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第二十五話― 喰界鬼・餓者髑髏


バキン――

砕けたはずの地獄界。

だが。

「……面白い」

“音”だけが、残っていた。

空間の奥。 ひび割れた闇のさらに奥で――

影が、蠢く。

ズル…… ズル……

現れたのは――

骨。

巨大な、骸骨の鬼。

だがその内側は空ではない。

“満ちている”。

喰らった力で。

溢れ返るほどに。

「我は死刑囚……だが、まだ生きている」

骨が軋む。

「なぜか分かるか?」

一歩、踏み出す。

ズン。

空間が沈む。

「死刑執行不可能――つまり」

顔が、歪む。

「我が強いからだ!!!」

次の瞬間。

世界が、三重に歪んだ。

「地獄界――重ねる」

同時展開。

「無間輪廻」 「餓鬼界」 「畜生界」

空間が、三層に裂ける。

「……っ!?」

桃太郎の炎が――消える。

「な……!?」

神庭の雷が――吸われる。

「は?」

哲西の精霊が――弱る。

「……力が……抜ける……」

さらに。

「……イライラする……」

神庭の声が変わる。

「ぶっ壊してぇ……!!」

哲西の瞳が濁る。

「……殺す……」

矢掛だけが、静かに呟いた。

「理性干渉……か」

餓者髑髏が嗤う。

「我は禁忌を犯した」

「鬼を喰った」

「だから――鬼より鬼だ」

一歩。

ズン。

その瞬間。

三つの死が、同時に来る。

未来が確定する。

力が奪われる。

理性が削られる。

逃げ場のない“三重構造”。

桃太郎の膝が落ちる。

(……まずい)

神庭が突っ込む。

完全に、本能で。

「死ねェェェ!!!」

だが――

ズン。

未来確定。

吸収。

暴走。

神庭の身体が崩れる。

「……っ……くそ……!」

哲西が吠える。

「やめろォォォォ!!」

完全獣化。

理性消失。

味方すら、視界に入っていない。

「……食う」

矢掛が動く。

一瞬で。

「肆・鴆」

毒。

神経遮断。

哲西の動きが止まる。

「……すまない」

視線を上げる。

餓者髑髏へ。

(同時三重……)

(だが――)

違和感。

三つの地獄界。

“完全ではない”。

「……そこか」

桃太郎が顔を上げる。

血に濡れながら。

「何が見えた」

矢掛が言う。

「同時に見えるが――」

「“優先順位”がある」

一瞬だけ。

ほんの刹那。

「どれか一つが“薄くなる”」

沈黙。

桃太郎の目に、火が戻る。

「……斬れるな」

矢掛が頷く。

「だが条件がある」

「三つ同時に“揺らす”必要がある」

静寂。

そして。

神庭が、笑った。

「はっ……最初からそれやりゃいいんだろ」

哲西が震えながら頷く。

「……ぼく……やる……」

矢掛が羽を構える。

「連携だ」

餓者髑髏が嗤う。

「無意味だ」

だが。

三人が、同時に動く。

神庭――雷を“ばら撒く”(吸わせる)

哲西――精霊で“無理やり回復”(維持する)

矢掛――分身で“選択を増やす”

三つの地獄界が、干渉する。

揺れる。

歪む。

そして――

一瞬。

“ズレた”

桃太郎が踏み込む。

炎は、ない。

だが。

意志だけがある。

「――斬る」

一閃。

三つの境界。

その“重なり目”だけを斬る。

バキン。

空間が、裂けた。

餓者髑髏の目が、初めて歪む。

「……それを……見るか……」

三重地獄が、剥がれる。

桃太郎の刃が――届く。

「終わりだ」

静かに。

斬り伏せた。

沈黙。

誰も動かない。

矢掛が言う。

「……いや」

餓者髑髏の身体が――

まだ、立っている。

「……まだだ」

目が、開く。

「……いい」

低く。

満足した声。

「久しぶりに、“殺されかけた”」

だがその声音に――

敵意は、なかった。

(……違う)

矢掛が気づく。

(こいつ――戦っていない)

餓者髑髏が、手を上げる。

「では――」

空間が沈む。

「第四」

開く。

■ 第四地獄界

『奈落界・解放』

その瞬間。

世界の“意味”が変わる。

結界は無意味。

封印は無意味。

構造は無意味。

“内側からの破壊”だけが、無限に増幅される。

矢掛の顔が変わる。

「……っ!!」

「やめろ!!」

餓者髑髏が、言う。

「暴れろ」

それだけで。

世界が、煽られる。

畜生界が強まる。

神庭の目が狂う。

「……ぶっ壊す……!!」

雷が暴走。

制御不能。

哲西が吠える。

完全な獣。

「オオオオオオオオ!!」

敵味方、消失。

桃太郎が立つ。

限界の身体で。

(……止める)

だが。

「もっとだ」

餓者髑髏の声。

餓鬼界、全開。

桃太郎の“内側”が――

強制的に引きずり出される。

「ぐっ……!!」

炎、爆発。

制御不能。

過去最大。

「まずい!!」

矢掛の叫び。

「それは――!!」

遅い。

桃太郎が振るう。

「火炎刃――!!」

振り抜いた瞬間。

爆発。

炎が龍のように暴れ――

天井へ。

ドゴォォォォォォン!!!!!!

鬼ヶ島が、揺れる。

天井が――割れる。

光が、差し込む。

外界。

観客の鬼たちが、ざわめく。

「何が起きた」

「内部から……?」

「誰だ」

視線が落ちる。

桃太郎へ。

「人間……?」

「こいつが……?」

その瞬間。

“全ての注意”が逸れた。

矢掛が振り向く。

「……っ!!」

餓者髑髏が――消えかけている。

地獄界が、収束している。

「……最初から……!」

餓者髑髏が笑う。

「いい働きだ」

桃太郎を見る。

「人間」

一歩。

空間が歪む。

「出口は、開いた」

その身体が沈む。

地獄界そのものへ。

「待て!!」

矢掛が矢を放つ。

だが――当たらない。

“外界に干渉していない”。

最後の言葉。

「また喰いに行く」

消失。

完全に。

静寂。

そして。

遅れて。

桃太郎が、崩れた。

ドサッ。

「桃太郎!!」

哲西が駆け寄る。

呼吸、浅い。

心拍、不安定。

全身が焼けている。

「……生きてる……!」

神庭が膝をつく。

「……チッ……逃げられたかよ……」

悔しさと、興奮。

矢掛は、上を見る。

壊れた天井。

差し込む外界の光。

そして――

ざわめく鬼たち。

「……最悪だ」

静かに言う。

「我々は――」

「鬼ヶ島を壊す“道具”にされた」

風が吹き込む。

瓦礫が鳴る。

光の中で。

ただ一人。

桃太郎だけが。

かろうじて、生きていた。

 

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