表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染の勘違いオタクを無害なモブにしたかっただけなのに、冷徹に教育していた私が絆されました  作者: remia
第8章:計画が終わる春

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/58

第48話:埋まる外堀、壊れる外壁

 まさか、本当にこんな日が来るなんてね。


 結城たちからの祝福という名の弄りを終えて、私と拓実は手を繋いで歩いていた。


 まだ少しフワフワした気分で家の前にたどり着くと、そこには楽しそうに立ち話をしている、見慣れた二人の姿があった。


 あ、そっか……今日は卒業式だから、佐藤のおばさんも休みを取ってたのね。

 って、そんなことより! 私たち、バッチリ手を繋いでるじゃない……っ!

 こんなの見られたら……っ!!



「あらあら?」


 っ……! 遅かった。


「なんだか二人の雰囲気が違うわねー」


 うちのお母さんが、慌てて離れた私たちの手元をニヤニヤと見つめた。



「氷室さん、これは……もしかすると、もしかするんじゃないかしら?」


 おばさんも、すっかり垢抜けて『優良物件』となった息子の顔を見て、嬉しそうに目尻を下げた。



「まぁ! お赤飯用意しなきゃ! 今夜はごちそうよー」


「ちょ、ちょっと、お母さん!?」



 気の早いお母さんの言葉に、私は慌てて制止に入った。



「あら? 違うの?」


「いや……その……」



 顔が熱くなって言葉に詰まる私の横で、拓実は小さく息を吐き、両家の母親へ向き直った。


 拓実は一度だけ私の方を向き、確認するように、真剣な顔で小さく頷きかけてきた。


 はぁ……誤魔化すつもりはないのね……。ほんと、バカ正直なんだから。

 いいわ。任せるわよ。


 私も観念して、小さく頷く。



「拓実、どうなの?」



「凛子さんと、お付き合いさせていただくことになりました」


 大人の前で背筋を伸ばし、真っ直ぐに宣言した。



「やっぱり! 良かったわねぇ、凛子」


「もう……やめてよ、お母さん」



 親に交際の報告をするなんて、恥ずかしすぎるわよ。早めに話を切って逃げないと……。



「ねぇねぇ……どっちから? やっぱり拓実?」


 おばさんが、投資したスポンサーとして、結果が気になって仕方ないという顔で、グイッと身を乗り出した。



「うん。俺から『これからも、ずっと俺の隣にいてくれ』って――」


「ちょっ……拓実!? バカッ、親の前で何言って……!」



 また出たわね。素直すぎるバカ!

 馬鹿正直に告白のセリフまで暴露するんじゃないわよ!!

 最悪だわ……隠し事をしない弊害が、よりによってこんなところで暴発するなんて!



 両家の母は、まるで女子高生のように「きゃああああーっ!!」と黄色い悲鳴を上げた。



「聞いた!? 『ずっと隣にいてくれ』ですって! これもう実質プロポーズじゃないの!」


「春先のダサいオタクから、よくぞここまで立派な男になって……お母さん感動しちゃう」



 クリスマス会の時以上に盛り上がる母親たちを前に、拓実も困惑気味に頭を抱えている。



 自分から地雷踏みに行ったくせに、『どうしてこうなった……』みたいな困り顔してるんじゃないわよ!

 あんな風にカミングアウトしたら、こうなるのは当たり前でしょ!

 あんたには、まだまだ教育が必要だわ……。



「これからは毎日、拓実くんのお部屋に通っちゃうのかしら? あ、お泊まりするときはちゃんと言いなさいね」


「っ……! お母さんっ!!!」


「うふふ。うちは構わないわよ。なんなら拓実の部屋のベッド、少し大きいのに買い替えようかしら」


「母さんまで何言ってんだ!?」



「二人とも同じ秀瑛高に行くんだし、もういっそ、うちと佐藤さんの家の間の壁、ぶち抜いちゃいましょうか?」


「名案ね! 高校を卒業したらすぐにでも籍を入れられるように、今から結婚式場のパンフレット集めておかないと」


「お孫ちゃんの顔を見るのが今から楽しみだわ〜」


「ちょっと待て! 気が早すぎるだろ!」



 ああもうっ! 拓実のせいよ!!

 余計なことまで言ったせいで、ニヤニヤコンビの妄想が止まらなくなったじゃない!

 もう限界だわ!!



「もうっ! 拓実、行くわよ!」


「わっ、おい、凛子!?」



 私は、拓実の腕をガシッと掴んで強引に自分の家へと連れ込んだ。



「あらあら、照れちゃって」


「若いっていいわねぇ」



 バタンッ! と勢いよく閉めた玄関のドアの向こうから、両家の母の楽しげな笑い声がいつまでも響き渡っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ