第44話:決戦の試験会場
電車に揺られ、秀瑛高に到着すると、校門の前で結城と美咲が待っていた。
「おっ、来たな二人とも! いよいよ本番だぜ」
「おはよー! 佐藤、ちゃんと寝れた?」
「ああ、バッチリだ。結城も五十嵐も、頑張ろうな」
拓実は、ハイスペックな陽キャのオーラに気圧されることもなく、自然な笑顔で結城と拳を突き合わせた。
もはや師匠と弟子じゃなくて、完全に対等な友人ね。
ほんと、頼もしくなっちゃって……私も負けてられないわね。
「さあ、行きましょう。全員で合格よ」
「佐藤は凡ミスしないようにねー」
「大丈夫だ。攻略法は頭に叩き込んだからな」
「はは、それなら安心だな」
それぞれに言葉を交わし、私たちは決戦の試験会場へと足を踏み入れていった。
***
……数学の最後、少し捻ってあるわね。
静まり返った試験会場。カリカリと鉛筆の音だけが響く中、私は問題用紙を睨みつけていた。
順調に解き進めてきたけれど、最後の応用問題は一筋縄ではいかない引っ掛けが用意されている。
結城たちなら問題なく解けるでしょうけど……拓実、焦ってテンパってないかしら。
ふと、別の教室で同じ問題と戦っているはずの幼馴染の顔が脳裏をよぎった。
いや、今のあいつなら絶対に乗り越えるはず。冬休みから私が直々に叩き込んでやったんだから、ここで躓くわけないわ。
私は小さく息を吐き出すと、自分自身の目の前の難問へと再び意識を集中させた。
***
「数学の最後、ムズすぎだろ! 時間足りなくなるところだったわー」
「ウチもー! 見直しまではできなかった。でも、英語は結構いけたかも!」
数時間後。すべての試験を終え、私たちは再び校門で合流していた。
口々に感想を言い合う結城と美咲。
「佐藤はどうだった?」
「俺も数学はギリギリだったけど……最後のやつは凛子に教わったパターンの応用問題だったから、なんとかなったと思う」
……よかった。ちゃんと解けたのね。ま、私が教えたんだから、心配はいらなかったわね。
ふっと小さく息を吐き出した瞬間、結城のスマホがピコンと鳴った。
「おっ、須藤からだ」
結城が画面を開くと、推薦入試ですでに合格を決めている須藤から、グループチャットにメッセージが入っていた。
須藤『お疲れ。今日、受験だろ? どうだった?』
その短いメッセージに、みんなの顔がパッと明るくなった。
結城『数学がエグかったけど、出し切ったわ!』
美咲『アタシもー!』
拓実『俺も、なんとか手応えはあるぞ』
凛子『大きなミスはしてないと思うわ』
それぞれが画面に向かって報告を打ち込むと、すぐに須藤から『吉報を待ってる』というスタンプが返ってきた。
……本当に、最強のパーティーね。
並んだメッセージの画面を見つめていると、結城がスマホをポケットにしまって大きく伸びをした。
「よしっ! これならいけるかもな。……みんな一緒に合格だといいな!」
結城の底抜けに明るいその言葉に、私たちは大きく頷き合った。
……あとは、結果を待つだけね。
重圧から解放された清々しい空気の中で、隣で笑う拓実の横顔をチラリと見つめる。
どうか。絶対に、一緒に受かってますように――。




