原初の焔
更新不定期になります。
それと書くだけ書いて掲載しなかったプロローグを試しに置いてみたので、話数がズレています、ご了承ください。
「ここ、は……?」
「ソラさん! よかった!」
目を開けると、リュークが見えた。
床が地面じゃない事と、周囲に先ほど治した怪我人が多くいる事から、テントの中だろうと思う。
「リューク、どうなった!? レアは無事!?」
起き上がりつつリュークにそう捲し立てると、聞きたい事を教えてくれた。
僕が魔熊に吹き飛ばされた直後、リュークとリュイが運んでくれたAランク冒険者が間に合ったらしく、レアも無事らしい。
今はそのAランク冒険者が戦っている状態で、僕のことをリュークとリュイが運んでくれたらしい。
「ありがとう」
「いえ、遅れてすみません」
遅れたと言うが、Aランク冒険者を運ぶのも間に合っているし、僕も死んでいない。
ギリギリではあるが、寧ろよく間に合わせてくれたと思う。
「……どのくらい寝てた?」
「数分ですね。……もしかして、今から戦いに行くつもりですか? 流石に無茶ですよ! その傷じゃあ!」
「大丈夫、流石に近距離でやりあうわけじゃないから」
制止するリュークに説明し、起き上がる。
未だに痛みはあるが、あの熱は引いたし、動けない程ではない。
「…………勝算はあるんですか?」
「うん。ある」
(あの夢の魔法……あれを、僕は知ってるはずなんだ)
あれは、嘗て勇者が使ったとされる、炎の魔法。
誰かを守る為の炎。
「誰かを守る」為に使わなければ、自身を焼く諸刃の剣。
しかし、その分強力で、あの魔熊も焼けるはずだ。
「……はぁ。レアさんにもソラさんが起きたら連れてくるように頼まれてます。わかりました、行きましょう」
リュークはそう言って、立ち上がった。
僕もそれに続いて立ち上がる。
「〈生命活性〉〈治癒〉」
気休め程度に治癒魔法も重ね掛けし、リュイに乗せてもらう。
(……後でまた、お礼しないとな)
魔熊と戦っていた所まで来ると、男性が魔熊と取っ組み合いをしていた。
ダメージは与えられていなさそうだが、動きを封じている。
彼がAランク冒険者だろう。
「ソラ! 大丈夫なの?」
「うん」
リュークと一緒に降りると、レアが駆け寄ってきた。
話を聞くと、Aランク冒険者の男性はずっと組み付いているらしく、出来ることがないようだ。
「で、どうするんです?」
なにも言わずに連れて来てくれたリュークが、なにをするからどうすればいいのかを問う。
隠す必要も感じない為、作戦に必要な分は全て話す。結局見せる事になるしね。
リュークとレアに、夢を見た事、そこで〈原初の焔〉について思い出した事を話し、嘗て魔王すら圧倒した魔法なら魔熊にも効果があるだろう事、敵意を持っていない相手は当たっても問題ない事を説明する。
「……本当に大丈夫なんですか? 結構胡散臭いんですけど」
リュークの言うことももっともだろう。
僕も、いきなり「夢で物凄く強い魔法教わったから多分倒せる!」と言われれば、「は?」となるとは思う。
「……リューク君、離れましょう」
しかし、レアは疑う様子もなく、困ったように眉を顰めるリュークと共に僕から離れる。
その青い目はまるで何かを考え込んでいるようで、目の前のことに集中しているようには見えない。
(なにを……いや。今は違う)
余裕が生まれると他のことを考えようとしてしまうのは、僕の悪い癖だ。
今尚目の前に敵がいるのだから、集中しないと。
「……よし」
これ以上被害を出させない為に。
あの魔熊を殺す。
———sideリューク
変化が訪れたのは、レアさんに連れられて俺が離れてから、数十秒後の事だった。
目を閉じたソラさんの周囲に、赤い、可視化している魔力が漂い始めた。
最初は凄く小さい物だったが、時が経つに連れて広く大きくなっていく。一分も経てば、まるで一つの大きな炎のようになっていた。
(本当に?)
ソラさんは凄い。色々な事をこなせるし、何より強い。会ってまだ間もないけれど、尊敬している人だ。
それでも、いきなり「夢で勇者の魔法を思い出した」なんて言われた時には、吹き飛ばされた衝撃で頭がおかしくなったんじゃないかと思ったけど、どうやら違ったらしい。
その炎は威圧感と共に勢いを増し、今は魔力のはずなのに、既に焼けるような熱を感じる。
それだけで、普通の魔法じゃないことは明らかだ。
思わず見つめていると、ソラさんが赤く光る瞳をゆっくりと開き、詠唱を始める。
「炎よ 古よ 源よ 我が願うは原初の力 神から授けられしは始まりの火種 今ここに、太古の地から甦らん〈原初の焔〉」
その瞬間、漂っていた魔力の奔流が集まり、熊の魔物へと殺到する。
「……なにも、起こらない?」
呟いたその直後。
魔物の立っている地面に、天まで届くような火柱が立った。
かと思った次の瞬間にはその炎は広がり、Aランク冒険者の男性も巻き込んで燃え盛る。
その炎は神秘的で、ずっと見ていたいと思わせるような魅力があった。言葉では言い表せないが、「神様から授かった魔法」に相応しい、そんな光景。
その炎が消えると、そこには男性しか立っていなかった。
魔物は跡形もなく消えており、かけらも残っていない。
ソラさんの方を見ると、傷を押さえつつ少し疲れたのか、フラフラとよろけていた。
すぐに気が付いたレアさんが駆け寄って支え、それにお礼を言っている。
俺は、体が動かなかった。
ソラさん達の方に、近寄ろうと思えない。あの魔法を使った術者だから、怖いのだろうか。
「リューク、帰りもお願い出来るかな」
そのまま動けないでいると、ソラさんが話しかけて来た。
引け目を感じているような、恥ずかしがっている様な表情で頼んでくる。
(……なにも変わってない。ソラさんは元々凄い人だってわかってたじゃないか)
深呼吸して、口を開く。
「はい。勿論です」
「ありがとう」
気付けば体は動ける様になっていて、Aランク冒険者の男性が合流し、ソラさんと軽く会話をしている。
なにも変わってない。
変わったことがあるとすれば、俺は今日の事を、一生忘れないだろうと言う事くらいだろう。
話を一部カットしたせいで若干不自然になった気がする……




