第四十一話 クロノと魔人族
大きな地響きと共に、木々が大きな音を立てて倒れていく。
それでもなお地響きは続き、砂埃が舞って、木の葉や枝が吹雪のように荒れ狂う。
クロノは近場の倒れた倒木に腰かけて、両肘をつき、一体いつ収まるだろうかと、暴れるそれを眺め続けていた。
「起きてからずっとあの調子かよ、荒れてんなぁ」
「まぁ仕方ないわな、現場にライアがいたらしい」
人の目を避ける魔の森の奥。
かつて滅びて森に飲まれた国の、人が住んでいたであろう、もう見る影もなく植物に蹂躙された建物。
その一つから出てきた、狼男のボンブと、白髪狐目長身のアーゲストが、困った様子で暴れ回るそれを眺めながら呟いた。
「ライアって、一年前に誘拐されたっていう、三つ子ちゃん?」
「そうそう、その中の唯一の、女の子の妹ちゃん」
「……カイムの話を聞く限り、あれだよね、生きたまま」
「生きたまま魔力源にされてたあれだね。目の前で見て頭に血がのぼって、下見だってことを忘れるのも無理はないよ。助けられなかったなら尚更」
「そりゃあ荒れるわなぁ……」
その心情は察して余りある。
深く息を吐きながら、ボンブがどうしたもんかと腕を組んだ。
大声を上げて、鬱蒼とした魔の森の木々に、叫び当たり散らしているカイム。
それを見ながら、クロノは頬杖をついて、彼らと行動を共にするようになった出来事を思い起こしていた。
クロノはエレイーネー魔法学校の基礎科希望で、希望通りの入学になっていたはずだった。
しかし入学式にて蓋を開けてみれば、何故か魔法科に。
普通の事務員を目指していたクロノにとって、これは青天の霹靂だった。
入学試験時の担当教師に説明を求めても、延々と長話をされて話を逸らされる。
そのまま魔導士志望だと勘違いした、性格のきつそうな男子、エリンジに、初日からやる気がないと絡まれる。
想像していた初日からかけ離れ過ぎていて、クロノは正直かなり萎えていた。
おまけに、自爆生徒を誰も助けないものだから、元来のお節介が災いして、魔物を蹴って霧散させてしまう。
そのせいで、クロノが魔法科にいることに、誰も疑問を抱かなくなってしまった。
後半の魔物退治はやけくそだ。
クロノは家族に黙って、こっそり魔の森に入っては、魔物を物理で倒して鍛えていた。
だから戦い慣れてはいたが、まさか初日にそれが露呈するとは思わなかった。
ただ裏方でひっそりと事務員をして、静かに過ごしたかっただけなのに。
エレイーネーの基礎科を卒業すれば、商会や魔道具開発などの事務員は引く手数多。
ついでに世界屈指と名高い図書室で、貴重な本を読み漁りたかっただけなのに。
基礎科に配属し直して欲しいと訴えようにも、あれだけ暴れて実力を示した後では難しいだろう。
おまけにパートナーのエリンジに、ことあるごとにに絡まれる。
やめて欲しい。
別に魔導士なんか目指してないから、その上昇志向はクロノにはいい迷惑だった。
クロノが何もかも嫌になってきたときだ。
課外補習の話を聞いて、学校の外に出て、そのまま逃げてしまおうと考えた。
どうせ三年後には、事務員として家から出るつもりだったのだから、それが三年早くなるだけだ。
エレイーネーの卒業資格がなくなるのは痛手だが、このままだとなし崩し的に、魔導士にされる可能性もある。
それは勘弁願いたかった、クロノは世間的に目立ちたくないのだ。
一年程適当にどこかに就職して働いて、落ち着いた辺りで家に事後報告すればいいだろう。
そう考えて荷物をまとめ、制服の下に元の服も隠して、自室に退学届まで置いて、準備は万端。
校外の課外補習中、チームで言い合っている隙に、クロノは忍び足でそっと廊下に出る。
さっさと制服を着替えてバレないように、こっそり裏口でも探して、逃げようとするまではよかった。
だが想定外というものは、尽く続くものらしい。
「えぇ……?」
クロノが適当にドアを開きながら先に進んでいったら、ボロボロの身なりに首輪と手錠をされた、鱗や耳の長い見た目の、明らかに奴隷と思しき人たちに遭遇した。
ざっと見て四人ほど。
ドアを開けた瞬間の怯え切った様子から、入って来たクロノを、新しい関係者かと勘違いしている。
確かに鍵のかかったドアをいくつか、腕力で適当にガンガンこじ開けてきた。
そう思われても仕方ないと言えば仕方ない。
しかしこの施設は、町長肝煎りの魔道具製造施設じゃないのか。
これは何かきな臭いものが裏にある。
とりあえずこの町周辺の事務員の就職はなしだと、クロノは一人結論付けた。
「だぁーもう、タイミング最悪ぅー……」
なんでこうも面倒事が続くのか。
天井を見上げながらクロノは頭を抱えたが、流石にこれは見て見ぬふりは出来なかった。
胸糞悪いのでこのまま放置したくない。
後で後悔して引き摺るのことが、クロノは嫌いだった。
「はぁー……君たち、手と首を出しな」
命令口調でそう言えば、やはり関係者かと思われた。
怯えながらも、両手と首を差し出してくる。
申し訳なさを感じながら、差し出されたその先にある首輪と腕輪に、手をかけて握り潰す。
バチンバチンと弾ける音と共に、破壊されたそれがガラガラと音を立てて床に転がっていく。
「握力の筋トレ負荷、もうちょっと上げるかな」
クロノはぼそりと掌を見て呟きながら、何が起きたかわからない表情の奴隷たちに顔を向けた。
暴力でも振るわれると思っていたのだろうか。
奴隷たちは、目の前で魔封じが外された理由がわからず、戸惑っている様子だった。
「さて、ここに留まってこのまま惨めな人生終える? それとも一縷の望みにかけて、一緒に外に脱出してみる? 君たちで決めて、人形じゃないんだから」
結果を言えば、全員顔色を変えてついてきた。
とりあえず施設を出たら、魔の森にでも潜伏すればいいだろうか。
だがその後はどうすればいいだろう。
行き当たりばったりで助けたクロノには、その先が真白だった。
エレイーネーに連絡する考えは、クロノにはなかった。
入学して数日で退学を考えるほど、信頼に置けていなかったからだ。
「てめぇそこの人間! 同胞たちどこ連れていくつもりだ!?」
何故か施設が爆発でもしているかのような振動を感じながら、どうしたものかと考えながらクロノが走っていたら、唐突に褐色肌の髪の長い少年と遭遇した。
明らかにクロノに敵意を抱いて顔を真っ赤にし、今にも襲い掛かってこようと、髪がうねうね動いている。
しかしクロノは、少年と奴隷たちを何度か交互に見た後叫んだ。
「助けが来たよ君たち! さっさとあいつに続いて脱出して!」
「はぁ!?」
クロノの叫びに、褐色の少年は驚愕の叫びをあげた。
クロノを人間と言い、後ろの奴隷たちを同胞と呼んだのならば、少年はこの奴隷たちを救出しようと乗り込んできたのだろう。
クロノはそう結論付け、その後の考えが何もない自分より、少年について行ったほうがいいだろうと、瞬時に判断して叫んだのだ。
実際奴隷たちも、少年の同胞という言葉に反応して、次々に走っていく。
これでもういいだろうと、クロノは適当に切り上げて、さっさと逃げ出そうとした。
「なんなんだよお前は! 何企んでやがる!」
何も企んでないんだけどなぁ、と思ったがもう後の祭り。
クロノは気が付いたら、赤褐色の髪にグルグル巻きにされて、奴隷たちと一緒に少年に連れ出されていた。
施設から出るのが目的ではある、連れ出してくれるのはクロノからすれば願ったり叶ったり。
そのまま大人しくしていたら、褐色の少年には余計怪しまれたようだ。
「うーん、悪い匂いはなにもしねぇぞ」
「そんなはずねぇだろ、人間だぞ!」
「落とすか乗せるか、どっちかにしてくんないかなぁ」
髪にグルグル巻きにされたまま、あれよあれよと運ばれて。
クロノはアーゲストが魔力で作った、巨大な鳥に乗るカイムの髪に繋がれた状態で、ブラブラと空を飛ぶ。
結局奴隷たちと一緒に、魔の森の中の、魔人族の拠点まで連れていかれた。
ボンブには、相手の悪意を嗅ぎ分ける、忠犬の鼻という役職がある。
そのお陰で悪意のある嘘が、彼の前では全部わかる。
しかしクロノは、行き当たりばったりで助けた、向こう見ずのお節介が出ただけ。
悪意などないので、ボンブには嗅ぎ分けられなかった。
ボンブのこの役職はかなり信頼されているらしい。
クロノに対する拷問なども特になく、ボンブがそういうならと、魔人族の態度は軟化した。
奴隷となっていた同胞を、クロノが助けていたのも大きかったのだろう。
「とりあえずカイム、連れてきたのお前だから、監視役やりなな」
「はぁ!? おれぇ!?」
魔人族の中で、指揮をしているアーゲストがそう命じれば、カイムは大声で暴れて抵抗していた。
だが結局、カイム自身がクロノを連れてきたのが仇となった。
魔人族が拠点としていた、かつて魔の森の中に没する前は人間が使っていたであろう、廃棄されて久しい地下施設は、適宜改築されて割と快適で。
人目につかないから目立たないし、暇なら事務要員がいないので、書類整理を手伝ってくれと言われる。
思ったより、目指していた生活に近いのではないのだろうか。
そう思ったクロノは、魔人族の拠点で、居心地よく過ごしていた。
カイムは終始疑いの眼差しでずっと見てきたが、クロノは気にしない。
事あるごとに、周囲に被害を出しながら攻撃されるよりずっとマシだ。
何より彼らには、同胞を奴隷化されていたという、人間を疑うに十分すぎる理由がある。
ここで疑わない方がどうかしていると思ったクロノは、あえてカイムを放置した。
魔の森で奴隷だった同胞たちを、安全な場所に移送する際、当然魔物との戦闘もあった。
大規模魔物に、同胞を庇いながら戦っていたせいで苦戦していた魔人族。
見ていられず、またクロノのお節介が発動して、魔物をぶん殴って霧散させた時は、あまりの威力にドン引きされた。
だがこれだけの腕力があって、全く抵抗してこなかったと、魔人族のクロノに対する態度は、さらに改善していった。
何度目かの移送の際に、人間の魔導士を見かけてパニックに陥った同胞たちが、遺跡に逃げ込んだ。
その救出作業をしていた際、エレイーネーの連中と再会したのは、クロノにも想定外だった。
だがクロノには、エレイーネーについていく義理も道理も存在しない。
そのまま魔人族の元に戻ったため、最終的に魔人族側にも困惑された。
そうやって数ヶ月一緒に過ごし、クロノは少しずつ、ぽつぽつと彼らの話を聞くようになった。
魔人族はかつて、人里から魔の森に、何らかの形で追放された人たちが、生き残るためにひっそりと集まった集落が発端となった、世界に知られていない、魔の森の中にある国の人たちだ。
魔の森の中で暮らしているせいか。
代を重ねるごとに、瘴気に身体が順応していき、鱗やら羽やら、亜人のような独特の進化を遂げて、それに応じて魔力も多い。
追放された身の上の祖先が多いため、魔人族は人知れず、ひっそりと森の中で暮らしていた。
しかし数年前、魔の森の中で、怪しい動きをしていた人間の集団に遭遇したのを皮切りに、その奇抜な外見を、見世物にでもするつもりだったのか。
人狩りに遭い始めた。
魔の森の中で生活していた魔人族は、同族意識が強い。
仲間を同胞と呼び、攻撃してくるものには団結する。
だが森の中で生活していた彼らは、基本魔物との戦闘を想定していた。
だから人狩りに遭っていたと気付くまで、時間がかかったのだ。
そうしてようやく気付いた魔人族は、攫われた同胞を助けるために、森から出て周辺国を探った。
魔法による捜索の末に、魔道具製造施設の奥底に、攫われて売られた同胞を発見した。
万一に備え、攻撃力の高いボンブがまず囮として暴れ、その隙に裏からカイムとアーゲストが、同胞のいる場所に向かって助け出していたのだ。
そんなことを思い出しながら、なんとなく居心地がよかったので、クロノは流れで彼らと行動を共にしていた。
だがここにきて状況が一気に酷くなり、暴れているカイムをただ眺めていた。
「クロノちゃん、カイムに声掛けてとめてくんない?」
「その話した後でそれ振る?」
「いやね、俺もボンブも、カイムの魔法とは相性悪いから、こうなると放置するしかないんだけど。流石にこれだけ暴れたら、下にいる子たちが怖がっちゃってね」
「だからって私もやだよ。それに今は何言っても、何の慰めにもならないのに」
暴れ回っているカイムを、クロノはアーゲストとボンブと共に見つめる。
カイムは一年前、当時六歳になる三つ子の弟妹たちを、人狩りに攫われている。
クロノも詳しくは聞いていないが、カイムがほんの少し目を離した隙にやられたらしい。
だから彼はここに居るのだ。
攫われた弟妹たちを、自分自身で見つけて助け出すために。
人一倍人間に対して、猜疑心が強いのも当然だろう。
必死で探していた妹が、あんな状態で見つかって、助けられなかった。
流石にクロノにも、荒れ狂うカイムにかける言葉など見つけられない。
「最近仲良くなってきたから、ワンチャンいけないかなって」
「監視役だからって、毎回セット行動指示してきたのアーゲストじゃん」
「やだなぁ、機嫌損ねないでよ。それともまだあれ根に持ってる? いやあれはほんとごめんて」
「あれって? ……あーあー、いや別にあれは気にしてない。わざとどっちかわからない格好してるから、気にしなくていいよ」
「わざとしてるって何。それに多少は気にしなさいよ、恥じらう乙女でしょうが」
呆れた声をあげるアーゲストを、クロノは無視した。
最初期、カイムはクロノが逃走して、魔人族の情報をばら撒くことを警戒していた。
その為クロノの手洗いにも入浴にも、カイムは見えない位置に居ながら、クロノが逃げないよう、髪の毛で首を拘束していた。
クロノ自身は別に構わないので放置していたが、どうやらカイムに男性と勘違いされていたらしい。
しばらくしてアーゲストとボンブに指摘され、事実を知ったカイムが急に折れて、拘束はなくなった。
「うーん、それよりちょっといいかなアーゲスト、ボンブ。おーい、カイムもちょっと話聞いてくれるー?」
クロノが手を振ってカイムに声を掛けた瞬間、髪の刃が飛んできて、クロノの左首のすぐ横を通り過ぎ、後ろの木を薙ぎ払った。
前にもこんなことがあったなと思いながら、クロノはアーゲストに向き直る。
「そろそろさ、人間側の方を動かしたほうがいいと思うんだけど」
「……どういうことか説明してくれるかな」
流石にこの話題を出せば場の空気は重くなる。
クロノが魔人族に好意的にされていたのは、あくまで魔人族に対して害がなかったからだ。
それが覆ればどうなるか、クロノも想像できない程馬鹿ではない。
「アーゲストが考えてる様なことじゃない。ただね、今回の一件から、これがただの人狩りじゃなくなったってことが、何となく察しがついた。ボンブ、例の予告状は今も出してるんでしょ?」
「施設を襲う際に毎回出してる。“同胞を解放しろ”と」
「下見の際に色々情報探ってみたけど、その予告状、もみ消されてて情報が人間側に流れてない。だから魔人族がなんで襲撃してるか、人間側が分かってない。このままだとかなり状況がまずくなるよ」
「今以上に悪くなることってあるのかい?」
「予告状は、魔道具製造施設だけに出してるわけじゃないでしょ。大元の商会とか貴族とか。それだけでかい組織が、全部口止めされてるって、よっぽどだと思うんだよね。このままいくとまずいよ」
「何が言いてぇんだよ」
血走った眼をしながらも、カイムがこちらに歩いてきた。
いつもより足取りが荒いので、下手をしたらまた髪の刃が飛んでくるかもしれない。
「こっちの正当な主張が消されてるってことだよ。つまり、ただの爆破するテロリスト扱いされてんの。国を跨いだ色んな箇所で、情報をもみ消すようなデカい組織にね」
苛立ちながら近寄って来たカイムにも、クロノは声をあげて話す。
「人狩りしてくるような連中に、いいように利用されて、向こうの都合の悪い事擦り付けられたらどうなると思う?」
近寄って来たカイムから視線を外して、怪しい狐目のままのアーゲストの方にクロノは向き直った。
「同胞たちを助けられたとして、悪事を全部押し付けられたら、今度は森の外が全部敵に回る。その時どうやって同胞たちを助けられる?」
クロノの言葉に、重い空気が愕然としたものに変わった。
同胞を助けることで精一杯だった彼らに、伝えるのは酷だ。
だが狙われている目的が変わった以上、動かなくてはならない。
「……俺らの国ごと狙われる可能性があるっていいたいのかい?」
「国だけで済むかなこれ。世界を混乱に陥れた、言葉をしゃべる魔物ですって言われたら、今度こそこっちの主張は通らなくなる」
話を理解しようとするアーゲストに、クロノは続ける。
今まで救出作業をしていた施設では、文字通り奴隷の肉体労働。
馬車馬の如く働かされ、無理矢理回復魔法をかけることで、限界を超えてまでこき使われているだけだった。
だが魔人族の魔力が人間より多いことに、人狩りたちが気付いたのだ。
「そうなったら国どころじゃない、未来永劫人扱いされなくなる。カイムが見たっていう、魔力源カプセルにされることにも正当性が生まれる。それだけは避けるべきだよ」
このままでは魔人族は、奴隷ではなく魔力源として、未来永劫狩場にされ続ける。
周辺の国に認知されていない魔人族は、瘴気に対応した影響で見た目が奇抜だ。
魔物の一部だと認知されたら、あるはずの人権すら否定されてしまう。
「……それと人間側を動かすっていうのはどう繋がんだよ」
「こっちがされて嫌なことをされてる。だから向こうがされて嫌なことしてあぶりだす。そう言いたいの」
そう言ってクロノは、服の下に隠していた、大量の資料を取り出した。
どれもこれもカイムと同行して、魔人族を開放する際に、一緒に持ち出した施設の資料だ。
「向こうは施設が破壊されて燃えたから、資料が残ってるなんて、考えてもいないよ。これを複製して、世界各国のあらゆる場所にぶちまける。人狩りから奴隷を買っていた連中は慌てるだろうね。」
非合法の奴隷をこっそりと購入するようなところ。
後ろ暗いものはそれだけではない。
「情報が表沙汰になれば、組織になんとかしろとせっつく、そうすれば向こうも動かざるを得ないよ。スポンサーに逃げられた上、情報まで吐かれちゃ大損どころじゃないからね」
「人間側を動かすって、人狩りしてる方ってことかい? でもだいぶ危険じゃないかな、クロノちゃん」
「んー、まぁ資料の意味が分かる人間が、魔人族側についてるって知られるのは危険かな」
「……要するに狙われるのお前じゃん。なんで何の得にもならないのに、そんなことすんだよ。ほんとお前なんなんだよ」
話を聞いてようやく落ち着いてきたのか、カイムの声色は困惑していた。
それに対する返答はいつも同じだ。
徐に落ちていた石を拾いながら、それを見つめるように、少し帽子をずらした。
「べっつにー、私の都合。ただ生きたまま魔力源にするなんて、ド外道な方法思いついたやつら、個人的に看過できないだけだよ」
拾った石をバキバキと手の中で砕きながら、怒りの据わった赤い目で、クロノはそれを見つめていた。




