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幼馴染の勘違いオタクを無害なモブにしたかっただけなのに、冷徹に教育していた私が絆されました  作者: remia
第6章:形勢逆転の秋

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第36話:掘りすぎた墓穴

 翌日の放課後。

 駅前のファストフード店は、学校帰りの学生たちで賑わっていた。


 私はテーブルに突っ伏したまま、両手で頭を抱えていた。

 目の前では、無理やり引っ張ってきた美咲が、トレイの上のフライドポテトを呆れたようにつまんでいる。



「……で? 昨日、せっかく凛子が意地張るのやめて折れてあげたのに、佐藤に断られたって?」


「そうなのよ! あいつ、『結城たちに追いついて凛子の隣を堂々と歩けるようになるまで話しかけない。約束は守る』なんて言って、清々しい顔で帰っていったのよ!」



 顔を半分だけ上げて状況を説明すると、美咲はポテトを口に運びながら盛大に吹き出した。


「あはははっ! いや、佐藤クソ真面目か! てか、それただの自業自得っしょ!」


「笑い事じゃないわよ! 私、どうすればいいの……!? ねえ美咲、あいつどういうつもりだと思う!?」



 私がトレイの端に額をこすりつけながら小さくうめき声を漏らすと、美咲は肩をすくめてストローを口に咥えた。


「どういうつもりって……本気でアタシたちと肩を並べるつもりなんじゃない? 佐藤の中の『普通』のハードルが完全にバグったってことっしょ」



 その的確な指摘に、私は深くため息をついた。


「そうなのよね……。あいつの中の『普通』の基準が、いつの間にか結城や須藤になっちゃってるのよ!」


 たまらず、テーブルの上に崩れ落ちる。


「確かに『みんなを見本にしろ』とは言ったわ。でも『追いつけ』だなんて言ってないでしょ!? そんなの、あと何年かかると思ってるのよ!」


「うーん。結城たちを基準にしちゃったら、卒業するまでには話しかけられないかもねー」


「でしょ!? 受験だって無謀すぎるし……だから、私が妥協して解除してあげるって言ったのに……! なんでこうなるのよ」



 冷たいテーブルの表面に頬を押し付けたまま愚痴をこぼすと、美咲はニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「でもさ、それってつまり『凛子に相応しい男になるために、絶対に妥協したくない』ってことでしょ?」


「えっ……」


「わざわざあんな高いハードルを越えてでも、堂々と凛子の隣を歩きたいんだよ。愛が重いねー、愛されてんねー」


「っ……!」



 ドクンと心臓が大きく跳ねて、顔が一気に熱くなる。


「あ、愛とかそんなんじゃないわよ! ただの融通の利かないクソ真面目なバカなだけ!」


 あぁ、もう! 美咲に変なこと言うから、あいつの真剣な顔を思い出しちゃったじゃない……っ!



「ふふっ。顔、真っ赤だよ? ほんと、佐藤のことになると途端に余裕なくなるよねー」


「う、うるさいっ! ……もう、からかわないでよ……」



 視線をそらして、目の前のメロンソーダのストローを噛んでいると、美咲はポテトの最後の一本を口に放り込みながら、あっさりと解決策を提示してきた。


「じゃあさ、他の女子に取られたくないなら、凛子の方からもっと接触増やして、積極的に話しかけに行けばいいじゃん」


「そ、それは……ダメよ!」



 私は即座に、顔を上げて全力で首を横に振った。


「そんなことしたら、私がしっぽ振ってあいつを追いかけてるみたいで、完全に負けた気がするじゃない! 絶対に嫌よ!」


「はぁ。出たよ、無駄に高い乙女のプライド。自分から『もういいわよ』って折れたのに突っぱねられたからって、意地張ってるだけっしょ」


「意地も張るわよ! 私から折れてやったのに、あいつが拒否したんだから! 今さら私から用もないのにガンガン話しかけに行くなんて、そんな真似できるわけないでしょ!」



 だけど、このままじゃ……。



「……ふーん、じゃあもう、いっそのこと告白しちゃえば?」


「はぁ!? するわけないじゃない!」


 絶対零度の視線で睨みつけようとしたけれど、顔が熱すぎて全く迫力が出ない。

 


「それに、告白は男子からって美咲も言ってたでしょ!?」


「あはは、そうだったね~」



 美咲はやれやれと大げさにため息をついた。


「まあ、自分で作ったルールなんだから、自分でどうにかするしかないっしょ。佐藤が結城たちに追いつくのを待つか、凛子が意地張るのやめるか。二つに一つだね」


「うぅっ……どっちも無理……!」


 私はとうとう完全に力尽き、机にへばりつきながら情けない声を絞り出した。



 あいつが頑なにルールを守り続けてたら、本当に他の女子に取られるかもしれないのに……これ以上は譲れない自分が全力で邪魔してくる。


 ああもう、バカ拓実のせいで私の情緒がメチャクチャよ……!


 ファストフード店の喧騒の中で、私はただ一人、頭を抱えて悶えることしかできなかった。


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