反省会
「さて、Bランクパーティー昇格、リューク君のCランク昇格のお祝い、反省会を始めましょう」
「そうだね」
「はい!」
買い出しを済ませた二人と合流し、初依頼達成の打ち上げでも来た居酒屋まで来た。
レアが仕切り、反省会が始まる。
「楽しい気分で終わりたいし、先に反省会をしましょう。まずは私から。……ソラに頼りすぎてしまって、ごめんなさい。リューク君にも負担をかけてしまって、ごめんなさい。……もっと、慎重に行くべきだった」
そう言って、深々と頭を下げる。
「いや、寧ろあの時は僕から提案したんだ、謝るべきは僕だよ。……ごめん。もっと二人を頼るべきだった。多分、慢心があったんだと思う」
「ワイバーンは任せる」って言ったのは僕だし、レアはしっかり役目を果たしてくれた。
リュークも僕がレアの方に行くようにお願いしたんだし、全面的に悪いのは僕だ。
一人で出来ると勘違いして、僕だけが危機に陥るならまだしも、レアも危険に晒してしまった。
「俺は頼られて嬉しかったですよ、それに、俺もお二人に意見しませんでしたし……俺のせいでもあります」
「リュークは悪くないよ。チームに入ったばかりでメンバーに意見出来る人なんてあんまりいないと思うし」
それに、リュークは僕らよりも歳下だ。
冒険者歴も僕らの方が長いだろうし、とても言い辛い環境だったと思う。
「それでも、俺はパーティーメンバーなので意見するべきでした。すみませんでした」
「パーティーメンバーだから」と言われると、反論し辛い。
僕が掛ける言葉を探していると、レアが口を開く。
「それに……ソラが倒れてる時、私、体が全く動かなかった。冒険者として、最悪の事態は想定しておくべきだったのに……」
「それは、僕が」
「あぁもう! ソラさんは全部自分のせいだって思ってるのかもしれませんけど! ソラさんはあの魔熊を倒した功労者で、沢山の人を助けたんですから、次はもっと慎重に、俺とレアさんを頼る。それでいいじゃないですか! 俺は後は任せたって言ってもらえるように頑張りますから!」
僕の言葉を断ち切って、リュークが叫ぶ。
「でも……」
「そうね、私もソラにそう言ってもらえるように頑張ることにする。……反省会は終わりにして、お祝いしましょ!」
「はい!」
リュークの主張にレアが賛同し、そのまま反省会は終わってしまった。
(……切り替えよう)
リュークの昇格も、パーティの昇格も嬉しいことだ。
せっかくのお祝い事なのだから、暗い雰囲気のままでは勿体無いし、失礼だろう。
「うん」
「はぁ……」
(僕がもっとちゃんとしてれば……)
お祝いが終わり、辺りは既にすっかり暗くなった。
風に当たる為に外に出ると、中とは打って変わって静かになる。
「おや? ソラさんではありませんか?」
すると、声をかけられた。
そちらを見ると、ヴァルトさんが立っており、こちらに微笑みかけている。
「こんばんは」
「やはりそうでしたか。どうしました? こんな夜更けに」
「少し風にあたりたくて。特に何かあったわけではないですよ。……ヴァルトさんは?」
質問に答え、質問を返す。
「私は軽く散歩を。…………そんなに暗い表情をしていれば、誰でも気になりますよ」
僕の質問に、ヴァルトさんは動きやすそうな服装を見せつつそう答え、数秒の沈黙の後、僕の顔を見ながら言った。
「僕、そんな酷い顔してます?」
「ええ」
すぐにそう答えたヴァルトさんに驚きつつ、顔を触る。
自分では、そこまで顔に出ていたつもりはなかったのだが。
「話せることなら、私に話してみませんか? 悩み事であれば力になれるかもしれませんし、そうでなくとも何か築けることがあるかもしれません」
「……そう、ですね。では——」
「——という感じです」
折角だからと、反省会の事と一昨日の事を話すと、ヴァルトさんは真剣に、時折相槌を打ちながら最後まで聞いてくれた。
聞き終わったヴァルトさんは少し考える素振りを見せると、言い辛そうに、少し困ったような表情で顔を向ける。
「……ソラさんは、全て自分でなんとかしようと考えているのでは? そうでなくとも、仲間は守るものだと思っているのでは?」
「え?」
「私は……お恥ずかしながら、パーティーの中だと一番弱い。しかし、パーティーメンバーからは頼られていると思いますし、役に立てていると思っています。年長者ですし、自分の役割があって、その役割を全力でこなしているからであり、それを誇りに思っています。ソラさんはサポートが本業でしょう? 仲間を手伝ったり、協力したり、必要があれば助ける必要はありますが、全ての責任を負う必要があるわけではありませんよ」
「全ての責任を負う必要はない……ですか?」
「ええ。一人の力には限界がありますし、それぞれが自分の力を持っているのですから」
そう言ったヴァルトさんは本当に誇らしそうで、優しげにこちらを見ていた。




