38話
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皆様ありがとうございます。
驚きで、気の利いたことが言えませんが、ありがとうございます。
「え…?」
私のこの世界の人間じゃない発言に、どう反応していいのかと、固まるデンディールさん。
そらそうだ。こんな荒唐無稽っぽい話、あっさり理解出来ないだろうし、信じられても人格疑う。
「自分でも変な話してるのは分かってます。でも、事実なんです。そこを信じて貰えないと話にならないんですけど、いいですか?」
じっと顔を見つめる。
彼の顔からは、驚いてはいるものの、嘲りは感じられなかった。ほっとした。
「それでね」
この勢いで、全てを話してしまおうと、意気込んだその時。
ノックの音が響き
「お兄様?お食事の準備が整った様ですわ」
エリミナさんの声がした。
デンディールさんはフーッと長く息を吐き出すと
「わかった。すぐに向かう、先行っててくれ」
そう返事をした。
「すまん。折角話辛い事を打ち明けようとしてくれていたのに。出来れば食事の後にでもゆっくり聞きたいのだが、時間をもらえないだろうか?」
私はデンディールさんの配慮に嬉しく思い、了承した。
食事の席で、ちょっと吹っ切れた私は、少し楽だった。
相手の御両親に別に気に入られようとしなくたっていいじゃない!
と、いうわけで、食後の決戦の為に腹ごしらえだ。腹が減っては戦は出来んってやつだよね。
さ、さすが貴族の御招待食は違う!
盛り付けが繊細で美しくて、どこから手を付けていいのか分かんないんですけど!
崩すのもったいないな~と思いつつ、何か分からない小さな白い丸い物を口に入れる。魚?
なんか白身魚っぽい味。フルーツっぽいソースと合います。
王都に来てから美味しい物ばっかり食べてるな~。
せっかく痩せたのに、また太りそうなんだけど。運動しなきゃだね。
メインデッシュは、魚だった。いや、魚っぽい味の肉…かな?
「お父様、最近魚ばっかりですわ」
魚だったらしい。
「フフフ。ノルベールは気に入るとそればっかりになるから仕方ないのよ。
エリミナ、貴方も諦めなさい」
「え~~~~」
「美味しいからな」
「それは分かってるけど、他のも食べたいわ…」
「ノルベールは一途なのよ。…そうね、ユスロイドの男共は、皆一途な所があるわね」
そう言うと、奥様は私を見て微笑んだ。
ひぃ~~! それって何か違うと思うけど、言いたいことは良く分かる!
しかし、えへへと愛想笑いして流すことしかできなかった。
デザートはシャーベットだったよ!この世界に来て初めて食べた!
何のフルーツなのか分からないけれど、さわやかな甘みで、しつこくなくて美味し~い。
視線が気になってみれば、笑ってるデンディールさん。
やめてくださ~い。そんな顔してると奥様が、奥様が~~!!
その、貴方たちラブラブネ。うんうん。分かってるわって顔して頷くの止めてください…。
時々ヒヤリとした事もあったけれど、概ね楽しく、美味しい食事でした…。
部屋に戻ると、正面の吐き出し窓の外は真っ暗だった。
ヤバイ。早く話を済ませてとっとと帰らねば。
「あのね」
言いかけたら、背中をそっと押されて長椅子に促された。
立ち話はお行儀悪かったですか?
デンディールさんが隣に座ったけれど、あまり大きな声で話したくなかったから、そのまま話をした。
気が付いたら、何故かここに来たこと。エリーナさんに拾って貰った事。
還る方法をエリーナさんが見つけてくれたのに、失敗してしまった事。
どうして王都に来たか。この世界の事にあまり詳しくないから、デンディールさんの話がとても面白かった事。
全然魔法は使えないけれど、魔法を使ってるのは糸として見えるって事。
デンディールさんは黙って聞いてくれた。
「そうか、だからこの世界の事を知らなかったのだな」
「そうなんです。信じられないような話だから言い難かったんですけど」
「あいつらは?」
「あいつ? …あぁ、ジェリックさん達魔法使いの人は、エリーナさんの説明が上手だったのか信じてくれて、なんかちょっと私の魔法が特殊だから、観察対象っぽい感じで見られてますね」
「まぁ、魔術師共の好奇心というか、探究心は一般人には計り知れないからな。多少の事は目を瞑ってる可能性もあるが、そいうか、観察対象か…」
このままの勢いで言う!私はデンディールさんの目を見つめて言った。
「それでですね、あの、デンディールさんのお気持ちは嬉しいんですが、
私、後一月後には元の世界に戻る予定になってるんです!」
「戻る…のか?」
「はい」
「…………」
「ごめんなさい」
デンディールさんは目を見開いた後、瞑り、そして、真っ直ぐに私を見つめた。
「マーヤ、俺は君の事が好きだ。はっきり言わずに卑怯な真似をしたことは謝る。君の事が知りたかった。守りたかった。傍にいてほしかった。いや、傍にいて欲しいんだ」
初めてされた告白は、私の心臓をぎゅっと掴む。
人から好かれることは嬉しい。でも、困る。私は元の世界に戻りたい。
「君が俺の事を何とも思ってない事も分かっている。でも、これから一緒に居て、俺の事を知って欲しいんだ。帰らずに、俺の傍にいてくれないか? 俺と色んな世界を見ないか? 新しい発見をして目を輝かせているマーヤが好きなんだ。そんな君を見たいし、その顔をさせるのは俺でいたいんだ」
どうしよう。嬉しい言葉なのに、受け入れられなくて、それが辛くて、私ごときが烏滸がましくて、
何も言えなくて、涙だけが溢れた。
そんなズルい私の頭をデンディールさんがなでる。
「ごめん、君を泣かせるつもりでは無かったんだ」
「いえ、ごめんなさい…ごめんなさい」
「そんな言葉、言わないでくれ。……今日はもう送る」
そう言って立ち上がり、つられるように立ち上がった私を軽く抱きしめると
「ごめん。困らせるつもりはないんだけれど、考えてくれないか?俺の事」
そう言うと、すっと離れて、馬車までエスコートしてくれた。
馬車の中で、デンディールさんは、ぽつりぽつりと、私のこんな所が可愛いという話をしてくれた。
う~~~恥ずかしい。こんなに見られていたなんて。
こんな他愛もない事で好かれるなんて、信じられなかった。
好かれているのに、応えられない事が辛かった。




