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第二百五十九話 浮かび上がる問題の数々

 

 それからゲリックの指示通り、ルドーたちは変化した訓練授業を続けた。

 魔法訓練のほうも、クロノは歌に集中させ、ルドーたち他の魔法科は、それぞれで連携がうまく運べるようにと、いつも通りの訓練や組手に戻っている。


 クロノは相変わらず歌に対して恐怖が強く、中々思ったように歌えていない。


「クロノ、今日はいけるか」


「やだよ。もう構わないで」


「そうも言ってられんだろう」


「うるさい! いつもいつも勝手を押し付けないでよ!」


「勝手をしてるのはそっちだろ」


 エリンジがいの一番にクロノに魔力を注いでみろと、いつもの調子で迫っているので、余計に怯えさせてしまってる。


 エリンジとしては、歌姫の魔力で強化された姿を見せて、クロノを安心させる狙いもあるのだろう。

 だが今のクロノに、エリンジのその対応は完全に逆効果だ。


 ここでもエリンジとクロノの性格相性の悪さが、悪い方向に働いている。


「強制してんじゃねぇよ。無理させんな」


「多少は無理をさせなければ、出来るものも出来ないだろう」


 クロノを庇うようにカイムが間に入ったが、エリンジは退かない。 


 魔法訓練の戦闘によって無理矢理歌を引き出した功績。

 無理をさせればクロノは歌うと、エリンジは誤った方向に学習してしまったようだ。


 それになにより、この世界には歌の概念がそもそも転生前の世界のようには存在しない。


 戦うために歌を歌う。

 歌姫の性質から、エリンジは歌を戦うための手段と認識している節があった。

 だがそれは間違った認識だ。


 ルドーも見かねて仲裁に入る。


「エリンジ、歌はそうやって歌うもんじゃねぇって」


「追い詰めたことで歌を歌えた。なら同じように追い詰めればいい」


「いやエリンジ、あれはクロノを一度だけでも歌わせようっていうゲリックの判断だろ。毎度させても上手くいかねぇよ」


「一度うまくいったなら、慣れさせればいい。その為に歌わせたんだろう」


「それとこれとは話が別じゃない!」


 リリアがエリンジの頭をスパンと叩き、クロノから引き離す。

 不服そうな無表情を浮かべるエリンジに、ルドーも苦言を呈した。


「あんま無理させすぎるのもよくねぇよ。ゲリックの話から、歌姫が魔力を与えられるなら、一番大事なのは信頼関係だろ」


「俺はそいつの実力については信頼している」


「私も悪い意味での信頼はあるよ」


 中身のないエリンジの返答に、クロノが皮肉で応酬していた。


 エリンジとクロノは、魔力相性のよいパートナーだった。

 クロノが歌姫で、その魔力を他人に与えられるとわかった今、その相性の良さについてルドーは納得していた。


 エリンジは魔力にものをいわせた、複合魔法の虹魔法でゴリ押す戦法だ。

 魔力を無尽蔵に与えるクロノと、超火力を引き出すエリンジは、とてつもなく魔力相性がいいといえた。


 エリンジも当然その事実に辿り着いている。

 だからこそエリンジは自分が前に出て戦うべきだと、クロノに魔力を寄越せと詰めているのだ。


 だが時間逆行前に家族を惨殺され、世界崩壊一歩手前までの光景を目の当たりにしているクロノのトラウマは、そう簡単になんとかなるようなものでもないだろう。


「どうしたもんかな……」


『気分上げるために歌うのもありだぜ』


「確かにそうだけどさ、その前にまず怖がってるのなんとかしねぇと」


 パチッと弾けた聖剣(レギア)に、ルドーは根本的な問題を答える。


 エリンジとクロノは魔力相性は最高にいいのに、こんなにも性格相性が悪い。

 うまく働けばこれ以上ない火力に繋がるが、どうにもままならなかった。


「何が問題だ。実力の信頼関係があれば十分だろ」


「それが分かってないって言ってるのに、いつもいつも伝わらないんだから……この朴念仁!」


 エリンジがリリアに何度も頭を叩かれながら、ズルズルと引き摺られて行く姿をルドーは見送る。


「おい、あんま気にすんなよ」


「知らない。もう気が乗らないから帰る」


 カイムが気にするようにそれを一瞥した後、クロノに声をかけたものの、気分を害した様子でクロノは運動場から離れていってしまった。

 これでは今日は、クロノはもう歌うことはないだろう。


「今彼女に必要なのは、歌っても平気だという成功体験ですね」


 クロノを歌わせた翌日の魔法訓練でのゲリックの言葉を、ルドーは反芻する。


「歌には感情が乗ります。それは転生者の皆様なら知っていることでしょう」


 ゲリックは異世界転生した相手などお見通しと、ルドー、ヘルシュ、アリアをじっと見つめていた。


「きっかけとして先日は無理に歌わせました。しかし恐怖に囚われたままでは、歌った魔力にも恐怖が乗る。それでは強化に繋がりません」


 嫌そうに運動場の端にいたクロノに、ゲリックはそう言ってチラリと視線を投げる。


「安心感を与えるためには、信頼関係が必要です。そうすることで始めて、魔力を与えた際の強化が本当の意味で生きるのです」


 無尽蔵の魔力を与えるにしても、その魔力の質が、強化を左右していく。

 恐怖に怯えたままの魔力では、与えられた人物も、感情に飲まれて制御できなくなる可能性があった。


 クロノのトラウマの克服と、信頼関係の確立。


 身体能力を鍛える基礎訓練の他に与えられた課題は、思ったより人間的な部分だった。


 不老不死の女神深教の祈願持ちと、それを作り上げた女神を殺す。

 目的はシンプルなのに、そこに至るまでの過程が、ルドーにはまだまだとても長い道のりに感じられていた。


「信頼関係なぁ……」


「信頼関係の前に、身体的にぶっ壊れちゃいそうだよ……」


 聞こえてきた愚痴に、ルドーは視線を向ける。

 運動場でまだ訓練もしてないのに、ヘルシュはグテッと地面に座り込んでいた。


「ヘルシュ、大分疲れてそうだな」


「避難してたストシオンの住民、グルアテリア側の空き家に案内することが決まってさ。俺が指揮任されちゃったんだよ……」


 ぐったりと項垂れたまま、ヘルシュは愚痴のように溢した。


 ランタルテリア首都ストシオンに住んでいた、エレイーネーに避難していた住民。


 ランタルテリアとグルアテリアの合併が正式に決まり、吹き飛んだストシオンの復興期間、仮設住宅として、グルアテリア側の空いた土地を使う話になったそうだ。


 そこでグルアテリアの勇者として、土地に詳しく手が空いているヘルシュが選ばれたわけだが、人数が人数。

 ヘルシュは案内やら仮設住居の準備やらで、かなり忙しくしているようだ。


「お疲れ、ヘルシュ」


「ほんとだよ。しかもただでさえ忙しいのに、フランゲルが問題ばかり起こして……」


「拗ねた表情も愛らしいぞ、もっとよく見せてくれたまえ、アリア!」


「なによ! 心移りするような男知らないわよ!」


 噂をすればなんとやら、フランゲルが最高潮に機嫌の悪いアリアを追いかけ回していた。


 フランゲルの変態発言以来、アリアは大層ご立腹である。

 原因は当然、そんな言動をしたフランゲルである。


 一度ならず二度までも変態発言をしたフランゲルに、アリアはすっかり疑心暗鬼に陥っていた。

 キスまでした恋人と言っていいフランゲルが、クロノ(別の女子)に胸を揉ませろ発言。

 しかも当のアリアは、胸が小さいのを気にしていたと来ている。


 男の欲望のままに動いたフランゲルは、反省どころか何が悪いのかすら理解していない。

 男の性欲と恋愛は別問題であるという、すがすがしいまでの開き直りっぷりだ。


 結果機嫌を損ねたアリアの八つ当たりが、ヘルシュとウォポンにも及んでいるという。


 既に八つ当たりされたあとのようだ。

 ウォポンは光魔法で目つぶしされ、両手で目を覆って、ハイハイハイハイ地面をのたうち回っている。

 いや先に回復かけてやれよと、ルドーはヘルシュをジトリと見つめた。


「フランゲルはアリアさんと、文通作戦でいい感じになってたと思ったのに。ここに来て過去最高に関係悪化してる……」


「文通作戦……あー、フランゲルって、ああ見えて筆まめなんだっけか」


「前に言ってた双子のお兄さん方のアドバイスでね。素直にそれには従うから、よかったよかったと安心してたんですがね……」


 ガハハと笑うフランゲルを、ヘルシュは疲れた目で見つめる。


 連携が必要な時に、フランゲルは連携を正面からぶっ壊すようなことをぶち込み、しかもフランゲル本人は何が悪いか理解していない。

 アリアに恐ろしい剣幕で逃げられているというのに、フランゲルのあの余裕の持ちようは一体何なのだろうか。


 恋愛方面に疎いルドーでも、流石にこれはないと思うのだが、フランゲルの考えが分からない。


「あんなに避けられ始めてるのに、なんであいつあんな余裕ぶっこいて笑ってんだよ」


『思うに、フラれた経験ないんじゃねぇか。あれ』


 アリアを追いかけて走り去ったフランゲルを、ルドーが呆れた視線で見ていたら、聖剣(レギア)がある推測をぶち込んだ。


 沈黙がルドーとヘルシュの間に響く。


「……あっ、確かにそうだ! フランゲルには、女性から真正面から嫌いだって言い切られた経験がない!」


 聖剣(レギア)の発言をゆっくりと飲み込んでいたらしいヘルシュが、これはまずいと冷汗を浮かべた。


「フランゲルは双子のお兄さんたちやご家族が対処してて、知らない間にまずい連中が周囲から排除されてたから……」


「マジかよ。過保護もそこまでいくと……いやでも第三王子で切り捨てられない勇者だから、そうするより他ないのか」


 ルドーは一瞬呆れ果てそうになったが、考えを改めた。


 フランゲルはシュミック王国の第三王子だ。

 さらに女神に役職を授けられた、国を守る勇者。


 愛人生まれながら家族関係は良好で、バカさ加減すら可愛がられているのもあってか、家族が知らぬ間に厄介な相手を排除し続けていた。


 フランゲルに非はないが、そうしないと国として付け込まれる可能性があるため、当然の措置である。


 愛人生まれで第三王子の勇者という立場では、フランゲルは母国では思惑や下心のある相手ばかりが集まって、無欲な人間との接触経験が家族以外にない。

 幼馴染のヘルシュとでさえ、グルアテリアとシュミックという、友好国の思惑があって始まった関係だ。


 それはフランゲルが以前、自分自身で溢していた話。


 家族は当然フランゲルを可愛がっていて拒絶なんかしない。

 なので初めて出来た純粋な恋人であるアリアが、拒絶する可能性なんて、フランゲルは夢にも考えていないのだろう。


『なるほどな。両想いだし、ここからフラれる可能性なんて知らねぇから、あんなに余裕ぶっこ抜いてると』


「……ヘルシュ、これも双子のお兄さんに相談案件なんじゃないか?」


「恋愛面は自力で何とかしたがってるけど、こっちにも影響(八つ当たり)あるし、そうしますわ……」


 頭を悩ませるように俯いたヘルシュの肩を、ルドーはポンと軽く叩いて労う。


 ただでさえグルアテリアとランタルテリアの合併で忙しいのに、友人関係にまで振り回されているヘルシュに、ルドーは何となく親近感を覚えていた。


 連携していかなければならないのに、逆に連携が分裂されかねない状態。

 裏に回ってなんとか引き留める努力をしていることを、ルドーは誰かに褒めてほしい気分だった。


「……おい、おい、ルドー」


「ん? あぁ悪い、カイム。なんだ?」


 クロノの様子を見ていたカイムが、盛大な溜息を吐いた後、ルドーの方に呼び掛けていた。


 気疲れを振り払うように頭を振った後、ルドーはカイムの方に向き直る。


「朝騒いでだ例のあれ、あんま気負って考えるんじゃねぇぞ」


「あぁー、忘れてたのに……」


「あ? あー……クソ、そいつぁ悪かったわ」


 がっくり肩を落としたルドーを見て、カイムが申し訳なさそうにボリボリと頭をかいた。


 カイムの言葉に思い出した朝の食堂での騒動に、ルドーは思いを馳せる。

 発端は食堂で、キシアとアルスに駆け寄って騒ぎ始めた、発光する魔人族ザックとマイルズだ。


「姫様! 王子様! この書類に書いてあるリスト、どれがいいと思う?」


「書類のリスト?」


「なんか色々、脈絡なく書かれてるけど……なにこれ?」


 ザックとマイルズがそれぞれ手に持って指差した紙を、キシアはきょとんと見つめ、アルスは受け取って眺めていた。

 横にいたトラストも何だろうと読み上げ始めたのを、ルドーはリリアとエリンジと朝食をとりながら、少し気になって聞き入っていた。


「ポルポッテ、ノラミクナ、ドントレスタ、ボラキミル……訳が分かりませんね、なんでしょうか、これ」


「アーゲストさんから事前に連絡!」


「この中でいいのがあったら、声を聞いてほしいって連絡!」


「あぁ? アーゲストの事前連絡だぁ?」


 トラストに答えたザックとマイルズに、魔人族の当事者カイムも、何事だといつもの机から声をあげて噛み付く。


「詳しい説明は今日来る、説明するって言ってた!」


「はぁ!? 今日来るだぁ? 聞いてねぇぞ!」


「別に好きな時に来ていいでしょ、カイム。お前の許可なんていらないはずだけど?」


「だああああ!? 急に背後に立つんじゃねぇ、アーゲスト!」


 カイムが背後に現れた白髪長身狐目のアーゲストに、驚いて椅子から転げ落ちていた。


「お疲れ、アーゲスト」


「クロノちゃんもおひさー」


「「「アーのおじちゃん!!!」」」


「だからおじちゃんはやめてね」


 ぶっ倒れたカイムも放置して、クロノが三つ子と一緒にアーゲストに軽く声をあげている。

 アーゲスト三つ子に手を振った後、倒れたカイムを上から見つめた。


「丸くなってきてはいるけど、同時に隙だらけになってきてないか、カイム?」


「うるせぇな! なんの用事だよ!?」


「アーゲスト、あれ何の騒ぎ?」


 カイムの横にいたクロノが、ザックとマイルズが持ち込んだ、アルスたちの書類を指差す。


 当事者のアーゲストが現れて、ザックとマイルズは大袈裟に両手を振っている。

 キシア、アルス、トラスト、一緒にいたビタも、説明を求めるように顔を向けていた。


「なんだろな、あれ」


『最近は捕まってた魔人族の搬送もねぇのに。何の用事だかね』


「アーゲストさんって忙しくしてるんでしょ? なのにわざわざ来たってことは……」


「魔人族側で何か問題が発生したか」


 わざわざ魔人族のまとめ役のアーゲストが現れ、ルドー、聖剣(レギア)、リリア、エリンジは、一体何だろうじっと注視していた。

 なにか厄介事があるならば協力しようと耳をそばだてていたが、事態は予想の斜め上だった。


「いやぁ、魔人族の国、じゃあなんか味気ないから、正式な国名称を決めろって話になって。それでいろいろ意見聞いて回ってる訳よ」


「国の名前だぁ?」


 話を聞いたカイムが顔を顰め、クロノが面倒くさそうに天を仰ぐ。

 盛り上がりそうな話題だが、当事者の魔人族たちはあまり興味なさそうだ。


 一方意見を聞かれていたキシアとアルスは、手に持っていた書類に慌てて視線を戻した。


「貴方たち! そんな重大な決定を、しれっと私たちに決めさせようとしないでくださいまし!」


「危ないな、適当に選ぶところだったよ」


「問題ない! よくわかんないから!」


「良い感じの音で決めろって言ってた!」


 ザックとマイルズにキシアとアルスは抗議を上げ始めたが、当の二人はビカビカと青白く発光しつつもそう答えた。


 魔人族は今まで、中央魔森林の中で暮らしてきた。

 祖先が中央魔森林に追放された者たちの集まり。

 人知れずひっそりと暮らしていて外交も何もないので、国としての概念をあまり持ち合わせていないのだろう。


 あまりにも雑な魔人族の国の名前の決め方。

 多分外交としては必要なので決めてほしいと、同盟国連盟にでも言われたので、渋々決めようという話にでもなったのだろう。


 切羽詰まった問題ではなかったものの、それもそれでどうかとルドーがじっと見つめていたのが良くなかった。


「もうこうなったらいっそ、外部の人間に決めてもらうのも手かな」


 そう言ったアーゲストに、その場に居たルドー、リリア、エリンジは顔を見合わせる。

 キシア、アルス、トラスト、ビタは、責任の重さをひしひし感じるように冷汗をかき始めた。


「人間に決めさせるだぁ?」


「ほら、俺たち人間の世情には疎いでしょ。だから最初から詳しい、信頼できる人間に任せた方が良い結果になるかなって」


「こいつにこれ以上重圧掛けるんじゃねぇよ」


 アーゲストの発言に、カイムはクロノを庇った。


 歌姫という重圧を抱えているクロノに、これ以上無関係な責任を押し付けたくない。

 そんなカイムの考えを理解するように、アーゲストはやれやれと首を振った。


「俺としては恩義ある相手にって思ったんだけど。カイムがそう言うなら、そうだなぁ――――」



 ――――そう言ってヒタリと、アーゲストの視線がルドーを捕らえたのだった。



「魔人族の国の名前なぁ……」


「んな重く考えんな。適当でいいんだよ、適当で」


「いやいやいや、適当じゃダメだろ」


 考えるように空を見上げたルドーに、カイムがジト目で赤褐色の髪をわさわさと揺らす。


 ルドーもまた、魔人族のライアを保護し、中央魔森林に潜伏していた鉄線から、誘拐されていた魔人族たちを助け出した。

 アーゲストの指摘する、恩義ある相手に、ルドーも該当している。


 助けてくれた相手だからこそ、真剣に考えてくれるだろうという信頼。


 アーゲストだけでなく、カイムやボンブやキャビン、三つ子にザックとマイルズ。

 そして里に戻った、助け出した魔人族たちも納得した人選。


 ルドーは他の魔法科と相談しながら、魔人族の国名をどうするか、悩みに悩んでいる。


「そっちも国名問題は厄介そうっすね……」


 ルドーとカイムとの会話を聞いていたヘルシュも、またがっくりと項垂れる。


 合併したグルアテリアとランタルテリア。

 そのままの名前では、どちらにも禍根を残す。


 かといって二国に分裂する前の名前でも、また同じ末路を辿るのではと、ランタルテリア側に不安が生まれる。


 なので新しい名前を考えるという話になったそうだ。


 ヘルシュはルドーと違って、王族や聖女、ランタルテリア側とも話し合っているらしい。

 似ているようで違う立場だが、悩みの元は同じというわけだ。


『どうせならかっこいい名前つけてやりてぇもんだよな』


「毎度毎度、勝手に必殺技の名前叫んでる奴が言うと説得力あるな……」


『こういうのは案外ノリだ。それに名前がないのとあるのとじゃ、気合いの入り方も違うからな』


「国の名前に気合いねぇ……」


 パチパチと弾ける聖剣(レギア)に、ルドーはまた天を仰いだ。

 魔人族の国の名前の決定。


 当事者たちより重圧を感じるそれに、ルドーは現実逃避して忘れていたわけだが、いつまでも逃げ続けることも出来ない。


 名づけの方法、何かいい考えはないかと思っていた時、ルドーはふと思いついた。


「……やっぱクロノに聞いてみるか」


「あぁ? だから余計な責任は……」


「責任は取らせないって。ただ、こういうのは聞こえる単語の音も気になるし、歌のフレーズが参考になるかなって」


 歌に対するトラウマに、別方面からのアプローチは出来るか。

 ルドーが抱える問題と、クロノのトラウマ対策を同時に扱える方法に、声をあげていたカイムは、怪訝そうに眉を吊り上げた。


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