42話
物凄くお久し振りです。すみません。
次の日。
私はエリーナさんの仕事の手伝いで、薬作りをしていた。
薬作りは、科学の実験的で楽しいのだが、薬草というものは何故にどれもこれも個性的で強烈な匂いを出すのだろう。
お城の割と素敵な部屋は、一気に慣れ親しんだ香りで充満し、森の家っぽくなった。
森の家は、あの木で出来てて、こじんまりとした小屋の雰囲気がディズニー映画みたいな雰囲気を醸し出していて、更にあの匂いが魔女の家っぽくて、それはそれでいい感じだったんだけどなぁ…。
ここだと部屋のランク落ちるっていうか、貧乏臭く感じる気がする。
ヒューゴさんも通常業務に戻ったみたいで、今日は見ていない。
ま、顔合わせ辛いから、いいんだけどね。
そんなこんなで、エリーナさんと、昨日のどうなったのかな~とか、恋バナとか、
増幅石が必要だから、そろそろ狩りに行く?→王都拠点にしたら、ちょっと遠くに行けちゃうよ→そういえば、デンディールさんが北に温泉があるって言ってて、行きたいな~→温泉?いいわね~。それより何?デンディールと温泉行く約束でもしたの?→してないですって!→若いっていいわね~ウヒヒヒ→やめてくださいってば~…と、アホな話で盛り上がっていた所、ドアがノックされたのでした。
弟子の私がドアを開けると、そこには宮廷魔術師の制服を着た若い男性。……誰?
それは王様からの呼び出しだったんです!!
ちょ、何があった!そんなにマズイ事だったの?!
慌てた私の後ろからエリーナさんが冷静に対応してくれて、私達はその魔術師さんの後を付いていくことになりました。
興味津々のエリーナさんと、戦々恐々の私。
そして通された場所は、執務室でした。
「いや~ごめんね~」
中に入ると、ちっとも悪いと思ってない顔のジェリックさんが立派な机の前に立っていた。
すると、その机の奥に座ってる人が王様?
私は慌てて頭を下げた。就活で学んだ最敬礼だ!足を揃え背筋を伸ばして45度!
「よい。面を上げたまえ」
許しが出たので、頭を上げる。座っている人物の頭髪は金色。デンディールさんから聞いていたので彼が王様だと思う。
それに、何か金色のオーラ的なものが見えるんですよ。これが王者のカリスマってやつでしょうか?
王様の横に立っている人物もジェリックさんもその隣に立ってる真っ白の髪の人も細身だからか体格が良さそうに見える。ガッチリ系。
「そなたがマーヤか?」
「はい」
「異世界から来たとか」
「多分そうだと思います」
「何やら面白い魔法を使うらしいな」
「面白い…ですか?」
どんな風に伝わってるのか不安になって思わずジェリックさんを見る。
「そう。流石この世界の者じゃないだけあって規格外だよ」
ジェリックさん、その説明は酷くありませんか?
「でさ、アルベール様が封印する所に同席させて欲しいんだよね」
……何企んでるんだ。その上王様に親しげだ。
「それは昨日聞いた。で、私に潔斎までさせ、神官長まで呼ばなければいけない程なのか?」
「そうなんですよ。念には念をいれて。二心ある者にいい様にはされたくありませんのでね」
なんですかその深刻度!
というか…
「まだ封印してなかったんですか?」
「うん。これは準備が必要だったからね。後、他に知られる訳にもいかなかったから、誰にも言ってなかったんだ」
「で、何を封印するんだ」
王様の質問に、ジェリックさんは懐から箱を取り出す。
「その菓子がどうした」
ちょ、ジェリックさんお菓子の箱なんですかそれ!!
バレンタインでよくある1000円程度の詰め合わせパックの大きさの木の箱。
可愛い模様が付いているが、よく見りゃ『星空亭』の文字。
息をのんで見つめていた周りの顔に呆れが混ざる。
「可愛いのは箱だけなんですよ」
そう言って蓋を取った。
皆の顔が一斉に難しいものに変わる。
「箱は一応カモフラージュだったんだけどね」
「本当に可愛いのは箱だけですね」
ちょっと~!酷くないですか?
「失礼ですが…」
王様の傍に立っていた細身の銀髪の人が口をひらいた。
「これは何の為に作られた呪具なのですか?」
が~ん。やっぱ呪具なの? 呪具なんですか?
ジェリックさんが人の顔みて笑う。 ……失礼ですよ。
「本人は恋のおまじないと言ってましたが」
「おまじないにしては可愛くないな。強力すぎる」
王様…可愛くないって、酷いです。
「そこまで恋人を縛り付けたいだなんて情熱的な方なのですね」
「神官長様、上手く言われましたが、限度というものがございます」
「ハハハ。魔王を縛り付けるのなら最適であったな」
「そうですね、これが20年前にあったら、変わっていたかもしれません」
「今、それを言っても詮無き事」
「…申し訳ございません」
ん?どういう事だろう?20年前って?
「そうなると今存在するのはいささか不都合がありすぎですね」
「だから封印するのです。その為にこの場を設けたのですから」
「わかった」
「畏まりました」
「承知いたしました」
どうやら話が落ち着いて、封印することになった模様です。
ほへ~。
そして、会話を聞いててなんとなく分かった。
ジェリックさんの隣に立っている白髪で琥珀色の目で、白いガクランの長いやつみたいな服着てる人が神官長。
王様の隣に立つ銀髪一つ結び黒い制服の人は、多分文官。位は高そうです。
ジェリックさんがエリーナさんに何やら話すと、二人で結界を張りました。
神官長が何やら祈っておられます。
王様はお菓子の蓋を閉め、片手で押さえながら、呪文を唱え出した。
封印の儀式って、すっごいな!
すると王様の金色のオーラが大きく輝きだし、手から金色の糸が現れると、お菓子の箱を縛るように幾重にも巻き付きだす。
しばらくすると、まるで蚕の繭のように金色の糸に包まれて、箱は見えなくなってしまった。
そして王様は手を離す。
神官長も祈りが終わる。
結界も解けるとも思いきや、ジェリックさんから質問が。
「ねぇマーヤ」
「はい?」
「陛下の魔法はどんな風に見えた?」
言ってもいいのか思わず周りを見るが
「大丈夫、まだ結界も解いてないから」
そう言われて仕方なく答えた。
「金色の糸がでてました」
「陛下の糸は金色だったの?」
「はい。金色の糸が沢山巻き付いて箱を全て覆い、まるで繭の様になってます」
「そうか、ありがとう」
そうして結界が解かれ。封印された物は王様が自ら保管するとの事になった。
最初は神殿で預かる話だったけれど、自分の手の届く範囲に収めておきたいという王様の意見が尊重された。
そんでもって、あんまり物騒な物は作らないようにという大変恥ずかしい忠告を受けて、私は部屋に戻ることが許されたのでした。
部屋に戻ると、なぜかジェリックさんも付いてきてた。
何もしてないけれど、凄く疲れたので、休憩したかったから、ジェリックさんの分もお茶を淹れる。
すると、ジェリックさんがまたお菓子の箱を出した。
「え?」
「ジェリック?」
「大丈夫、これは本当にお菓子入りだから」
ウインク付でジェリックさんが箱を開けると、クッキーの詰め合わせだった。
「これもカモフラージュの内のひとつ?」
「そう。流石に一晩何も対策をしない訳にはいけないからね」
「なんだか大事になってしまってごめんなさい」
ただ単に私の好奇心からおまじないの元を探す行動が、王様まで巻き込む程の大事になってしまい申し訳なかった。
「いいよ、久し振りに面白かったから」
「私は別に何もしてないから気にしてないわ。それに本当面白かったしね~」
二人の懐の広さに救われる。
「あと、発見もあったしね」
「な~に?」
「うん、前から思ってたけど、陛下と自分たちの魔法は種類が違うと思っててね」
「あ~そうね」
「そうなんですか?」
「うん。普通魔術師は魔力が大きいと長寿だろ?」
「そうね、考えてみたら王族は魔力が高いのに、その割には短命ね。前王は仕方ないにしても」
「うん。そうしたらマーヤは僕達が魔法を使う時は黄色の糸が見えるって言ってたけど、王様は金色だって言ったんだ」
「そう。金色でした」
「だから、多分魔法の種類も違うんだと思う」
「へ~。なるほど~」
「そういえば…」
「何か他にも見た?」
「王様は金色のオーラが見えました」
「オーラ?」
「周りが金色に光っているというか…」
「ほう」
「それと、お城にガードを張る時に皆さんの力を合わせた時、魔石は金色に輝いていましたよ?」
「あの守壁の魔石が金色に光ったか…。あれは陛下が作られた魔石なのだ」
「え、作ったんですか?どうやって?」
私の他にも魔石を作れる人が?!
「いや、マーヤの様に作ったのではなく、透明な貴力石を、城を守る壁を作る魔法を発動するように作られたのだ」
「そうですか」
がっかり。
「それにしてもマーヤといると面白い発見ばかりだ。また少し聞きたいことが出てくると思うが、ちょっと考えたいことが出来たので失礼するよ」
そういうとジェリックさんはお茶を飲み干し、すっと立ち上がると、エリーナさんの頬にキスをして出て言ってしまった。
え~っと…?




