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昇格



 魔熊と戦ってからはや二日。

 僕らはギルドの手伝いや常駐依頼をしつつ、事情聴取をされ、やっと終わったかと思うと例のAランク冒険者の男性から引き抜きの打診をされたりと、かなり心労が溜まる二日間だった。


 事情聴取では僕らが倒したことを認め、他の冒険者達の協力もあって討伐に成功した……となった。

 魔法に関しては暈(ぼか)したが、冒険者が奥の手を隠したところでどうこう言われる筋合いはない。

 事情聴取に来たのは貴族や教会の人間だったが、彼らにも秘密や奥の手の一つ二つがあるのだから。


 Aランク冒険者の男性は、ホーガンさんと言うらしい。

 事情聴取が終わり休憩していると「お前凄いなぁ!」と声をかけられ、そのまま「俺のパーティーに来ないか?」と誘われた。

 かなり高待遇なのは間違いなく、レアも一緒に入れてくれるそうだったが、そもそも目的が『Aランク冒険者になる』ではなく、『ノベク達を見返す為にAランク冒険者になる』なので、自力でならないと意味がないと思い、お断りすることにした。

 仮に入るとなればリュークを置いていくことになってしまうし、ノベクを入れることも出来なくなってしまうのもある。

 残念そうではあったが、思っていたよりもかなりあっさり引いてくれたので助かった。


 今はマイラさんに朝焼けの空名義で呼び出された為、三人揃ってギルドで待っている状態だ。


 「ソラさん! お待たせしました!」


 リュークと軽く会話していると、マイラさんがパタパタと駆け寄って来た。


 「大丈夫ですよ。それで、用件とは?」


 「はい! 三つありまして、まずはおめでとうございます! ギルドの規定を超えた為、朝焼けの空はBランクパーティに昇格しました!」


 そう言いながら、笑顔で両手をパチパチと叩いている。


 「やったわね」

 「うん」


 既に経験している為、上がったというより戻って来たという印象が強いが、嬉しいことには変わりない。

 レアの喜ぶ声に同意しつつリュークを見ると、微妙な表情をしていた。


 「どうした?」


 「……あ、はい。大丈夫です。お二人が殆ど動じていなかったので喜びにくかったと言いますか……」


 (確かに、一人だけ諸手を挙げて喜ぶのは恥ずかしいか)


 「いや、僕も結構嬉しいよ? 元々Bランク冒険者なのと、2回目だから慣れてるってだけで」


 「なるほど」


 納得したように声を出すと、リュークは笑顔になった。


 「……反応が薄めですね……。では、二つ目。リュークさんのランクがCに昇格する事が決まりました! おめでとうございます!」


 そう言いつつ、マイラさんはリュークの新しいギルドカードを手渡す。


 「おめでとう、リューク」

 「リューク君おめでとう!」


 「ありがとうございます!」


 笑顔で祝うと、リュークは嬉しそうにカードを受け取った。


 「昇格の主な要因は、やっぱりあの魔熊の時の活躍ですね。運び屋をして被害を最小限に抑えた事を評価された感じです」


 あの時は僕もかなり助かった。

 リュークがいなければ、僕は死んでいたかもしれない。


 「……さて、お祝い事はこの二つです。もう一つは仕事の話ですね」


 態々直々に来るってことは、大事な案件なのだろう。

 Aランクに行かずに僕らに来るってことは、僕らに関係があるもの。


 (……あれか)


 紅蓮の剣の面々と見つけた、遺跡の探索だろうと予測をつける。


 遺跡とは、過去の文明の建物の事で、高度な技術があった形跡があり、出土品も今では再現出来ないものや効果が著しく高いもの等かなり重要で有用なアイテムが眠っている可能性が高いが、大抵は魔物に占拠されていたり、破壊されている。

 重要度が高く、冒険者ギルドとしても国としても発見次第報告して貰いたい。

 しかし、獲得物を取り上げる様では、報告されなくなってしまう可能性が高く、もし報告されないまま見つけた冒険者が探索し死亡した場合、その存在がわからなくなってしまう。

 そうならない様にと、第一発見者に探索の優先権があることになっているのだが、Cランク以下のパーティが発見した場合、Bランク冒険者二人以上又はAランク冒険者一人、若しくはBランク以上のパーティーを指名して一緒に探索しにいくことになる。

 おそらく、紅蓮の剣の面々が僕らを選んでくれたのだろう。


 「おそらく予想通りだと思いますが、遺跡の探索です。紅蓮の剣が同行パーティーに朝焼けの空を選びました。断る事も出来ますが……」


 「もちろん受けます。リュークもレアも、大丈夫だよね?」

 「ええ」

 「はい!」


 「という事なので」


 二人ともいく気満々だ。

 未発見の遺跡の探索など出来る機会なんて殆どないし、それこそ大怪我があったとかでなければ誰であってもいくだろう。


 「わかりました。紅蓮の剣には伝えておきます。日時は……明日からで大丈夫ですかね?」


 「大丈夫?」

 「大丈夫です!」

 「勿論」


 二人も明日で大丈夫なようだ。

 その様子を見ていたマイラさんが、口を開く。


 「大丈夫そうですね。後は……あぁ、そうだ。幻想峡谷でゴーレムの目撃情報があり、調査隊を派遣していますので、近づかないようお願いしますね」


 「ゴーレム? 僕らが戦ったのと同じですか? 発見者は?」


 「聞く限り特徴は一致していますね。発見者は……とあるCランクパーティーです」


 聞き返すと、マイラさんは答えてくれるが、発見者の所を濁した。

 本人達が言わないようにと口止めしているか、言い辛い相手なのか。


 (……もしかして)


 「ノベク達ですか?」


 そう聞くと、マイラさんは露骨に目を泳がせた後、息を吐いてそれを認める。


 「あー、はい。その通りです」

 「無事なんですか!? 怪我とかは!?」


 思わず体を乗り出すと、マイラさんは焦ったように声を出す。


 「落ち着いて下さい! 無事ですから……多少傷はありましたが、殆ど浅いものでしたよ」

 「ソラ! 落ち着いて」

 「ソラさん!」


 「よかった……すみません、取り乱して。レアもリュークもごめん」


 ホッと息を吐きつつ、自分の行動を振り返り謝罪する。

 仮に重症だったとしても、調査隊が既に派遣されていると言うことは最低でも2~3日は経っている。焦っても無駄だ。


 「いえ、大丈夫です。……それでは、仕事に戻りますね」


 「はい、ありがとうございました」

 「お疲れ様です、マイラさん」

 「ありがとうございました」


 マイラさんにお礼を告げてから、レアから声を掛けられる。


 「じゃあ、明日に備えての準備と……出来てなかった反省会、しましょうか」


 「先に準備……かな」


 「了解です!」


 「なら、三時間後集合ってことで」



 僕がそう言うと、レアとリュークがギルドを出て行く。

 僕の準備は殆どない。

 必要なものは常にある程度収納に入れてあるし、この二日間で買い足しもした。

 昨日武器屋に顔を出した時にはリュークの剣もまだ掛かると言っていたし、特に今から用意することはないだろう。買った既製品の剣を消耗品のように扱った事も謝罪したが、自分の身や人の身を守るためなら仕方ないと許してくれた。


 (図書館にでもいくか)


 情報は集めておいて損はないだろう。




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