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もっと頼って




 「うーん……」


 「どうしたの?」


 翌朝、早くから魔法の練習をしていると、レアが宿から出てきてそう言った。

 なんとか形を整えることには成功したのだが、遠隔で動かすことが難しく、浮かばせられていないのだ。

 浮んだとしても、すぐに制御を離れてしまう。


 「いや……何でもないよ」


 「……ねぇ、ソラ」


 特にレアの手を煩わせる程の事でもないし、僕の練習が足りないだけだろうと思いはぐらかそうとすると、レアが真剣な表情になり、僕の名前を呼ぶ。


 「なに?」


 「……一人で考えてばっかりじゃなくて、私を、他の人をもっと頼って? 」


 そう口にしたレアは、悲しげな表情だった。

 そんなに、頼っていないだろうか。

 僕としては、レアを信用しているし頼っている気なんだけど。


 「そんなつもりはないんだけどな……本当になんでもない事なんだよ」


 「どんな些細な事でもいい。一人でなんでも溜め込まないでね?」


 「…………わかっ、た。これからはちゃんと相談するよ」


 そう約束すると、レアはほっとした様に微笑んだ。


 (そんなに伝わってなかったか)


 これからは、もっと伝えることにしよう。


 「うん!お願いね」


 「えっと、今悩んでるのは——」




 「出来た!」


 レアに相談し、二人で意見を出し合って数分後。

 レアの「軌道とか稼働範囲をあらかじめ決めておいた方が制御しやすいんじゃない?」と言う一言で、そう言えばあのワイバーンの盾もある程度制限されている様な動きだったなと思い出し試してみると、数十分で出来てしまった。


 「やったわね」


 「助かったよ、ありがとう!」


 未だ不安定ではあるし、操作も難しくなかなかうまくいかないが、かなりの進歩であることには変わりない。





 その後朝食を取り、3人でギルドに来た。

 全員体調は良好で、今日は問題なく仕事が出来る。


 建物の中に入ると、マイラさんがこちらに駆け寄って来た。


 「ソラさん!」


 「どうしました?」


 「突然で申し訳ないのですが、ソラさん達に指名依頼がありまして」


 そう言って、依頼の紙を渡してきた。

 レアとリュークにも見せつつ、内容を確認する。


 内容はエント村周辺の調査、並びにエント村の住人の警備。

 期間は1日で、僕らの報告を聞いた翌日……つまり昨日に隣町で魔物の襲撃があったらしく、状況がかなり近いらしい。

 その為急いでエント村の住人に避難して貰いたいが、受け入れ準備が整っていないらしく、その間の警護と、僕の〈探知〉で周囲の調査を並行してして欲しいと言う依頼だった。

 Bランク冒険者で且つその周辺には何回か行ったこともあり、住人とも面識があると言うことで、白羽の矢が立ったらしい。


 指名依頼だけあって報酬は高く、受けるに値する価値はあると思う。

 それと……依頼者がギルドだから、達成するとお金だけじゃない利点もある。


 「どうする?」


 「私はいいと思うわよ?ソラに一番負担かかるからソラ次第だけど」


 「俺もソラさんに任せます!」


 「じゃあ、受けようと思います」


 「本当ですか!? ありがとうございます!」


 マイラさんは嬉しそうにそう言って、手続きを済ませる。


 「受け入れ準備が完了し次第、冒険者が向かいますので!」


 「わかりました」









 「それでは、よろしくお願いします」


 「はい」


 村に着くと、事前に話は通っていたようで、スムーズに準備を終えることが出来た。


 「……じゃあ、行き道で話したけど。僕が周りを調べてくるから、レアは村の入り口で、リュークとリュイは上から何かないか警戒してね」


 「ええ」

 「任せてください!」


 リュイも『キュイ!』と返事を返してくれる。

 少し愛着が湧いてくる。


 「それじゃ、何かあったら大きめの魔法打ってくれればわかるからよろしく!〈探知〉」





 (んー、こっちも特に何もない、かな)


 三時間使って東西南の三方向は念入りに調べたが、土が盛り上がっていたり魔物がいたりと言うことはなく、何事もなかった。

 少し静かすぎるくらいだ。

 一度村に戻って、報告と休憩をしてから北もみよう。


 その時、村から北に少し離れたところから、魔法が放たれた。


 (リューク、か? 何かあったのか)


 「〈疾風〉」


 全力で走り、なるべく早く着けるように北に向かう。



 3キロ程を数分で踏破すると、目的地が近付いて来た。

 空を飛んでいるリュークと、倒れている人が二人、その周囲に三人人がいる。


 リュークはどうやら戦闘中らしく、魔法主体で攻めているようだ。

 しかし、〈探知〉に魔物の様な反応が見られない。


 「……ゴー、レム?」


 遠目から見れば、ただの巨大な岩。

 しかし、その岩は動いており、それがリュークと戦っている敵の正体だとわかる。


 「グレン!?」


 リュークは決定打こそ無さそうだが戦えている為、先に周りの人の無事を確認しようと近付くと、そこにいたのは紅蓮の剣の面々だった。

 グレンとジウの意識がない様で、リーシェが必死に回復させている。

 エントルは傷だらけだが周囲の警戒、アリアはリュークの援護をしているようだ。


 「っ、ソラさん」


 「状況は? 手短にお願い〈治癒〉」


 僕に気が付いたエントルに声を掛けつつ、治癒魔法をかける。


 「あのゴーレムと遭遇して戦闘、俺が吹き飛ばされている間にグレンがやられ、アリアを庇ってジウがやられました。そこにリュークさんが助けに入ってくれたんです」


 「わかった。グレンとジウは……ちょっと危ないか」


 グレンは片腕があらぬ方向に向いており、ジウも頭から血を流している。


 (……仕方ない)


 リーシェの側により、肩に手を置く。


 「〈魔力譲渡〉〈生命活性〉〈癒天〉」


 「えっ?」


 集中していたようで、今僕に気が付いたリーシェが驚きの声を出す。


 魔力譲渡は触れている相手に魔力を押し付ける魔法で、効率が物凄く悪く、あまり使いたくはない魔法だ。今のように、手が足りない時は出し惜しみしないが。

 生命活性は元々の生命力を活性化させ治癒を早める魔法で、受けた側が物凄く空腹になる。

 癒天は治癒よりも効果が高い癒属性の魔法だが、代わりに周囲の植物等の生命力も奪ってしまい、ギルドでも教会でも、国でもあまり使用が推奨されていない。それでも、人命に関わる場合は使っていいことになっている。


 「後は任せた」


 「……はい」


 何か言いたげな表情だったが、今は目の前のことに集中することにしたようだ。


 (さて)


 ゴーレムの観察を始める。

 大きさは縦30m程、顔の様なものはなく、いくつかの巨岩が連なっている。


 魔法は使っておらず、巨体を生かした踏み潰し、薙ぎ払いなんかの攻撃をしてくるようだ。

 リュークへは岩や木を投げており、明らかに周囲を把握出来ている。

 更に、魔法か何かでかなり硬くなっているようで、リュークやアリアの魔法が有効打になっていない。


 「戦場」


 (……ダメか)


 ゴーレムは気にした様子もなく、リュークを積極的に狙っている。


 (上、か?)


 空を見上げても、リュークとリュイ、雲くらいしか見えない。

 ……雲か。


 「〈剛力〉〈堅牢〉」


 一先ず補助魔法を掛け、いつでも飛び出せる様に準備する。


 「雷よ、かの敵に天の裁きを〈落雷〉!」


 (いまだ!)


 「〈浮遊〉」


 アリアの魔法と共に自身を浮かせ、上空に行く。

 既製品の剣を取り出し、構える。


 「ソラさん!?」


 「リューク、上だ!」


 ゴーレムが視覚能力がないにも関わらず周囲を把握出来ているのなら、何かが情報を送っていると言うこと。

 〈戦場〉によって魔力は通らない様にしたにも関わらず、ゴーレムは動きを停止する様子もなかった。

 つまり、〈戦場〉範囲内の上空、あの雲の向こう側に敵がいる。


 恐らく、ちょっかいをかけてくるアリアすら先に攻撃しなかったのは、空を飛べるリュークを自由にさせたくなかったんだと思う。


 (っ! )


 直後、ゴーレムが僕らを倒そうとするのをやめ、グレンとジウの方に進む。


 「……リューク、上は任せる!」

 「はいっ!」


 〈浮遊〉を解除し、落下しつつゴーレムの胴部分を狙って剣を投げる。

 当たったところで刺さりすらしないだろうが、術者側からすればそんなことは知るよしもなく、リュークに接近されていればそちらに意識を割かれるだろう。

 なら、防いでくれるはずだ。


 狙い通り、剣の腹の部分を横から叩くことで弾いてくれた。


 「〈土壁〉〈迎風〉」


 腕を振った事で後ろを向いている状態のゴーレムの足場を〈土壁〉で転倒させ、さらに時間を稼ぎつつ風で落下の衝撃を和らげ着地、紅蓮の剣とゴーレムの間に入る。


 「助かりました」


 「うん。〈水刃〉」


 エントルからの感謝を流しつつ、起きあがろうとするゴーレムの関節部分に攻撃をし、動きを妨げる。

 すると、唐突にゴーレムが暴れ出し、地響きがなる。

 上を見ると、リュークとリュイがこちらに向かって来ていた。


 「すみません!逃げられました!」


 「話は後で聞く!〈水刃〉」


 暴れ出したのが敵の逃亡によるものだとしたら、硬くなっていた要因も消えているかもしれない。

 物は試しにと〈水刃〉を放つと、簡単に切断出来てしまった。


 「雷よ、かの敵に天の裁きを〈落雷〉!」


 アリアの雷は、ゴーレムの胴体を粉砕し、同時に落盤を引き起こした。

 ゴーレムの暴れていた周辺の地面が抜け、大穴が出来ている。


 「は? ……〈探知〉」


 〈探知〉で探ってみると、崩落した岩やゴーレムの残骸に半ば埋まっている建物があった。


 (…………)


 今まで見つかっていなかった、新しい遺跡の発見だった。






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