39話
お久し振りです。色々忙しくてなかなか更新できませんでした。すみません。
今日はヒューゴさんと魔術師がおまじないグッズを売っているという店『森の小鳥』という店に来ています。
私はデンディールさん(の妹さん)から聞いたんだけど、ヒューゴさんは調べてくれたみたい。
お店は他にも2、3店あったみたいだけど、ここが一番人気なんだとか。
こういうのって、どこでも共通なのね~と感心するくらい、店内の様子は見慣れたものだった。
売ってるものに相違はあるけれど、かわいい細々としたグッズが所狭しとセンス良く並べられ、ちょっと甘い香りが漂うその空間には、女の子しかいないのよね。
ここに来る女の子と同じくらいの年の男の子は平気そうなんだけど、それより年齢が上の男性になると、居ずらそうに体を少し小さくしてるのよ。
ヒューゴさんは正しく後者で、この空間には馴染めません!と丸まった背中が物語っていた。
それがすっごく可愛い。
「ヒューゴさんはこう云うお店来ないんですか?」
「…ないですね」
うん。分かってるけど聞いてみた。
「そうですか。じゃあ、おまじないグッズがどの辺りにあるか、分からないですね」
「そうですね」
「あの、参考までに、どんな形してるかって分かります?」
「わからないですが、多分石が入ってる事は見当がつきますね」
確かに。そんな情報でした。しかも増幅石追加のカスタマイズとかしてるんですよね。
デンディールさんにもらったブローチの様にアクセサリー系なのかな?
辺りを見渡してみるけれど、品数が多くて探すの大変そう。ここにいる時間とヒューゴさんの疲労度が比例してそうなので早々の解決策。店員に聞く事にした。
比較的高価な商品らしいので、お会計の傍でした。
「すみません、おまじないグッズでどこですか?」
「そこ」
と、目の前のキラキラコーナー指された時は恥ずかしかった。
思いっきり書いてあるし~。ほんと節穴ですか。
取り敢えず、3点購入し、説明を聞く。
その1。 相手の名前を書いて一緒に皮袋に入れる、ビー玉みたいなやつ。一番安かった。
その2。 相手の名前を刺繍した布を結んで月光に当てる、造花みたいなの。花の部分が石。
その3。 好きな相手に持っていてもらうチャーム。懐中時計の鎖に付ける。自分のまつ毛をそっと仕込む仕掛けがある。お値段ピンキリ。
色々あるのね~。懐中時計のチャームは、携帯のチャームっぽいね。伊達男はここでお洒落するそうですよ。
携帯のチャームも、元は根付。男性のお洒落だったんだよね、なんだか似てて面白い。
お店を出た時、ヒューゴさんはかなりお疲れの様子だったので、広場の噴水の所で腰掛けて休憩する。
お店に入っても良かったのだが、来るときに気になっていた屋台の食べ物が見たかったので、ここになった。
それにしても、風が気持ちいいから屋外で良かったかも。
ここの気候は穏やかで寒暖の差が少ないから過ごしやすい。まるでハワイみたい。
そういえば、この前デンディールさんが帰りの馬車の中で、北の方には温泉がある的な事を言ってたから、それも気になるな~。
そして、思い出してしまった。あの帰り道。
うおぉぉぉ!!あの悶絶するくらい恥ずかしかった出来事を!!
デンディールさん、お断りしたのに、何故か好き好き攻撃されまして、そんでもって馬車から降りた時に、あの人ってば!
でこチューしたんですよ! でこチュー!
ぐっは。悶絶するくらい甘酸っぱい! 居た堪れないくらい甘酸っぱい!
あの大人の男の人に、こ~ゆ~初歩的な事されるのって、なんでこんなに恥ずかしいの?!
うがぁぁぁ~。
「マーヤさんどうしたんですか?」
ヤバい。思い出し悶絶してたら、心配されてしまった。変な行動して気持ち悪がられたら嫌なので取り繕う。
「いえ、あっちの串焼きにしようか、あの何か包んであるのにしようか悩んでたんです!」
力いっぱい力説したら、ヒューゴさんは一瞬きょとんとした顔になった後、噴き出した。
何か大切なものを失った気がしますが、上手く誤魔化せたと思います。
「お腹すいた? 両方食べてもいいですよ?」
「いえ、多分両方は食べられないから悩んでるんですよ」
「なるほど。では、半分づつにしませんか?」
「いいですか?」
「もちろんです」
両方食べれて幸せでした。どっちかっていうと、串焼きのお肉の方が美味しかった。
ピタパンみたいなパンも美味しかったけど、こっちは中のお肉が変な臭みがあってイマイチだったので、この肉の代わりに串焼きの肉が入っていれば満点だと思う。
「あ、そうだ!」
「どうしたんですか?」
「ねぇねぇ、ヒューゴさんの懐中時計見せてください」
実は、ちょっと気になっていたんです。お店で説明を聞いたときに。
ヒューゴさんは、いいですよと、時計を見せてくれた。
懐中時計は、思っていたよりも大きかったけど、私の予想と違い、チャームは時計の傍ではなく、服に付ける方に付けられていた。
シルバーで、何かの紋章。緑の石が入っていた。
「これは母から貰いました。紋章は我が家の印で、石は母の瞳の色です」
なるほど
「弟子に入るために家を出るときに貰いました」
「素敵ですね」
「ええ。ありがとうございます」
なんか素敵な習慣があるみたい。
よく考えてみれば、時計のそばに付けたら、時計に傷が付いてしまうからこの位置なんだろう。
「サイラスさんのも見る事って出来るでしょうか?」
「おまじないが付いているか確認ですか?」
「ええ、もしかしたらそれが黒い糸を出しているのかもしれないから」
「そうですね、本人に聞いてみましょう」
「お願いします」
「それと」
「はい?」
「試してみてはいかがですか?」
「試す?」
「ええ。マーヤさんがそのおまじないを私にしてくれてもいいですよ」
「それ…おまじないが効いたらどうなるんでしょう…」
「そうですね、私がマーヤさんに囚われてしまうのでしょうね」
「そ、それはマズくないですか?」
「どうしてですか?」
「え…だって」
「私は構いませんけど?」
「え?!」
「まぁ、このお店の商品ですとそんなに力がありませんから効き目が薄そうですけどね」
「そうですか」
「あの魔術師よりも私の方が魔力が大きいので、もしかしたら効かないかもしれませんね」
「そっか、じゃあ大丈夫かも。帰ったら試してみましょう。黒い糸が出るかどうか見たかったんです」
「そうですね、私も気になります」
そうか、魔力の大きさで効果が変わるなら、宮廷魔術師には効かないのだろう。
ヒューゴさんによると、あのお店の魔術師は、宮廷魔術師になれるほどの魔力は無く、一般の人より少し大きい位だという話だった。
あ、じゃあ?
「ヒューゴさん、もうひとつ『花の妖精』というお店も見てみたいのですが」
もしかしたら、こっちの方が効き目が強い商品があるかも? 貴族相手の店だし、そうなると魔力も強い魔術師が作ってる可能性がある。
効き目の差も見てみたい。
「そちらのお店だと、ちょっと着替えないと無理かもしれません」
あ、そっか。
今の私たちの格好は、お店の客層から浮かないように、一般の人が着る服。私はいつもの服なんだけどさ。
ヒューゴさんは宮廷魔術師の身を隠すように普通のボタンの無い服を着ている。
最初、この国にはボタン無いのかと思ったけれど、貴族の服にはボタンがあった。しかも凝ったヤツが。
多分1個1個手作り。高級品でした。まだ一般に普及してないだけだったんですね。
それで、着替えて『花の妖精』に行くことになった。
あ、でも私良い服って、デンディールさんに作って貰った服しかない。
それをヒューゴさんと出掛ける為に着ていいのかと悩んでいたら、ノックが。
バーンとドアが開くと、ニヤニヤした顔のエリーナさんでした。
「はい、これヒューゴから。いいわね~。楽しんで来てね」
「…………」
大きな箱を受け取り、開けると。
服だ。
出してみると可愛いドレス。
緑色。
でも、デンディールさんに貰った深い緑色とは違い、明るい緑色。
…ヒューゴさんの瞳の色ですね。
いつの間に!
着てみると、ぴったり。
個人情報保護法なんて無いんだろうけどさ…。
ここの常識が分からない私は男性から高そうな服を貰う事も怖くて仕方ない。
お礼の言葉だけでスルーしていて大丈夫なの?
しかし、迂闊に聞いて藪蛇な事になってでもしたらたまったものじゃないし。
ここは力技を使ってでもスルーするしかない!
しばらくして迎えに来たヒューゴさんが素敵な笑顔で
「すごく可愛いです、似合ってますね」
と褒めてくれた時も
「ありがとうございます」
にっこり微笑んで感謝の言葉だけにした。
深く考えちゃ駄目だ!
やっぱ異世界こわ~~~い!




