32話
「あれ?そのブローチどうしたの?」
それは遺跡2日目の朝食の時の事。イザークさんが聞いてきた。
「これはですね。王都に来る途中で知り合った冒険者さんに貰ったんです」
「へ~。やるね」
「は?」
イザークさんはニヤリと笑うと
「そいつ、只の冒険者じゃないでしょ」
「ん~?冒険者の方に会ったのは、その人達が初めてなので比べることが出来ないんですが、かなり強そうな方でしたよ」
「そうだろうね。運が良いのか悪いのか。最初に会ったのが彼等とは」
「有名な方なんですか?」
「そうだね、割と有名かな?」
「へ~。やっぱり凄い人だったんですか~」
「そうだね」
「そうですか」
「…それだけ?」
「は?」
「あれ?」
なんか変な顔のイザークさん。
「ねぇ、そのブローチの意味知ってる?」
「お守りなんですよね」
「うん。そうお守り」
「石が入っていて高そうなので遠慮したんですけど、帰りは会えるか分からないからって貰ったんです。今日は遺跡の中に入るから付けてみました」
まだまだ変な顔のイザークさん。どうしたの?
ジェリックさんはニヤニヤしてるけど、ヒューゴさんもエリーナさんもよく分からないって顔してる。もちろん私もよく分かりません。
「それ、何のお守りか知ってる?」
ジェリックさんが聞いてきた。
「お守り…としか聞いてないんですが、種類があるのですか?」
もしかして、家内安全とかで、ダンジョンには向かないお守りだったのかも?!
「フフフ。知らないならいいよ」
「え、ジェリックさん! いじわるしないで教えてくださいよ~。遺跡に持って行くのに関係ないお守りなんてあるんですか?」
「ううん。君の身を守るお守りだから持ってるといいと思うよ」
「それならいいんですけど…」
なんか腑に落ちないんっですが。
ジェリックさんはイザークさんに話してる。
「気にしなくていいんじゃないか?牽制だけど、勇み足っぽいからね」
「そうですね、恐るるに足りませんね」
なんか分かんないけど嫌~な感じ。
遺跡の内部は夕べの報告会の時に分かったのが、新たに見つかった場所に、古代魔法により封印がしてある扉が存在したと、いう事で。
遺跡発掘隊は俄かに色めき立っておりました。
昨日と代わって、ジェリックさん、ヒューゴさんエリーナさんと私。それと10人程の騎士の方で、その扉へ行く。
道中はずっとヒューゴさんが手を繋いでくれていた。
時々魔獣が出てくるんだけど、私は戦う訳にはいかなくて。
でも見た事無い魔獣が出てくると怖くて。戦えないからキャーキャー怖がってるだけしか出来なくて……。要するに足手纏いの何にでもないのですが。
それを安心させるようにヒューゴさんが手を繋いでいてくれたり、魔獣から守ってくれたり、背中をトントンしてくれてたり……。完璧お子様扱いでした。
あ~~もう! 居た堪れない!!
結局、ジェリックさんが封印を解いている時も、魔壁なんぞ作れない私は只ボーッと、その様子を見ていただけだった。
魔術師の方は事情を知っているからいいけど、騎士の方がどう思っているか…考えるだけで怖い。
何やら有効なアイテムとか、精霊が封印された水晶なんかが発見されて、とても充実された遺跡発見だった様です。
……だって私、何も分からない。価値も分からない。
皆が喜んでいたので私も最初は喜んでいたけれど、段々取り残された様な気持ちになって、寂しくなった。
ただ、何もしてない私が独り暗い顔していてもいけないので、一緒に喜んでいたけど。
それが、すごく疲れた。
帰りの一泊。収穫に喜びお酒が入り、長引きそうなので疲れた事を理由に早く寝させて貰った。
早く寝たので変な時間に目が覚めてしまう。
横で眠るエリーナさんを起こさないようにそろりと抜け出し、トイレへ。
ちょっと外れに、それ用の小さいテントが張ってあるのです。
すっきりして、地球の月より2倍くらい大きな月を見上げていたら。
「あれ~? 魔術師の姉ちゃんだ~」
「あ~ほんとぉら~」
うわ~酔っ払いだ~!
「姉ちゃんもぉ~一緒に呑もっか~」
「さ~んせぇぇぇ」
「いえ、ごめんなさい、飲めないので(ウソ)遠慮させてもらいます~」
「らに言ってんの~。一緒にのも~よ~。たのし~よ~」
「あ~たのし~ぞ~」
「お~たのし~ことすっか~」
いつの間にか一人増えた!厄介な…。
「いっから、いいか~ら~」
「さぁさぁ~」
「スカしてないで、さ~行こ~~」
両手を取られ、背中を押される。嫌、嫌だって!
頑張って足を突っ張って、連れて行かれない様にする。
「そんな嫌がんないで~」
「あ、魔法とかつかっちゃや~だよ~?」
「大丈夫だろ~?この姉ちゃんあんまり魔法使えないみたいだし」
「あ~そうなの?」
ドキッとした。
「だってな、遺跡でな~んもしてなかったぞ?もしかしたら付き人なのかもな~」
「そっか~。ローブなんか着て魔術師の振りしてたら、らめらぞ~?」
そんな事言われても…。
「んじゃ、一緒にいっきますか~」
「そうそ~う。楽しもうぜ~?」
そう言って、担ぎ上げられた。
「ちょ! 放してください!嫌です!」
「い~や~だよ~」
「嫌だったら魔法でにげていいよ~」
ヲイ。さっきと言ってること矛盾してるだろ。流石酔っ払い。じゃなくて!
「止めてください!放して!」
「あははは~やっぱ魔法使えないのか~」
こうなったら!って、使いたいけど、使ったら…石になってしまう?
人間が…魔石になってしまったら……。
途端に怖くなった。
どうしよう。私、人相手に魔法を使えない!




