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幼馴染の勘違いオタクを無害なモブにしたかっただけなのに、冷徹に教育していた私が絆されました  作者: remia
第1章:痛い幼馴染の普通化計画

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幕間:ラノベ勘違い野郎の葛藤

「くそっ、なんで俺がこんな目に……っ!」



 自室に帰るなり、俺はベッドに倒れ込んで枕に顔を押し当てた。

 今日、結城たちと行ったボウリング場での忌々しい光景がフラッシュバックして、胃の奥がギリギリと痛む。



 そもそも、すべての始まりは約一ヶ月前、4月の出来事だ。

 俺は毎日世話を焼いてくれる幼馴染の凛子に対して、俺の隣に立つ権利を与えてやろうとした。



 無理もないだろう。あいつは、誰がどう見ても「顕現した俺のメインヒロイン」なのだ。



 背中まで流れる、夜の闇を溶かしたような艶のある黒髪ロング。

 モデル顔負けのスレンダーな体型は、制服越しでもそのラインの美しさが際立っている。

 ……まあ、控えめながらも主張を忘れない絶妙な塩梅も、メインヒロインとしての「正解」を叩き出していると言えるだろう。



 何より、あの美しい顔だ。

 切れ長な目の奥に宿る、日本人には珍しい少し青みがかったグレーの瞳。

 それに見つめられると、まるで魂まで凍りつくような、あるいは浄化されるような錯覚に陥る。



 さらに、勉強も運動も完璧。

 全校生徒の憧れの的でありながら、告白してくる有象無象の男子どもを「興味ないわ。時間の無駄よ」と絶対零度の一言で切り捨てる、孤高の『氷の処刑人』。



 そんな高嶺の花が、学校では誰とも群れない俺の家にだけ毎日通い、エプロン姿で世話を焼いているのだ。



 これ、どう考えても俺を好きすぎるヒロインのムーブだろ?



 そう確信していたからこそ、俺はあの日、完璧に計算されたポージングとセリフで主人公風の告白をしたのだ。



「俺がずっと、凛子を守るから」



 彼女は当然、隠しきれない俺の思いが報われたことに感涙するはずだったのだ。



 

 だが、返ってきたのは「1ミリも魅力がない」「本気でキモい」という絶対零度の言葉だった。



 さらに「普通の人間になるまで話しかけるな」とまで言われ、学内カースト頂点の陽キャどもの中に放り込まれるという、理不尽な強制イベントが発生してしまったのだ。



「あいつら、俺の孤高の魅力がわからないなんて……見る目がないにもほどがあるだろ」



 俺はベッドの上でギリッと歯を噛み締めた。

 この一ヶ月、五十嵐の家の美容室で髪を切られた時だってそうだ。

 あのお姉さんは「髪の量が多くて羨ましいな」と、俺の中に眠る原石に確実に気づいていた。



 それなのに、凛子め、「ただのビジネスだ」なんて釘を刺してきやがって。

 俺の覚醒イベントを邪魔したとしか思えない。



 それに、髪を切って教室のドアを開けた時も、誰も俺の劇的なイメチェンに気づかなかった。

 普通なら「え、誰あのイケメン?」とざわめきが起きるはずなのに。

 うちのクラスの連中はモブすぎて、重要なイベントのフラグ回収すらできないらしい。



 服だってそうだ。

 俺の『暗黒に染まったクールなファッション』を全否定しやがって。



 だいたい、あの黒シャツの胸の英字プリント(I’m a stud man)が『俺はイケメンだ』なんて意味だったなんて、知るわけないだろ!

 なんとなく字面がカッコよくて闇属性っぽかったから着ていただけなのに、五十嵐のやつ「ウケ狙い?」なんて笑い物にしくさって。



 英語の意味なんていちいち直訳して気にする方がダサいだろうが!



 仕方なく五十嵐に選ばされた村人A装備に、俺のアイデンティティであるドクロのネックレスやウォレットチェーンを装備して『自分らしさ』を表現してやったのに、凛子は「生ゴミ錬成」と吐き捨てた。



「自分らしさを足して何が悪いんだ! 没個性なんて、俺みたいな特別な存在には似合わないのに……!」



 そして極めつけは、今日のボウリングだ。

 結城や須藤のやつら、ストライクを出してハイタッチなんかして、薄っぺらい陽キャ特有のノリで騒ぎやがって。



 俺だって、あんなのやろうと思えばできる。

 今日は調子が悪くて、たまたまボールの重さが俺の魔力……じゃなくて、腕力と合わなかっただけだ。



 それに、ベンチでジュースを飲んでいた時も最悪だった。

 結城たちはコミュ力の高い陽キャなんだろ? だったら、孤高の存在である俺が興味を持つような気の利いた話題の一つや二つ、自分から振るのが当然じゃないか。



 それなのに自分たちだけで盛り上がって、俺への配慮がまるでない。

 連中のレベルが低くてつまらないから、仕方なくスマホを見て俺のペースを保ってやっただけなのに、凛子のやつは俺を冷たい目で見てきやがった。



 でも、このままじゃ……。



 強がってみたものの、スマホの黒い画面に映る自分の顔を見つめると、急に心細さが押し寄せてきた。



 もし俺がこの特訓から逃げ出したら……凛子は本当に、二度と俺に口をきいてくれないだろう。

 あいつの氷のような視線すら、俺に向けられなくなってしまう。



 それは……なんか、嫌だ。



「……ッ、そうだ。これは俺が真の主人公になるための『試練』に違いない!」



 そうだ。凛子はあえて突き放すことで、俺を更なる高みへと導こうとしているのだ。

 ツンデレ……いや、クーデレの極致。さすがは俺のメインヒロインだ。



「見てろよ、凛子……俺の本当の力、見せつけてやる……!」



 俺は、短くなった前髪を無意識にかき上げようとして、指が空を切る感覚に少しだけ虚しさを覚えた。



 だが、決意は揺るがない。

 明日からも続くであろう、この理不尽で過酷な「人間矯正クエスト」をクリアし、必ずや凛子の隣に立つ真の主人公になってみせる。




ご覧いただき、ありがとうございます。


これにて、第1章の終了です。


これはラブコメなのかと言われると微妙ですが、物語後半にはちゃんとラブコメにするつもりです。


当面は更生コメディが続きますが、引き続きお読みいただけますと幸いです。


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