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各個撃破



 「あれを狙おう」


 そう言って、他の魔物と戦っている冒険者に気を取られたのか、一体だけ他のワイバーンと離れている個体を指差す。

 離れていて都合がいいのはそうだが、そのワイバーンの進行方向に他の魔物と戦っている冒険者達がいるのだ。


 (急がないと)


 少し焦りつつ、敵の位置の把握に努める。


 「了解です」

 「リューク君、お願いね」


 レアがそう言うと、リュークはリュイと共に冒険者の集団に向かう。

 一番機動力のあるリュークとリュイに、情報伝達役をお願いしたのだ。



 そのまま警戒していると、リュークがその場から急上昇した。

 それは伝達が完了し、ある程度避難が終わった時の合図で、〈探知〉からも冒険者達が離れていっているのが伝わってきている。


 「〈戦場〉 後はよろしく」


 ワイバーンと自分、レアだけを範囲に入れ、閉じ込める。


 そのワイバーンはエント村に向かう途中にいたものよりも大きく、角は小さかった。

 目算体長は7mくらいだろうか。


 ワイバーンは僕らを視認したのか、羽ばたいて距離を詰めてくる。


 「炎よ、かの敵を滅ぼせ〈炎滅〉」

 「〈土壁〉〈落雷〉」


 避けようとしたワイバーンの真下に壁を作り、下の逃げ道を塞ぎつつ、上からも攻撃を放って牽制する。

 痺れてくれれば尚良しだ。


 ワイバーンはそれを見ると、角を青く光らせる。

 おそらく、あれは魔力を溜めているのだろう。人の詠唱みたいな役割なんだと思う。


 何をしてくるのかと警戒していると、ワイバーンは『GAAAAAAAA!!!!!』と耳が痺れる程の咆哮をした。

 その咆哮と共に、周囲を囲っていた〈戦場〉の壁が割れる。


 「っ……」


 炎の奥をよく見ると、角の光が収まっていた。

 つまり、魔法を発動したのだろう。


 (僕らには衝撃が来なかったって事は……魔力にだけ影響があるタイプの魔法か?)


 ただの咆哮で割れる程、〈戦場〉の壁は脆くない。

 そう言う用途に特化した魔法か、使用者の魔力以上の威力を叩き込まなければ割ることは不可能なはずなのだ。

 咆哮に魔法を合わせたのか、咆哮自体が魔法だったのか。

 どちらにせよ、今何かが変わるわけでもないのだが。


 そんなことを考えている内に、ワイバーンはレアの〈炎滅〉によって体を焼かれる。

 諦めたようにその場から動かず、僕らをじっと見つめていた。


 (〈戦場〉を割ることになんの意味があったんだ……? 避けようとする素振りすら見えなかったのに……)


 基本魔物には仲間意識が薄い。

 弱い魔物で同族ならあるが、ワイバーンクラスなら皆無のはずだ。

 今考えれば、魔物がこれだけ集まっているのにも関わらず、魔物同士の争いはなかった気がする。


 「もしかして……。〈探知〉」


 嫌な予感に思い当たった直後、状況確認の為に〈探知〉を発動すると、その予感が当たったことを教えてくれる。


 その方向に視線を向けると、それが見えた。


 こちらに向かって飛んで来ている3体のワイバーンと、それに運ばれている巨大な熊の魔物。

 その眼は僕らを見据えており、完全に、僕とレアを狙っているのがわかる。


 「魔力での、情報伝達……」


 レアが呟く。


 各個撃破は、させてくれないらしい。





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