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幼馴染の勘違いオタクを無害なモブにしたかっただけなのに、冷徹に教育していた私が絆されました  作者: remia
第7章:すれ違う冬

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第41話:B判定とテストの攻略法

 二月上旬。推薦入試組の須藤が早々に合格を決めたため、放課後の空き教室には私、美咲、結城、そして拓実の四人が集まっていた。


 机の上には、先日返却されたばかりの中学生活最後となる模試の結果が置かれている。

 私と結城、美咲の判定欄には順当に『A判定』の文字。そして、拓実のプリントには『B判定』の文字が印字されていた。


「くそっ……今回は結構手ごたえがあったはずなのに、まだBか……」



 いい傾向ね。『本気を出せばできる』だの『環境が悪い』だの、痛い言い訳を並べて現実から逃げていた頃とは大違いだわ。

 ちゃんと自分の実力不足を悔しがれるようになってるし、結果を素直に受け止めているんだから、残り一ヶ月……まだ伸ばせるはずよ。



「……まあ、これなら合格の可能性も出てきたわね」



「凛子……!」


 拓実がバッと顔を上げ、私の目を真っ直ぐに見つめてきた。


「お前のおかげだよ! 凛子がそうやって認めてくれるなら、俺はもっと頑張れる! 本番までに絶対A判定以上の実力をつけてみせるからな!」


 ドクンと、胸の奥で心臓が暴れ始める。


 あぁもう……また、これだ!!

 なんでそういうこと、真顔でド直球に言えるのよ!


 こいつも大概だけど、私も『素直すぎるバカ』の真っ直ぐな言葉に弱すぎるのよ……。



「そ、そう……せいぜい頑張りなさいよ」


 顔に集まる熱を誤魔化すように、私はそっぽを向いた。


 案の定、視界の端では結城と美咲がクスクス笑ってる。

 はぁ……死ぬほどムカつくけど、もうツッコむ気にもならないわ。



「でもさ、おかしいよな。最近は、俺たちが間違えるような応用問題だって佐藤が正解してることもあるだろ? なのに、差がつくのは何でだろうな?」


 真顔に戻った結城がプリントを眺めながら、不思議そうに首を傾げた。



 ……確かに変ね。知識や理解度に関しては、もう私たちと遜色ないレベルに達しているはずだわ。原因は他の所にあるんじゃないかしら。



「ちょっと解答用紙を見せてみなさい」


 私が拓実から解答用紙を取り上げ、三人で覗き込んだ。

 そこには、明確な失点の原因が散らばっていた。



「あー、数学のこことか。解き方はあってるのに、最後の計算ミスってるな」


「あっ……本当だ」


 結城の指摘に、目を丸くする拓実。



「国語も、正解わかってるのに漢字間違えてるねー。もったいなっ!」


「社会は、最後の数問が空白ね。時間が足りなかったのかしら」


 美咲と私が指摘すると、拓実は情けなさそうに項垂れた。



「そうなんだよ……。一つの問題で考えすぎちゃって、気づいたらチャイムが鳴ってて」



 なるほど……原因は学力不足じゃないわね。

 妄想に逃げてテストを真面目に受けてこなかったツケが、『時間配分』や『ケアレスミス』って形で出てきたってことだわ。



「あんたは、試験に真面目に取り組んできた経験が圧倒的に足りないのよ。一問一問、馬鹿正直に真正面からやりすぎなの」


「っ……! ボス戦の経験不足ってことか……。マジで昔の俺を殴りにいきたい……」


 そう言って、拓実は力なく机に突っ伏した。



「いや、佐藤。それなら、あとはテストのテクニックだけだぞ」


「そうね。わからない問題は一旦後回しにするとか、時間がかかりすぎる問題は潔く諦めることも必要よ。満点を取る必要はないんだから、やり方を叩きこめばいいのよ」


 結城と私の言葉に、美咲も明るく頷いた。


「あとはさ、時間一杯で終わらせるんじゃなくて、少し余るように組み立てて、見直しの時間作るとかかなー。それだけでケアレスミス減るっしょ」



「マジか……っ! テストにも攻略法があるんだな」



 拓実がハッとして目を輝かせたかと思うと、突然スッと斜に構え、存在しない前髪をかき上げる仕草をした。



 ……久々に出たわね。拓実特有の『勘違いラノベ主人公』ポーズ、そしてウザいドヤ顔。

 髪を切ったはずなのに、なんで前髪をかき上げようとするクセは消えないのかしら……。



「……ふっ、なるほど。つまり……タイムアタックとリソース管理の概念だな。効率的なルート構築が求められるRTAリアルタイムアタックと同じというわけか」



「……変なゲーマー用語に変換しないで。まあ、言ってることは合ってるけど」


 いちいちオタクっぽい例えに変換するのは鬱陶しいけど、今回に関しては、飲み込みが早そうで助かるわね。

 拓実の中でしっくりきたのなら、もうそれでいいわ。



「ははは! 同じ学力でもやり方次第で点数が変わるんだから、最後はこの辺の精度を詰めていこうぜ」


「ああ、任せてくれ。最強パーティーのバフがあれば、どんな難関ダンジョンでもクリアしてみせる! だから、最後までよろしく頼む」


 結城の励ましに、拓実が力強く拳を握りしめた。



 まったく……いちいち大げさなんだから。

 それでも、こんなにも頼もしく見えてしまうんだから、私の目も相当バグってきているわね……。



 本番まで、あと少し。私も最後まで付き合ってあげるわ。


 頑張りなさいよ。バカ拓実。


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