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第四十一話『鬼侵戦・地獄界開闢』

大和の空が、裂けた。

黒雲ではない。

――“意思を持つ闇”。

空がひび割れ、

その奥から“何か”が覗く。

地を這うような圧が町を覆い、

人々の呼吸が止まる。

兵たちが膝をつく。

立っている者は、ほとんどいない。

――ただ一人を除いて。

桃太郎。

その視線の先。

空間が、歪む。

ゆっくりと現れる四つの影。

先頭。

静かに微笑む男。

王仁。

「……ここが大和か」

「実に脆い」

穏やかな声。

だがその奥にあるのは、絶対零度の支配。

背後。

三つの異形。

赤き牙を持つ巨躯。

天胤位・赫牙。

影のように揺らぐ細身。

地胤位・玄策。

全身に裂傷を刻みながら立つ狂気。

修羅胤位・裂蒼。

三者が互いを一瞥する。

鼻で笑う。

赫牙

「俺が先だ」

玄策

「非効率だ。私が処理する」

裂蒼

「……全部、壊す」

王仁、肩をすくめる。

「好きにしろ」

「ただし――成果だけは出せ」

その瞬間。

空間が――割れた。

第一戦:赫牙 vs 桃太郎

「来い、人間!!」

赫牙、踏み込む。

その一歩で、城門が崩壊する。

桃太郎、静かに構える。

「……相手はオレだ」

激突。

剣と拳。

ぶつかった瞬間――

衝撃波が町を薙ぎ払う。

赫牙の笑みが歪む。

「いい……いいぞ!!」

赤が、広がる。

「天胤位・地獄界――“焔王獄”」

世界が変わる。

空は血。

地は脈打つ溶岩。

重力すら歪む。

桃太郎の足が沈む。

赫牙

「ここではな――」

「オレが“理”だ」

拳。

山のように落ちる。

だが桃太郎は、

踏み込む。

「なら――」

炎を纏う。

「その理ごと、斬る!!」

「仙術・火炎刃――断ッ!!」

激突。

炎と焔がぶつかる。

だが、押し負ける。

桃太郎、歯を食いしばる。

(重い……だけじゃない)

(“押し潰されてる”……!)

それでも、前へ。

第二戦:玄策 vs 矢掛

町外れ。

風が――消えた。

玄策

「動くな」

その一言で、空間が固定される。

「地胤位・地獄界――“無間策陣”」

空間が分断される。

道が折れる。

距離が裏返る。

上下すら曖昧になる。

矢掛

「……迷路か」

矢をつがえる。

放つ。

消える。

次の瞬間。

背後から飛来。

矢掛、回避。

玄策

「この空間では」

「軌道も、結果も――私が決める」

矢掛、静かに目を細める。

風が、わずかに流れる。

矢掛

「……なるほどな」

もう一度、矢をつがえる。

今度は――撃たない。

風を読む。

空間ではない。

“歪みの癖”を読む。

「そこだ」

放つ。

矢が消えない。

玄策の頬を、掠める。

初めての“例外”。

玄策の目が細まる。

「……ほう」

第三戦:裂蒼 vs 神庭・哲西

「……殺す」

消失。

神庭の頬が裂ける。

哲西の肩が弾ける。

速いのではない。

“過程が存在しない”。

「修羅胤位・地獄界――“万断修羅”」

斬撃の“結果だけ”が現れる世界。

哲西

「どうやって……戦うんだよ……!」

神庭、目を閉じる。

「……感じろ」

空気ではない。

気配でもない。

“意志”。

裂蒼の執念。

歪んだ破壊衝動。

それが空間に滲んでいる。

神庭

「……そこだ」

一閃。

初めて。

“斬撃が弾かれる”。

裂蒼の口元が歪む。

「……いい」

「壊しがいがある」

哲西、笑う。

「見えなくても……やれんじゃねぇかよ」

戦場中央――王仁

王仁は、すべてを見ている。

まるで、

盤上の駒を見るように。

「やはり、出来がいい」

だが。

目は冷たい。

「だが――浅い」

一歩、踏み出す。

その瞬間。

黒い波紋が広がる。

地獄界が――軋む。

赫牙の焔が、わずかに沈む。

玄策の空間が、揺らぐ。

裂蒼の斬撃が、遅れる。

すべてが、

“下位”に落ちる。

桃太郎が、気づく。

赫牙の拳を受けながら、

空を睨む。

「……来るな」

王仁、微笑む。

「いや――」

さらに一歩。

「もう、来ている」

その瞬間。

世界が、沈む。

焔王獄。

無間策陣。

万断修羅。

すべてを呑み込む、

“もう一段下の地獄”。

音が消える。

光が鈍る。

存在が重くなる。

桃太郎の膝が、落ちる。

矢掛の矢が、止まる。

神庭の刃が、沈む。

王仁

「これが――“上”だ」

絶対的な支配。

誰一人として、

逆らえない。

だが。

その中で。

桃太郎だけが、

顔を上げる。

血を流しながら。

歯を食いしばりながら。

それでも。

「……まだだ」

小さく、

確かに。

炎が――消えていない。

 

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