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帰還

完走してから加筆修正推敲します。

誤字脱字衍字の報告はこれそうかな? くらいのものでも送ってくださると助かります。


お待たせしました。今日はもう一話更新します



 遺跡を出ると、西の空がうっすらと赤く染まり始めていた。

 体感よりも、多くの時間遺跡内部に居たらしい。


 全員が外に出ると、リュイが出迎えてくれる。


 「リュイ、ただいま」


 リュークはリュイの頭を撫でつつ、体に異変がないか確認しているようだ。


 (……警備の人がいない?)


 それだけではなく、リュイ以外の生物が近くにいない。

 と言っても、魔力がギリギリな為探知の範囲はいつもよりかなり狭くはなっているのだが。


 (いや、それにしてもおかしい)


 遺跡関連はかなり重要な案件で、その警備がいなくなると言うのは相当な緊急事態の可能性が高い。

 それこそ街が滅びかねない程度の事が無ければここを放置するのはあり得ないだろう。

 中で遭遇しなかったと言うことは、欲に目が眩んで遺跡に入ったわけではないはずだし。


 「……早く戻ったほうがいいかもしれないわね」


 レアも同じ考えに行き着いたようで、そう呟く。


 「うん、何かあった可能性が高そうだ。……ごめん、リュイに乗せてもらっていいかな、僕の足に合わせると遅くなるし」

 「大丈夫です! グレンも乗って」


 レアに同意し、リュイの背中に乗せてもらう。

 グレンも足を負傷しているため、同じくリュイに運んでもらうことになる。


 「行きましょう、ちゃんと捕まってて下さいね」










 「……っ」


 少しでも体を休める為にリュイに箱を固定して横になっていたが、横を歩いていたレアが息を呑む。

 そろそろ街が見えてくる距離のはず。

 体を起こし、レアの視線の先に目を向ける。





 「え?」


 思わず目を疑った。


 破壊された壁。

 包囲する様に配置された8体のゴーレム。

 煙の上がる家々。

 夥しい量の魔物。


 そこには、今まさに攻め落とされそうになっている、6年間過ごした街があった。



 ———怖い



 「……流石に、戻らない方が良さそうね。私達にあの状態からどうにか出来るものはないし……」


 僕が目の前の光景に固まっていると、レアの呟きが聞こえてくる。



 ———嫌だ。



 「……ですね、死にに行く様な物だと思います」


 リュークも少しの沈黙の後、レアに賛成した。



 ———何で。



 「……っぁ、待ってください! 家族がいるんです! 戦わず、助けに行くだけでも……」

 「そうよ! まだ皆がいるはずなの!」



 耳鳴りがする。

 視界が赤く染まっていく。

 頭が割れるような痛みがする。

 体に魔力が満ちていく。



 数十の魔物と激戦を繰り広げるノベク。


 傷付きながらも、魔物と戦いながら人を誘導しているマイラさん。


 八匹のワイバーンと殴り合うホーガンさん。


 狼の魔物に腕を食いちぎられる名も知らぬ冒険者。


 魔物たちから我先にと逃げ出している人々に蹴られる少女。


 流れる血。



 ———殺せ。



 「行こう」

 「ソラ!? わかるでしょ、今は……っ」


 僕の顔を見て、レアは言葉に詰まる。


 「…………わかっ、たわ」


 そして、そう絞り出した。


 「リューク、グレンとエントルとアリアをギルドに連れてって。レアとジウ、リーシェは僕に着いてきて〈浮遊〉」


 リュークの返事は聞かず、自分と三人に浮遊を掛け飛び立つ。






 ———殺せ。


 なぁ?


 憎いだろ?


 俺(・)から家族を奪って行った人間共(奴ら)が。

 俺(・)から居場所を奪って行った人間共(奴ら)が。

 俺(・)から居場所を奪って行く奴らが。

 見ている事しか出来なかった自分が。


 殺せ。




 浮遊は一定の方向に浮いたまま進めるものの、速度は余りでない。

 それでも、魔物達が大勢いる地上よりは安全だ。

 ワイバーンも、今は地上で戦っているから。


 空を進んでいると、眼下に広がる光景がよく見える。

 逃げ遅れた少女。

 それを守る冒険者。

 逃げ出した先で襲われる人々。

 壁で見えなかった所や奥側など、至る所で魔物が人を襲っている。


 「この辺、かな」


 丁度、街の中央辺り。

 図書館の屋根の上に降り立つ。


 「……何、するんですか?」


 少し遅れて降りて来たジウが、尋ねてきた。

 リーシェも不安そうに見つめているが、すぐにわかる事だし、時間が惜しい。


 「ジウは魔法の強化をお願い」

 「え? いや、あの」


 「魔よ 獣よ 人間よ 贖え 償え 罪に焼かれ 裁きに掛かれ 地獄の炎よ 報いを与えよ〈業火〉」


 唱え切ったその瞬間。

 血色の炎が身を包み、僕を焼く。


 「ァッ、ァぁああああっ!!」


 痛い。熱い。

 全身を焼かれる痛み。

 内蔵を雑に混ぜられる様な不快感。

 四肢を貫く様な鋭い痛み。

 誰かの怒り。

 誰かの妬み。

 誰かの恨み。

 誰かの呪い。

 誰かの殺意。

 誰かの痛み。


 その全てが、僕を焼く。


 「ジ、ウっ! 早く!」


 痛みを食いしばって堪えつつ、ジウを睨みつける。

 怯えた様に詠唱を始めるが、既にその声は聞こえない。




 ……そろそろ意識も遠のいて来た。

 視界は既に白、赤、黒の三色に染まり、周りを見る事はできない。


 あれからどのくらい経っただろう。

 でも、そこまで経ってないんだろうな。

 途中から痛みが強くなったことから、ジウはちゃんと応えてくれたんだろう。


 視界が黒に堕ちていく。








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