんだね」
「いいなあ、くぅ、羨ましい」
鏡原さんがすごく余所余所しくなった。
はあ、これからどうやって接しよう。
まあ普通で良いか。
友達のような関係を目指せば良いか。
その後、いくつか商品を選んだが、俺は心ここにあらず。
リターナには悪いがそれどころじゃ無かったよ。
・・・元々俺の不純が蒔いた種だ。
自業自得だったよな。
・・・はぁ。
「じゃあこれだけオークションに出して欲しい。お礼はキチンとするからな」
「・・・ああ、解った。」
「手伝えることがあったらまた言ってくれ。そこのメモ帳に書いておいてくれればいいから」
リターナが穴のある建物の壁際に置いてある机の上のメモ帳を指さす。
連絡手段が無いからな。
不便だが書き置きで連絡取りあうしかない。
「それじゃあ私は行くぞ。みんな協力ありがとうな」
リターナに手を振り別れる。
じゃあ俺達も帰るか。
穴を通り、誰もいないか確認してから茂みを出る。
「この品物どうするの?」
「悪いけど取りあえず俺んちに運んでくれ」
荷物が多いから皆に運んでもらう。
「ねえねえ、後は写真撮って出品するだけ?」
「ああ、売れたらプチプチ巻いて緩衝材入れて段ボールでいいのかな」
「私達は手伝った方が良い?」
「大丈夫よ鏡原さん、後は私と和也でやるわ」
「そ、そう?じゃあ運んだら帰るね」
・・・牽制だろうか。
強めのハッキリとした拒否。
女って怖いよな。
荷物を玄関まで運んで貰い、2人とはここでお別れ。
ごめんね、お茶も出せなくて。
変な感じになって申し訳ない。
部屋に荷物を運び一休み。
「オークションって私やった事無いんだけど」
「俺だってないよ。スマホだけで出来るのかな?」
「親のPCあるんでしょ?使わせて貰ったら?」
「いや、出来ればオークションやってる事も知られたくない」
親に限らず、あまり口外したくないよ。
・・・スマホだけで出来そうだ。
ん?登録には月額500円かかるのか?
うーむ、これも経費に入れなくちゃ。
「取りあえず写真撮っちゃうか」
梱包、送料にいくらかかるか解んないけど、包む前に写真撮らないとな。
テーブルに品物を置き写真を・・・
「待って、もっと綺麗に撮りなさいよ」
「え?どういう事?」
「こう光の方向も気にして・・・部屋の中の余計な物が見えるとそっちに眼がいっちゃうから片付けて」
「・・・女って自分が綺麗に見える角度研究するらしいよな」
「当然よ。角度って重要よ?最大限利用するべきだわ」
お、おう、そうなんだ。
香菜が念入りに品物の向きを変え、場所を変え、写真を撮っていく。
「あ、この品物駄目ね。裏に向こうの文字が入ってるわ」
「本当だ。気づかなかったな」
「・・・これも」
「うーん、デザインとして誤魔化せないだろうか」
「どうするの?」
「・・・取りあえず出品は保留しよう。他の物を先に出してみようぜ」
写真を撮り終え、ホームセンターへ。
梱包材やら段ボールやら買って来る。
「ふう、後は送料か」
「スマホで調べてみるわ・・・大きさ、重量で変わって来るみたい」
「うーん・・・あれ?送料って落札者が払うの?」
「・・・それが普通みたいね」
なんだ、心配して損した。
じゃあ品物の金額と梱包代で値段決めていけば良いのか。
大体梱包代は+300円くらいかな。
結構かかるもんだな。
「値段ね・・・難しいわね」
「・・・取りあえず、正規の値段で出品してみるか?売れなきゃ下げればいいんだし」
向こうの金額100クランはこっちでは1000円。
それに梱包代を足して値段を出して行く。
おっと、登録料もかかるんだっけ。
これは+100円でいいかな。
「期限って項目が出て来た」
「オークションの期限ね。その時間までに一番高く落札した人と交渉成立」
「ふーむ、おもしろいな」
「そうね、少しワクワクしてきたわ」
期限は3日くらいで良いだろ。
「じゃ、じゃあ出品するぞ?い、良いのかな」
「これって商売になるのかしら。ちょっと緊張するわね」
お金のやりとりだもんな。
高校生がこんな事していいのだろうか?
・・・ポチっとな。
「・・・出品されたみたいだ」
「どう?買い手は現れた?」
「そ、そんな早くは来ないでしょ」
「三日後、どれくらいの値段が付いてるかしらね?」
さあ・・・見当もつかんけど。
ひょっとしたら予想外の高値が付いたりして。
「ねえ、和也」
「ん?どうした?」
「別れましょ。なんだか満足しちゃったわ」
「は?」
は?
はあああああ?
な、なんだよそれ。
「和也がお互いもっと良いパートナーを見つけようって言ったんじゃない」
「な、なら鏡原さんの前であんな事言わなくても」
「私と付き合ってるのに他の女に目移りするのはプライドが許さなかったのよね」
「・・・・・・」
まあ、それは俺が悪いか。
で、でもよお。
「これからは良い友達で居ましょ?」
「い、いきなりすぎるだろ」
「香菜ちゃんに未練があるの?私って罪な女ね」
で、出た出た。女のめんどくさいところ。
人を振り回して良い女気取り。
翻弄される男の姿を見る事で優越感に浸りたいだけなんじゃないかって気がするやつ。
・・・はあ、でもそうだな。
元々告白されたから付き合っただけだもんな。
情も湧いて来てるがそれはこっちの一方的な感情だ。
女は切り替え早いって言うしな。俺の感情なんて理解できないか。
「はあ、そうか・・・解った、今までありがとうな」
「ちょっと、あっさりしてるわね。もっと泣きわめきなさいよ」
「それを狙ってたんならまだ積み重ねが足りないよ。まだ付き合って1か月半じゃん」
「つまらないわ。こんなに良い女と別れちゃっていいの?」
「・・・ひょっとして『別れないでくれ』って言って欲しいの?」
「ええ、言うべきだと思うわ」
「別れないでくれ」
「駄目よ。もう決めたんだから」
なんだよこれ。
めんどくせえよお。
「・・・ひょっとして、俺ってヘタクソだった?」
「なによそれ。上手い下手なんて解らないわよ」
「そうだよな。お互い初めてだったし」
「私は取りあえず卒業出来て良かったわ」
なんだよ。俺はその為の要員だったって事か?
「好きだったわよ。今も別に嫌いじゃないわ」
「もっと好きな奴が出来たって事?」
「ううん、でも別れましょ」
「意味分からん・・・」
・・・ああ、やめだやめ。
未練たらしいのは嫌だ。
「じゃあな香菜。お前は良い女だったよ」
「ちょっと、去って行くのは私の方なのよ?別れの最後の言葉は私が言うのよ」
「はいはいどうぞ」
「ありがとう和也。初恋だったわ」
香菜は帰って行った。
・・・・・・
「おう萌花、お兄ちゃんフラれちゃったよ」
「ええ?もう?時間の問題だとは思っていたけど」
「ひでえな。慰めてくれ」
「萌花ちゃんは勉強で忙しいの。ああ、これで萌花ちゃんの株も急落かなぁ?」
「知らんわそんなもん。お前の株は自分の価値で上げろ」
「はいはい、その為にも勉強してくるね」
「おう、頑張れよ」
はあ、失恋か。
・・・失恋か?
失恋だよなあ。
親が帰って来た。
何?平野が家出した?
別にグレてんだから普通だろ。
東京に向かったらしい?
よくそんな金有ったな。
ああ、親の財布から盗んだって?
あいつも典型的だな。
まあ俺には関係ないよ。
ご飯食って不貞寝した。
俺だって少しはショック受けてんだ。
やってられない時もある。
翌日
「で、なんで来たんだよ」
「あら、これからはお友達で居ましょうって言ったじゃない」
香菜が来た。
いつもと変わらぬ態度。
女って本当に切り替え早いんだな。
「俺は良い女と別れて傷ついてるからお前の相手してる余裕ないって事で」
「なによそれ。取って付けたみたいな理由を言わないで」
「もういいから帰ってくれ。俺はもうちょっと寝たい」
「オークションがどうなってるのか気になっただけよ」
「あ」
昨日出品して以来、全然見てないわ。
どうなってるかな?
・・・ん?
香菜の持ってるスマホでだって、検索すれば状況解るだろ。
こいつは何を言ってんだ。
「・・・うわあ、全然入札来てないわ」
「もっと値段下げたほうがいいのかしら?」
「解らん。取りあえず3日は様子見るよ」
「すぐ結果が出ないのも歯がゆいわね」
「・・・もう結果見ただろ?帰りなよ」
「ヒマなのよ。プールでも行かない?」
「はあ?」
なんなんだよこいつは。
いい加減にして欲しい。
「あれ?香菜さん?」
「萌花ちゃん、こんにちは。勉強教えてあげようっか?」
「本当?やったー!」
「プールはどうなったんだ?つか帰ってくれ。萌花も昨日言っただろ?俺達は別れたんだよ」
「今日は萌花ちゃんに会いに来たのよ」
「お前虚言癖なの?ちょっと怖くなって来たんだが」
「失礼ね」
俺を無視して萌花の部屋に行く香菜。
・・・なんなんだよ。本当に。
まあいいか、俺はもうひと眠りしよう。
zzzzz
ガチャ「辞書貸して頂戴」
「・・・ん?あ、ああ、そこそこ」
「じゃあね」バタン
「・・・」
ガチャ「赤ペン貸して」
「・・・そこ」
「じゃあね」バタン
「・・・」
ガチャ「・・・・・・」
「なんだよ」
「トイレと間違えたわ」バタン
「そんな訳あるか!」
ガチャ「てめえ!かまってちゃんじゃねえか!」
「何を言ってるの?」
「別れた事後悔してんじゃねえの?」
「う、自惚れないで。そんな訳ないじゃない」
「・・・・・・」
「・・・・・・でも、和也がどうしてもって言うなら・・・また付き合ってあげても良いわ」
「嫌だよめんどくさい。こんなめんどくさい姿見せて付き合いたいとか思うか。苦労するのが目に見えてる」
「ええ?想定外なんだけど」
ガチャ「お兄ちゃんひどい!!香菜さんの可愛らしい駆け引きじゃない!」
「可愛くねえわ。そう思うのは女サイドの勝手な解釈だ」
迷惑かけて気を引こうとかバカとしか思えない。
迷惑かければ普通嫌われるだろうが。
「もうやめてくれ。俺は鏡原さんと付き合えるよう努力するよ」
「全力で邪魔するわ」
「なんでだよ!」
「・・・人の初めてを奪っておいてそれは無いんじゃない?」
「ば!も、萌花の前でなんちゅう事を!」
「お、お兄ちゃん・・・やるね」
萌花が俺を尊敬の眼差しで見始めた。
おい、それもずれてるぞ。
これ以上ややこしくしないでくれ。
「絶対別れないわよ」
「いやもう別れたじゃん。前提がおかしくなってるじゃん」
「香菜さんに別れないと言わせるお兄ちゃんカッコいい・・・」
「お前勉強してろよ。ややこしくすんな」
「萌花ちゃん、効率の良い勉強をするには気晴らしも必要よ?3人でプールに行かない?」
「行く行くー」
「おい、いい加減にしろ!萌花は受験生なんだぞ!」
「なによ。ちょっとセクシーな水着を買ったのに」
「解かった。今日だけ気晴らしOKだ」
3人でプールに行った。
香菜は高校生とは思えないセクシーなビキニで周りを魅了していた。
萌花も知らんうちになかなか成長しておった。
妹の成長なんて意識しないからな。
水着にでもならないと気が付かないわ。
「香菜さんさすがのスタイルです!」
「萌花ちゃんも可愛いわ。モテるでしょ?」
「受験生なんで全て断ってます!」
おお、萌花はモテるのか。
妹なんて女として見れないから気づかなかった。
「私も高校生になってから18人に告白されてるけど・・・」
「聞いてないのに張り合いだしたよ。数えてるんだな」
「うるさいわね。なんで居るのよ」
「おwまwえwww」
「それなのになんでお兄ちゃんなんかと付き合ってるんですか?」
「和也の前では言いたくないわ。調子に乗ると面倒だもの」
「お前が言うか。つか別れたのどうなった?」
「いつまでも同じことをグジグジと・・・」
「有耶無耶になったの?俺の承諾も無しに」
何故か当事者なのに蚊帳の外だ。
人権って知ってるか?
平等なんてこの世に無いよな。
「細かい事は気にせず楽しみましょうよ」ぼよん
「・・・胸が当たってるんだが」
「わー香菜さん大胆!」
・・・結局別れたのは無しになったようだ。
なんなの?ねえ、なんなの?
「別れてないけど、私が振ったのは有効だからね」
「・・・どういう意味だ?」
「私の方が立場が上って事よ。私が和也と付き合ってあげてるんだからね」
・・・やっぱめんどくさい。
なんだろ、最初自分から告白して来た状況を変えたかったのかな。
・・・それでこんな回りくどい事を?
いや、さすがにそれは・・・
「だから私に告白されたからって調子に乗らないでよね」
ビンゴだった。
今日何回思った事だろうか。
本当にめんどくさい。
はあ、こんなに振り回されて、好きな気持ちは正直下がってるぞ。
これで踏ん切り着けて、鏡原さんにアタックする決心もしてたのに。
しかし、すっぱり香菜の事を振ってしまえない自分はなんなのだろうか。
どこかで勿体ないと言う気持ちがあるんだろうな。
先に家に萌花を送り、今度は香菜を家まで送る。
今日は平野に会わなかったから気分が良い。
「そうだ、平野が家出したんだってな」
「昨日ウチに来たのよ?一緒に東京行ってくれって」
「はああ?なんでそうなるんだよ」
昨日の夜、平野が香菜の家に行ったらしい。
しつこく香菜を東京に誘い、業を煮やした香菜のお父さんにこっぴどく怒られたらしい。
「どんな神経してんだよ・・・救いようがねえな」
「付き合ってる訳でも無いのに私を巻き込もうとしたのよ?」
「自分の家庭がおかしくなったからって人を巻き込むかね」
「そこがまたバカなのよね・・・私の事まで不幸にしようとして、そんなやつ好きになる訳ないじゃない」
・・・ん?
なんとなくお前が言うなって思っちゃった。
それを指摘したらどうせまた怒るんだろうな。
香菜の家の近くまで来た。
「ねえ、キスして」
「え?・・・俺はまだ気持ちの切り替えが出来て無いんだけど」
「細かい事気にしてると嫌いになるわよ」
・・・まあいいか。
香菜の腰に手を回し、長いキスをした。
手を振り、軽い足取りで帰って行く香菜。
少し釈然としない思いは残るが、元通りになったようだ。
・・・本当にこれで良かったのかな。
ふう、帰ろう。
「お兄ちゃんおかえり。良かったね香菜さんと寄りを戻すことが出来て」
「素直に喜べないよ。俺は鏡原さんとだな」
「鏡原さんて随分可愛くなったよね?前からあんな感じだったっけ?」
「・・・元々可愛かったが、最近痩せたらしいぞ」
痩せてさらに可愛くなった鏡原さん。
彼氏出来ちゃったらどうしよう。
「2人と付き合うのって駄目な事なのかな?」
「駄目に決まってるでしょ!お兄ちゃんごときが何言ってんの?」
「萌花がイケメン二人から言い寄られたらどうすんだ?」
「萌花は顔では決めないよ。経済力がある方と付き合う」
「フィーリングとかは?」
「そりゃ楽しいに越した事は無いだろうけど・・・ごめん解んないや。付き合った事無いし」
適当に言っただけか。
まあ中学生に聞く事じゃ無かったな。
「香菜さんで満足しないと罰が当たるよ?お兄ちゃんには勿体ない人なんだからね?」
「またいつ振られるか解らんぞ?あそこまでめんどくさい奴だとは思わなかった」
「でも初めてを奪ったんでしょ?」
「ぐ!・・・どうなの?女にとってそれって大きい事なの?」
「お兄ちゃんが香菜さんの・・・カッコいい」
「どうなんだよ・・・」
萌花が悦に浸ってるからもう何言っても無理だ。
お前勉強しろよ。
受験落ちても知らないからな。
親には内緒にしてね。
はあ、振り回されて疲れたな。
なんだかぐったりしちゃった。
今日は早めに寝よう。
おやすみなさい。




