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運命の赤い糸はなぜ見えない!  作者: のののの
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閑話

「なぁ、お前、本気になったのか?」


久し振りに戻った王都の安い酒場でエンディーが言った。


ヤツとは、中央学舎で出会ってから、ずっと連んでいる。

家族よりも長い時間一緒にいると思う。

だからだろうか、相手の考えていることなど丸分かりなのだ。







俺たちが出会った中央学舎とは王都にある貴族の子供が通う学校だ。

大体10歳~16歳の子供が通っている。


貴族とはいえ、中級貴族。しかも俺は三男。長子だけが家督を継げるこの世界。次子はスペアだが三番目はそんなものもありゃしない。

じゃあなんで生んだとか思春期には反抗したくもなったが、俺の両親は万年新婚夫婦で。

……そんな事言うのも馬鹿らしくなった。


エンディーは同じく中級貴族だが、こいつは次男だ。

しかし、こいつの兄が物凄く出来るヤツだった。自分のスペアは要らないと事あるごとにあいつの牙を折ろうとし、奴らの兄弟喧嘩は酷い物だった。



今考えると、他人の事ばかり羨ましがって僻んでクサッていた俺達は、そんな所で気が合って一緒にいたんだな。






エンディーが言った本気というのは、この前、なんとなく王都に戻ろうとした時に出会った女の事だ。





家を継ぐ事もない俺たちは、初めのうちは騎士になるために勉強をしていた。

俺たちは、貴族の中では割と高い魔力を持っていた。それは騎士になるには有利だったのだ。


この国の貴族以上は、多少魔力がある。

魔力が有る者同士で結婚するのだから、大なり小なり大抵魔力があるのだ。

高い魔力がある奴は魔術師になれる。残念ながら俺たちは魔術師になれるほどの魔力はなかった。


魔力とは、力であり、人を惹きつける魅力でもある。

だから王族なんかは、高い魔力がある。


民間の中でもひょっこり強い魔力を持って現れる者がいる。そういう奴は大抵宮廷魔術師となる。

生活の保障があるからだ。

宮廷魔術師は騎士団の中の一部門としてある。

数は少ない彼らはエリートだ。一人で騎士10人分位の働きをする。



という訳で、貴族の魔術師は、モテる。入れ食いだな。

貴族じゃないやつもモテる。でも大抵地方に行ってしまう。城勤めで貴族の嫌な面を見るからだろうか。



貴族の女。


外見は綺麗だけど、中身の綺麗な奴を探すのは難しい。

大抵上昇志向に満ち溢れ、他人を踏み台にして伸し上ろうとする。はっきり言ってエゲツナイ。


エンディーが可哀相だった。

あいつ、見た目も良い方だし、魔力も高い。だから女が常に寄って来たが

あいつを足掛かりに兄貴の方へ行きたがる女が多かった。


そして、あいつの兄貴も頂けない。かなりの腹黒だし。分かってて近寄って、奪って捨てる。

エンディーは一時期かなり荒れていた。


俺の兄はそんな事しなかったけど、兄を目当てに俺に近づく女がいた所は同じだ。



だから俺たちは、自由な身をいい事に騎士になることを辞め、冒険者となり王都から離れた。



冒険者の生活は、はっきり言って楽しい。

そこそこ力もある、魔術も多少は使える、気が付いたら、高ランクの冒険者となっていた。

自分たちの実力を評価されるのが嬉しい。


しかし、目立ってくると、女がまた面倒になって来てしまったが。

煩わしくなってくると、拠点を変えたりすれば何とかなったので、俺たちはそうやって転々と過ごしていた。


今回も拠点としていた東の国境の町が、大分面倒になってきたので、反対の西にでも行こうと思い

中間の王都でちょっと家族の顔も見ておこうと云う予定だった。



ついでに護衛の仕事を取った馬車。そこに二人組の女が乗ってきたのだ。


二人とも美人で、そしてとても魔力が高かった。

どうやら緑の髪の方が魔術師で、黒い髪の女は弟子の様だった。

普通、女が二人で旅など無理だ。だが魔術師なら話は別だ。



馬車の中の男共は皆二人に注目している。もちろん俺たちも見ていた。

まぁ、狭い馬車の中、代わり映えしない外を眺めているよりも、綺麗な女を眺めていた方が楽しいからな。


エンディーがさっそく夕飯の時に渡りをつけたのには驚いたが。

あいつ、しばらく女は控えるとか言っていたのに、立ち直り早すぎだろ。


しかし、お目当ての魔術師の方には素気無い態度であしらわれてたけど。

いい機会だ。お前は大人しくしていろ。


弟子の方の女はマーヤと言った。


あまり世間慣れしてない様で、俺たちの冒険者としての生活の話をすると、とても喜び

どうして?何で?と聞いてきて、かなり真剣に話を聞いているのが窺えた。まるで子供だ。



輝くような眼差しで見つめられ、嬉しそうに自分の話を聞いてくれる。


食べ物も、美味しい、美味しいと、たくさん食べる様子が微笑ましい。


あまり世の中を知らず、大したことでも無い物を、新発見の様に喜ぶ姿を見ていう内に

なぜか、こいつも一緒に旅に連れて行き、色んな物を見せてやりたい気持ちになった。



近くにいると、自然な優しい花の香りがする。だからつい寄って行ってしまい

後でエンディーに嫌味を言われてしまう。



そんな女は初めてだった。


なんか、駄目なんだ。気が付いたら視界の中にいる。あの香りと離れたくない。

あの神秘的な黒い目で、見つめて欲しいと思う。



しかし彼女は初心だ。色めいたことに気付かない。

……まぁ、そこに付け込んでいた自覚はある。でもとにかくマーヤに近付きたかった。


だけど

「王都に着いたらお別れだけど、楽しかったありがとう」

なんて簡単に言われたら駄目だろう。


突然冷や水を掛けられた気持ちになった俺と彼女の温度差に、更に震えた。


王都に行ったら、高い魔力を持つ彼女は多分他の奴からも目をつけられる。


しかし、強引にこちらを向かせようとしても逃げられるだろう。

少しずつ距離を狭めないと。俺の事を、忘れないようにしておかないと。



彼女の無知さを利用して『お守り』を用意してみた

中央学舎で流行った子供のおもちゃ。



エンディーが笑ったけどな。



俺は、そうなればいいと思っている。




今は一旦引いたけど、次に会ったら―――。








「そうだな」

冷たいエールを一口飲んだ。


「その割には、素直に離れたじゃないか」


「駄目だろ?あの手の初心は。追い詰めたら逃げる」


「確かに。だが、逃げられると、逆に余計追っちゃうけどな」


「まあな」


「その為に、三つ石の『お守り』か?」


「あぁ」


「デイルが小細工使うなんて、面白い」


「使えるモンは使う。定石だ」


「そうだな。冒険者だもんな。俺たち」


「そうじゃないと捕まえられないだろ?」


「あんな上玉そうそう転がってないし?」


「だから、次見つけたら、必ず捕まえる」


「はいはい。じゃあ俺は応援するよ」



俺は、エンディーの嫌な笑みを奴の向う脛を蹴りつけることで消し、エールを飲み干した。



王都での仕事を済ませたら、会おう。



それからだ。




ストックがあったので投入。

フラグのお話も入れたいな~と。


エリーナさんは中央学舎に行ってないので三つ石のお守りの意味は知りません。

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