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幼馴染の勘違いオタクを無害なモブにしたかっただけなのに、冷徹に教育していた私が絆されました  作者: remia
第8章:計画が終わる春

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幕間:元・ラノベ勘違い野郎の恋愛攻略戦

「あぁぁぁぁぁぁ! ヘタレたぁぁぁぁぁ!!」



 自室に逃げ帰るなり、俺はベッドにダイブして枕に顔を押し当て、情けない絶叫を上げていた。


 今日のデートの帰り際、家の前。

 あそこは誰がどう見ても、絶対に告白するべきタイミングだった。

 それなのに俺は、ビビって「ありがとう!」とだけ言って逃げ帰ってきてしまったのだ。



「なにが『頑張ってよかった。本当にありがとう』だ……っ! 情けなすぎだろ俺……っ!」


 ベッドの上でのたうち回りながら、今日の自分の不甲斐ない行動を思い返してギリギリと歯を噛み締める。



 そもそも、今日のデートで告白するつもりだったのだ。

 だが、初手でやらかしてしまった。


 恋愛経験値がゼロの俺は、徹夜で読み込んだラノベを『攻略本』代わりにデートに臨み、待ち合わせ場所で「さあ、行こうかお姫様」なんていう絶望的に痛いエスコートをかましてしまったのだ。

 当然、凛子の機嫌を最悪にしてしまった。



(それにしても……春物の私服を着た今日の凛子は、直視できないくらい、控えめに言って最高に可愛かった……)



 いや、今は惚気ている場合じゃない。


 機嫌を損ねたカバーに必死になった俺は、車道側を歩いたり、椅子を引いたり、過剰なまでのラブコメ主人公ムーブを連発した。

 結果、「私が介護老人みたいじゃない!」とさらに怒られる始末だ。


 そんなポンコツ空回りに必死になっているうちに、俺は告白のタイミングを完全に見失ってしまったのだ。


「そもそも……恋愛経験値が全くない俺に、告白のタイミングなんて高度なものがわかるわけないじゃないか……」



 だが、冷静になって考えてみれば、今日のために準備していた『ラノベを参考にしたカッコいい告白のセリフ』を言わなかったのは、不幸中の幸いだったかもしれない。

 凛子はカフェで「無理してラブコメ主人公の真似しなくていい」と怒っていた。あのまま痛いセリフを口にしていたら、告白どころかアイアンクローからの処刑宣告アゲインだった可能性が極めて高い。



 結局、俺はどうすればいいんだ?

 コミュ力の基礎や勉強は努力でなんとかなったが、恋愛という最難関ダンジョンの攻略法だけは、一人ではどう足掻いても見つからない。



 俺は藁にもすがる思いでスマホを手に取り、結城と須藤との三人だけのグループチャットを開いた。



 拓実『至急。アドバイス求む』


 送信して数秒後、すぐに既読がついた。



 結城『どした?』

 拓実『今日、凛子とデートしたんだが』

 須藤『やらかしたのか?』



(なぜ一瞬でやらかしたことがバレるんだ……俺の信用度低すぎないか?)


 内心でツッコミつつも、俺は正直に、ラノベを参考にしてポンコツエスコートをかましたこと、そしてビビって告白できずに逃げ帰ったことをフリック入力で打ち明けた。



 結城『あのなぁ……なんでそこで恋愛の攻略本にラノベを選ぶんだよ。氷室がそういう痛い設定嫌うの、今まで散々怒られて学んだだろw』

 須藤『佐藤らしいといえばらしいが……氷室も呆れてただろ』

 拓実『面目ない。どうすればいい? 気の利いたセリフの一つも思いつかないんだ』


 痛いところを突かれ、俺は情けなく助けを求めた。

 すると、すぐに二人の頼もしい『最強パーティー』から返信が返ってきた。


 結城『だから、そういう小細工がいらないんだって。来週は卒業式だろ?』

 須藤『その日だな。変なキャラ作ったり、カッコつけたりする必要はない。お前の気持ちを、真っ直ぐぶつけるだけでいいんだよ』

 結城『氷室が求めてるのは、ラノベの主人公じゃなくて、今の等身大の佐藤だろ。頑張れよ!』



「真っ直ぐ、ぶつけるだけ……」


 スマホの画面を見つめながら、結城と須藤の言葉を噛み締める。


 そうか。気の利いたセリフも、完璧なエスコートもいらない。

 ただ、俺の本当の気持ちを、俺自身の言葉で伝えればいいだけなんだ。



「……よし」


 俺はベッドから起き上がり、両手でパンッと頬を叩いた。

 持つべきものは、やはり偉大なるハイスペックな友人たちだ。



 決戦は、来週の卒業式。

 今度こそ絶対に逃げずに、俺の本当の気持ちを凛子に伝える。



「待ってろよ、凛子……次こそ絶対に、カッコつけずにキメてやるからな」



 次なる、けれど最後となるであろう最大のクエストへ向けて。

 俺はスマホを握りしめ、静かに、けれど確かな決意の炎を燃やしたのだった。

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